使徒、襲来


 その時、碇シンジはミサトの迎えを待っていた。
「やっぱり始めましてかな?、どうしよう、挨拶で手を握ってくれるかなぁ?、ミサトさぁん…」
 ここに注目!っと書かれた写真を手に妄想にふける少年。
 それを呆れ顔で見ている髪の青い少女。
「碇く…」
 キキーッ、ドカン!
「お待たせぇ!」
「葛城さぁん!」
 にっこりと微笑む女性に心ドキドキ。
 その向こうではクルクルと包帯姿の少女が宙を舞う。
 葛城さん、笑顔が素敵だ…
 そんなものには目もくれず、さらに驚いた事に身の丈数十メートルにも達する巨人さえも彼は完璧に無視していた。

「やはり来たか」
「ああ、使徒だ」
「シンジ君の到着と同時か?」
「女々しい奴等だ、叔父と同じだよ」
「暴力団を使って脅したというのは本当か?」
「それでも抵抗したのでな、65545通りの手段でシンジに連絡、出張に出た今日のこの日に上京させた」
「餌も効いたな?」
「葛城君にはその内辞職願うよ、問題は無い」
 話す二人の前では国連軍が嫉妬丸出しで使徒と戦っている。
「碇君!、以後君に指揮権は委ねられた」
「君ならば本当に保護できるのかね?」
「そのためのネルフです」

 2015、第三新東京市。
 これもまたエヴァンゲリオンでありながら、ただ一つ違っているのは、みんながシンジ君を大好きだったと言う事です。

「呆れた、また迷ったのね?」
 誰だろこの人は?
 シンジはミサトと見比べた、特に胸の辺りを。
 やっぱミサトさんだよな!
 ガッツポーズ。
「久しぶりだな」
「父さん!」
 あれ?、こんなのあったっけ?
 ようやく初号機の顔に気がつく。
 初号機の心理グラフ−>(−−#)
「ふっ、出撃はレイに任せる」
「しかし碇」
「シンジの保護が最優先だ」
 がー!
 走って来るベッド。
 包帯だらけの少女。
 葛城一佐、コロス…
 その目はギラギラと光っている。
 遅刻したミサトの代わりにエヴァの射出用エレベーターを用いてせっかく迎えに行ったというのに、この仕打ちは何だろう?
 …まさしく射出されて宙を舞った後、地面に激突、それを自分で応急処置して、必死に耐えていたと言うのに。
 ちなみにとどめの怪我は、エレベーターシャフトと言う落とし穴で回収されたためだったりする。
「待って父さん!」
「なんだ?」
「僕が乗るよ!」
「しかし…」
「その代わり、お願いがあるんだ」
 うるうる瞳。
「わかった」

 初号機、リフトオフ。
「頑張ってね?」
「ミサトさんのためですから」
 この一言に本部ではミサトへの嫉妬が炸裂する。

 うわあああああああ!
 勝った。


見知らぬ、天井


「えええええ!?、あ、あたしに引き取れって…」
「司令の命令だ」
「しょんなぁ…」
 ミサトに人の面倒を見るような趣味は無い。
 むしろ気軽な独身主義者だ。
「ミサトさん…、僕のことが嫌いなんですか?」
「う、わかったわよ…」
 だが涙にはさすがに弱かった、それがシンジの策略だったとも気付かずに。

「そういうわけでさぁ、引き取る事になっちゃって」
 電話。
「なに殺気立ってんのよ、相手ガキじゃない」
「あんたねぇ!、何考えてるの、彼チルドレンなのよ!?」
 チルドレン。
 それは21世紀になって発見された特殊なフェロモンを発する少年少女だ。
 この子供達の前では大統領でさえもごろにゃん☆となる。

「あ、ついでだから買い物して帰りましょうよ!」
「じゃあコンビニ寄るわね?」
「スーパーにしましょう!、僕が何か作りますから」
「シンジ君料理できるの?」
「任せて下さい!、こう見えても炊事洗濯から料理に掃除、何でも出来るんですよ、僕って!」
 これって拾い物だったかしら?
 チルドレンの媚臭に酔わない人間と言えばミサトぐらいなものだろう。
 それはミサト自身が纏っている酒気のためのなのだが、今はまだ解明されていない。
 そのためシンジは尽くしつくすのだが、それが不幸なのかどうかはシンジのみが感じる所であった。

