Episode:10F
「ついに対決の時か…碇」
手元のノートパソコンを見る、ネルフからの報告、MAGI経由でのゼーレビルの状況、警察、消防署などの動き、その全てが個別のウィンドウで表示されていた。
「できましたぁ!」
シンジが冬月にミニテストの答えを送信した。
全てのウィンドウの上に、最大化して表示する冬月。
「でも、ここって静かで良いですね」
それほど広くはない。
何かの会議室なのだろう、わりとしっかりした椅子と机が並べられていた。
「シンジ君…」
「はい?」
きょとんとした顔で冬月を見る。
「明日からも来なさい、集中的に見てあげよう」
どよ〜んっとシンジは暗雲を背負った。
こりゃあ酷いぞ、碇…
教育方針にも問題ありと見た冬月は、ゲンドウよりもユイに話をしようと決めた。
「まあ、ユイ君から言ってもらわねば、あの男も聞かんからな」
だがその嫌がらせが結局自分に帰ってくるのだから、わりと良い関係なのかもしれなかった。
●
「シンジたちは…、地下の第四避難所か」
耐爆、耐震、核攻撃が来たとしても耐えるであろう場所だった。
ゲンドウは開かれるドアをじっと見ていた。
ゼーレビル最上階。
ゲンドウのための神殿と言ってもいい、そこは第一会議室だ。
ゲンドウの背後、窓の外には月がかかっていた、欠け気味の月、だがとても大きく見えた。
松沢が暗がりから、月の灯りのもとへを進み出る、右手には先程の銃が握られていた。
「命乞いはしないのか?、さすがだな」
ゲンドウはしゃべらない、両手を後ろに組んだまま、まるでいま振り返ったかのようにして松沢を見ている。
銃口を眉間へむけ、狙いを定める。
突如冬月が現れた。
「つまらん男だな、何をそんなに怯えているのかね?」
部屋の奥まったところで将棋をさしている。
「俺は何も恐れん!」
問答無用で撃った、弾丸は壁に大穴を開ける、だが撃たれたはずの冬月はそのままの状態で座っていた。
「フォログラフィー!」
気がつけばゲンドウが銃を握っていた。
「所詮血塗られた道か」
「くっ!」
松沢は左手で隠していた銃を抜いた。
●
「ほんとにこっちなんでしょうね!」
木陰に隠れて、リツコのノートを覗きこむ。
「間違いないわ」
ビシッと木に何かが弾けた。
「全くしつこいったら!」
上で拾ってきた銃を使う、残弾が少なかった。
木と茂みがうっそうしている急斜面を駆けおりる。
「あそこよ!」
リツコがみつけた、不自然な窪み。
「この!」
弾切れ、残りは12発入りのカートリッジが一ヶ。
「何人居るの?、三人?」
壕の外には三人いた。
「いえ、まだ中にも…」
女が飛びこむところだった。
その後ろ姿に見覚えがある。
「母さん?」
リツコは手が汗ばむのを意識した、鼓動が早くなる。
「つっこむわ」
ミサトは言い残して駆けだした。
「ああああああああああああ!」
斜面を一気に走る、一人三発の計算で計十二発、全弾撃ち切った。
「このぉ!」
勢いのためとまりきれない、ミサトは転がるように倒した男の銃に向かってダイブした。
タタタタタタタタタタン!
そのミサトをサブマシンガンが追う。
「うっさい!」
ミサトは片膝立ちで銃を向けた、そのミサトのジャケットを銃弾がかすめていく。
バン!