「みみみ、ミサトさん!」
 ペンペンを逆さ釣りにして裸で飛び出して来るシンジ。
「あ、それ一応同居人だから大事にね?」
 ちっ!、二人っきりじゃなかったのか。
 持ち上げて逆さの瞳を覗き込む。
 ペンペンはそのシンジの瞳に恐怖した。
「それよりシンちゃん、前、隠したら?」
「いいですよ、別に、ミサトさんだから」
 グレートねぇ。
 ついでにシンジのご飯は美味しかった。

「そう、向こうでもちやほやされてたの…」
「でも寂しかったんですぅ」
「どうして?」
「だって母さんは死んじゃって、父さん帰って来てくれなくて…」
 ミサトの胸から顔を見上げる。
「それに」
「それに?」
「ミサトさんみたいに優しくしてくれる人がいなかったから」
「シンジ君!」
「ミサトさん!」
 酔っ払って盛り上がる二人。
「さ、そろそろ寝なさい?」
「はぁい」
 ベッドにばふっと。
「取れないや、ミサトさんの匂い」
 くんか、くんか、くんか、くんか、くんか…
 結局寝たのは朝方になった。


鳴らない、電話


 学校。
「碇君がロボットのパイロットって本当?」
「乗ったけど、パイロットじゃないよ」
「そうなんだぁ」
 呼び出し。
「ワシはお前を殴らなあかんのや!」
「悪いな、あいつの妹が昨日のロボットがかっこよかったって騒いじゃってさ」
「…シスコン?」
「なんやとう!?」
「安心してよ、僕お姉さんが好みなんだ」
「なにぃ!?」
「トウジ、やめろ!」
「碇ぃ!、お前もそうやと思っとったわ!」
「僕もだよ!、今度遊びに来てよ、保護してくれてるお姉さんを紹介するよ!」
 友情と絆がここに誕生。
「もう勝手にしてくれ」
 と言いつつおこぼれが欲しい相田ケンスケ。


雨、逃げ出した後


「それじゃあ綾波、また後で」
 こくこくと頷くレイ。
 そーっとね?
 ぷしゅぅ。
ただいまぁ…、行ってきます!」
「こらシンジ君!」
「うひゃあ!、ミ、ミサトさん!?」
「テストをさぼろうったって、そうはいきませんからね!」
「きょ、今日は大切な用事がぁ!」
「問答無用!」
「綾波ぃー!」
 ぴくん。
「…碇君が呼んでる」
 バン!
「どうしてテストをサボろうとしたの」
「ごめんなさい」
「そんないい加減な気持ちでやられちゃ迷惑よ!」
「葛城一尉、降格だ」
「そんな!」
 がびーん!


レイ、心の向こうに


 その頃レイは横になっていた。
 碇君…、わたしを庇って戦ってくれた。
 真実はミサトに良い所を見せたかっただけだったのだが。
 …葛城一尉、おばさんは用済み…
 車で跳ねられた事を根に持っていたようである。
 プルルルル、電話の音が思考を断ち切る。

「嬉しいなぁ、リツコさんまで来てくれるなんて」
 何故かミサト宅でパーティーだ。
「綾波さんは?」
「ん〜、電話したんだけど今忙しいって怒られちゃった」
「恐いんだ、綾波さん」
「生きるのに不器用なのよ、あの子タイミングが悪くて勘違いも多いから」

 リツコはレイに渡してくれとミサトにカードを渡す。
 が、当然面倒臭がったミサトは、それをシンジに一任した。
「命令よ、よろしくね?」
「やだなぁ、頼むわ、お願いね?ってご褒美にキスぐらい…」
 ミサトに逃げられシンジむくれる。

 レイ宅。
 凄いとこに住んでるんだな。
 ファーストインパクト。
 レイは頬を赤く染める。
「あ、ごめん」
「なに…、してるの?」
「カード持って来たんだ、服、着ないの?」
「でも…」
「ああ、僕同い年の女の子には興味ないから」
「そ…」
 レイは残念そうに下着を着けた。

「ねえ、綾波さんは恐くないの?」
「なぜ?」
「だって好きな人が居ないみたいだから」
「いけない?」
「やっぱり好きな人に良い所って見てもらいたくない?」
「そうね」
 くるっと振り返り、ちゅっとキス。
「え?」
「先、行くから」
 ズダダダダダダダダン!
 慌ててエスカレーターを転がり落ちる。
「…そそっかしいんだ、綾波さんって」
 これが世に言う、セカンドインパクト。
 ちなみにファーストインパクト共々、しっかりモニターされていた。

 サードインパクトは起きます、起こしてみせます。
 決意を前面に押し出すレイ。
 それを防ぐのがわたし達のお仕事なのよ。
 零号機再起動実験中。
 レイ、心理グラフ−>(*^^*)
 リツコ&マヤ−>(−−#)
 レイが居なければ戦えない。
 自爆装置に伸びる指を、頑強な意思で引き止める。
 先程の行為に対しては注意したのだが、あっさりとレイに蹴倒されていた。
「母さんは今日も元気なのにね」
 科学者として、責任ある者として、自分の立場を疎ましく思うリツコであった。


決戦、第3新東京市


 使徒、侵攻。
 良い所を見せるんだと駄々をこねるシンジの説得に失敗、初号機発進、そして大破。
 これに対する委員会からの突き上げ。
「聞けばエヴァをシンちゃんに与えたそうだな」
「サードチルドレンと認定」
「これはシナリオに無い事だよ」
「碇、シンちゃんを傷つけた償いはしてもらうぞ」

 ミサトによる作戦立案。
「知らない、天井だ」
「起きたのね」
「綾波?」
「この後は待機よ?」
「使徒は?」
「わたしが、倒すから」
「だめだよ!、僕がやる」
 碇君…
 真剣な眼差しから、身を案じてくれているのだと勝手に察する。
 …ここでへたばったら、ミサトさんに男の子の癖にって笑われちゃうよ!
 現実はやっぱりそんなもんだった。

「僕が、守るから」
 シンジの言葉にぽうっとするレイ&発令所、関連各機関の面々。
 敵攻撃を零号機が身をていしてカバーする。
 使徒、撃退。
「綾波!」
 必死で零号機のプラグへ潜り込む。
「よかった、生きてるね?」
「どうして泣いてるの?」
「綾波が生きててくれたから、嬉しいじゃないか!」
「嬉しい時にも、涙は出るのね…」
「こんな時は、笑えばいいと思うよ?」
 生きててくれた!、これでミサトさんに顔向けできるよ!
 実は笑うどころか小躍りしたいシンジであった。


人の造りしもの


「巨大ロボットだって言うから期待したのにぃ!」
 ロケットパンチは?
 ブレストファイヤーは?
 …バリアーは?
「なんだ、なんにも出来ないんですね」
 JA暴走。
 ミサト、耐熱耐爆耐圧防護服にて突入を敢行。
「ちょっとリツコぉ…」
「なにかしら?」
「入り口小さくて入れないんだけど…」
「無様ね」


アスカ、来日


「いいのか、碇?」
「ああ、予備もつけてある」
 オーバーザレインボウ上空。
 レイのこめかみ−>#
「ごめんねぇ?、なんだかあたしが居ないからって余計な事をしないよう、ついでに連れてけって命令なのよ」
「それは誰の…」
「ん?、司令の指示よ」
 わたしはあなたの人形じゃない。
 この瞬間、わずかながらにATフィールドが観測された。

 甲板。
「ふぅん、こいつがファースト…、冴えないわね?」
「わたしの笑顔は碇君のためだけに存在するもの」
「碇?」
「サードのことよ?」
「ふぅん…」
「わたしは、彼の胸の下でだけ微笑むの」
「「なっ!?」」
「ちょっとミサト!」
「し、知らないわよ!」
 ちなみにレイもアスカもまだ性的に未発達なため、フェロモンは通常よりかぐわしい、と言う程度。
 同性にも作用を及ぼすシンジがあまりにも異常なだけだ。

「ファースト、ちょっと付き合って!」
 使徒侵攻。
 その間レイ秘蔵の隠し撮り写真を見つめる二人。
「ふうん、こいつがサード」
「ええ、わたしを大切にすると言ってくれたの」
 心理グラフ上昇−>____________/
 守るからと言っただけだ、都合よく曲解されている。
 オスロー沈黙。
 ごぉん!
「なによもう!、写真散らばっちゃったじゃない」
「水中衝撃波…」
「敵なのね!」
「わたしも戦う」
「ちょっと、勝手に乗らないでよ!」
「碇君にケチを付けた、万死に値するわ」
 殲滅。


瞬間、心、重ねて


「ぐーてんもるげん、ファースト」
「なに?」
「サードよ、ここに居るんでしょ?」
「あっちよ」
「そっ!」
 約十分後。
「嘘教えんじゃないわよ!」
「誰?」
「…セカンドチルドレン」
「あんたがサードね!」
「サード?」
「チルドレンなんでしょ!?」
「なにそれ?」
「…エヴァのパイロットよね?」
「そうなの、かな?、たまに乗るけど」
「なによそれぇ…」
「乗せてってお願いしないと乗せてくれないんだもん」
「まあいいわ、とにかく仲良くしましょう」
 パン!
 レイが弾く。
「なにすんのよ!」
「仲良くするのはわたし、あなたじゃないわ」
「なんやセンセ、痴話喧嘩か?」
「ケンカしてるの僕じゃないよ」
「そやな、シンジはあないな女に興味はないわな?」
 ニヤリ×2。
「それでそろそろ、なぁ?」
「わかってるよ、じゃあ…」
 何やら悪企む二人であった。

 使徒来襲。
 零号機と弐号機により攻撃、失敗。
 国連軍により足止め。
「なんだこれ!?」
 シンジは驚いた。
「今日からここに住むのよ」
「惣流さん!?」
 邪魔者が増えるのぉ?、と言う顔。
「嫌そうね?」
「うん」
「なんですってぇ!?」
「せっかくのミサトさんとのスイートルームがぁ!」
 こいつ本気で言ってるの?
 奇異な者を見るような、それでいて哀れむ瞳。
「あんた、変わってるわ」
「なんだよ、良いから出てけよ、惣流さんに用は無いよ」
「な!」
「やっぱ女ってミサトさんみいでなくっちゃ、なに?、その胸?」
「きゃあ!」
 不埒にもシンジは指先で持ち上げたのだ。
「なにすんのよ!」
「形だけ大きくなっちゃってさ、やっぱり胸は中身だよ、中身!、あの柔らかさ、弾力、はぅう〜、ミサトさぁん」
 アスカ逃走。
 レイ接触。
「あんなおばさんと比べられるなんて!」
「そうね…」
「傷つけられたプライドは、百倍にして返してやるのよ!」
「ええ」
 そして二人は翌日から見事なユニゾンで牛乳を飲み続けたのだった。
 なお、トウジが様子見と称してミサトのご尊顔を拝見しに来たと追記しておく。


マグマダイバー


「え〜!?、修学旅行に行っちゃだめぇ!?」
「ええ」
「あんた何黙ってんのよ!」
「ミサトさんのいない所に行ったってしょうがないよ」
「飼い馴らされた男って最低〜」
「ミサトさんになら首輪をはめられたっていいさ」
「まあまあ、いい機会じゃない、二人でデートでもしてくれば?」
「「え?」」
「シンちゃんも〜、たまには同年代の女の子もいいものよ?」
 ちらっと見た後プイッとそっぽを向くシンジであった。

 レイからの無言の抗議によりデートは無しよ☆、ネルフ施設内のプールで遊ぶ事になった。

「うふん」
「…なにやってんの?」
「あんたに期待したあたしがバカだったわ」
 うふん?
 うふんって何?
 誘惑、挑発。
「そう、あなたも碇君が好きなのね」
 戦闘体勢に移行、アスカ噴火、第一戦争勃発。
 これにより浅間山火口での戦闘はコンビを組まねばならないため、二人の不仲から必然的にアスカ、レイどちらかが居残りを余儀なくされた。

 使徒、火口からのそのそと出て来た所を殲滅。

「きゃあああああああああ!、あんた何やってんのよ!?」
「え?」
「ここ女湯よ!」
「だって今日は僕たちだけでしょ?」
「あ、あんたまさか…」
「ミサトさんは何処に居るの?、ミサトさぁん!」
「あらシンちゃん、また入って来ちゃったの?」
 はっとする、驚き立ち上がったアスカは真っ裸だ。
 なのにシンジの腰に巻かれたタオルの下が熱膨張を起こしたのはミサト確認直後である。
 そんなアスカを見てのミサト。
 …使徒の狙いがシンジ君で、シンジ君が修学旅行に行かないって言い出したから居残りになった、なんて言えないわね、やっぱり。
 こうしてまた隠し事は増えたのだった。


静止した闇の中で


「プログラムがね、微妙に変えてあるのよ、直感、山勘、第六感」
「…なにそれ?」
「元がチルドレンの監視、浮気チェック用の女の勘ピューターだもの、無理も無いわ」

「あ、父さん?、実は進路相談で、そんなに慌てなくてもまだ日にち、あれ?」
 電話が切れた。

「何事だ!」
「MAGIがハッキングを受けています!、数は…、MAGIタイプが五!」
「いかん!、至急赤木博士を呼び出せ!、666プロテクトの使用を許可する!、…碇か?、なに!、シンジ君の進路相談だと!?」
「ああ…、ゼーレめ、どうあってもシンジの進路には口を出すつもりらしい」

「パパに電話切られたからて、なぁにナーバスになっちゃってんのよ」

「あ、非常用ハッチね?」
「何やってんのよ?」
「あん?」
「あんたが、開けるのよ!」
「じゃあ」
 バッとアスカのスカートをめくる。
「きゃあ!、なにすんのよ!」
 ドガン!
 蹴りの一発で吹き飛ぶハッチ。
「ほら開いた」

「こんな時はこれだ!」
「なにそれ?」
「父さんがくれたんだ、秘密の抜け穴マップ」

「なにも動かないのに」
「司令のアイディアよ」
「父さんかっこいいよ!」
 手を振ろうとしてゲンドウの手からロープがすっぽ抜けた。
 わあああああああああああ!
 引きずられて何人か柵から落ちる。
「僕のせいなのかな?」
「司令の責任よ」

「待った、あたしがディフェンス」
「だめだよ、一番かっこいいじゃないか…」
「だぁめ、この間の借りを返しなさいよ?」
「借り?」
「人の裸見たくせに」
「それならわたしも見られたわ」
 パルス逆流ー>・#%$&・<>!%&(!”#?

「人はみな、裸で愛を確かめて来たわ」
「汚されちゃったよ」
 涙がこぼれた。


奇跡の価値は


「手で受け止めるぅ!?」
「ええ」
「そんな無茶なぁ」
「やるしかないのよ、一応遺書を残しとく?」
「あ、僕書きます」
「シンジ!」
「ミサトさんに色々と伝えておきたかった事があるから」
「そう…、でも遺書を読む前にあたしも一緒に死んでると思うけどね?」
「そうですか…、じゃあ頑張らないと」
 恐いわねこいつ…
 恐怖するアスカ。
「うまくいったらステーキを奢ってあげるわ」
「死地に赴く子供の最後のお願いを聞いて下さいよ」
「…子供らしいお願いならね?」
「ちえ」


使徒、侵入


 その日は体を洗われた。
「お望み通り裸になってやったわよ!」
「碇くん、見て?」
「なにやってんのよ!」
「アスカ、見苦しいから見せないでよ」
「なんですってぇ!?、あんただってその…」
 あれ?
「大きいわね?」
「ミサトさん用だもの」
「…欲しい」
「ふぁ、ファースト!」
 これに対するE計画担当のコメント。
「これ、記録しといてね?」
 おおむねネルフとはそんな人間の集まりだった。


ゼーレ、魂の座


 碇君の匂いがする…
 味じゃないのね?
 碇君がいっぱい。
 碇君でいっぱい。
「…子供が出来そう」
 おいおい…
 突っ込む一同。

 なんだろう、この感じ、綾波だよな?
 月見うどんのイメージ。
 白身をすする。
 黄身は最後に取っておく。
 そう、最後。
 最後なのね。
 なに赤くなってんだよ?
 見ないで、見ないでよ!
 良いじゃないか、最後にすすってもいいじゃないか!
 飲み下してもいいじゃないか!
 黄身を口に入れたままで、汁をすすってちょっとずつ飲むのが美味しいんだよ!
 いいえ、そうしてくれると、むしろ嬉しいもの。
 あああ、綾波ぃーーー!
 つるん、ごく。

「零号機暴走!」
「精神汚染が始まっています!」
「まさか、この深度ではあり得ないわ!?」


嘘と沈黙


「写真とか残ってないの?」
「捨てた、わたしに残ったのはお前だけだ」
「父さん」
「シンジ…」
 見つめ合う二人。

「結構いけるじゃない」
「五歳の時から初めてこの程度だからね?」
「継続は力かぁ、ちょっと見直しちゃった」
「何だよそれ、僕の何処に欠陥があるんだよ」
「主におばさん趣味!」
「…かもね」
「あれ?」
「なんだよ?」
「今日は突っかかって来ないのね?」
「命日だからね…」
「お母さんの?」
「ちょうどミサトさんぐらいの歳だったんだ、母さんが死んだの」
「だからおばさん趣味…、か」


死に至る病、そして


「ユーアー、ナンバー、ワン!」
「僕のここも一番でしょう!」
「ちょっとミサト!」
「な、なんにもしてないわよ!?」
「葛城三佐、減棒」
「陰謀よー!」
「うまい、座布団一枚」
「あんたのせいでしょ!」
「…無様ね」

「戦いは男の仕事!」
「前時代的ぃ」
「碇君…、かっこいい」

「だめ、碇君が」
「下がりなさい、命令よ」
「いや、後を追います」
 碇君、あなた一人では行かせないわ。
「…そう言えばそんな本読んでたわね、あの子」

「もう一度会いたかったんだ…」
「「「誰に?」」」



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