壕から頭半分だしていた男の眉間に穴を開けた。
「リツコ!」
待ちきれなくなったリツコが壕の中に飛びこんだ。
「!」
マニキュアをぬった女の爪、撃鉄が静かに引き起こされる。
「お久しぶりね、リッちゃん」
女は銃をリツコへ向けた。
●
発砲した、だがゲンドウは首を約3度傾けただけでかわしてみせた。
「化け物が!」
松沢の額を冷や汗が流れる、先程までは感じなかった威圧感に押し潰されそうになっていた。
銃弾の衝撃波がゲンドウの頬を傷つけている、血を流しているゲンドウ。
ゲンドウは松沢に二度目の発砲を許さなかった、銃口が火をふいた、松沢が銃を取り落とす。
銃を弾き飛ばされた衝撃に手首を傷めたらしい、松沢は手首をおさえていた。
「君にわたしは撃てんよ」
赤いサングラスが、悪魔の瞳のように淀んでいた。
●
1・2・3、加持は体に堪え難いぐらいの熱い力を感じた、それから逃れようととっさに身をひねる、樹々に穿たれる弾痕。
「久しぶりだな、この感覚」
木に体を預けて息をつく。
心地好い緊張感、立ちこめる火薬の匂いに胸が躍る。
磨ぎ澄まされる感覚、加持は殺気から弾丸の気配まで察していた。
爆発、閃光。
「おうおう、とうとうなりふり構わなくなったか」
ハンディバズーカだ。
「火力が大きけりゃ良いってもんでもなかろうに」
加持は無造作に姿をさらすと、バズーカの砲口に弾丸を撃ちこんだ。
ドォン!
「おお、恐い恐い」
本当に恐いのはどちらなのだろうか?
「誰?、あなた…」
母親ではなかった、もうすこしばかり若い、どこかほっとするリツコ。
白衣に手を突っ込み、いつもの眼鏡をかけて冷徹な視線をむける。
「あなたのお母さんの助手だった女よ、覚えてないの?、リッちゃん」
「そ…」
まるで突然興味を失ったように、リツコの言葉から感情が欠如してしまっていた。
「あなたもお母さんと同じね、さ、手をあげて、上の人も銃を捨ててくれないかしら?」
「ちっ!」
ミサトは素直にしたがった。
それをみて女はほくそ笑んだが、リツコが手をあげた時、今度は逆に凍りついた。
手に安全ピンを抜いた手榴弾を握っている。
「ま、こんなものよね」
あっさりと捨てる。
「あっ!」
一瞬目で追ってしまった、地面に着くよりも早く閃光が発せられる。
リツコの眼鏡が光量を感知して、自動的に光の透過率を下げた。
「ぎゃっ!」
女の視神経が焼ききられる。
「とぉっ!」
ミサトが飛び降りた、そのまま女の首筋に手刀を入れる。
光がおさまる、まさに一瞬の出来事だった。
「全く危ないことするわねぇ!」
「いつもの手よ、気にする事無いわ」
いつものリツコに戻っていた。
「あ〜あ、こいつ目がつぶれちゃったかも」
特別製の閃光弾だった。
無視してリツコは器材を漁った。
「これね」
そこに黒いボックス型のコンピューターをみつける。
「さ、頼むわよ?」
リツコは自分のノートを繋いだ、猫たちにラスボスの場所を伝える。
プログラムを止めるリツコ。
「銃、貸してくれない?」
何だろうとミサトは軽い気持ちで渡した。
とどめとばかりに黒いボックスに銃弾を撃ちこむリツコ。
「ちょ、ちょっと…」
カチン、ハンマーが空振る、弾が切れた。
リツコはようやく一息はいて、ミサトへと振り返った。
●
山中から今までと明らかに違う爆発が上がった。
ミサトたちはルノーまで戻っていた。
「あいつら、戻ってくるんじゃない?」
ミサトは首を振って否定する。
「空気が変ったわ」
「空気?」
リツコには理解できないものだった。
「奴等は不安を感じているのよ」
「不安?、こっちは三人…、相手をしてるのはリョウちゃん一人だけじゃない」
ミサトはルノーの運転席に乗り込んだ。
暗闇を走りぬける、上がった火の手が僅かな光を与えていた。
生い茂る雑草が乱雑な音をたてて踏みしだかれる。
「向こうはそろそろ終わった頃だな」
加持は弾切れになった銃を捨てた、残りは自前のナイフ一つだ。
「あと二人、なんとかなるか?」
息を殺して隠れる、がさ、がさ、足音が近づいてきた。
「すまんな」
口の中で呟いて、後ろから喉笛をかき切った。
ピューと間抜けな音をたてて気管から空気が漏れる。
「うわああああああああ!」
それを偶然にも残る一人が見ていた。
「くっ!」
逃げる、だが遅かった。
まるでスローモーションのように、その男の投げた手榴弾が加持の足元に転がった。
●
ミサトはルノーを出した、加持を待たずに。
「いいの?」
リツコの問いに、ミサトは答えなかった。
[BACK][TOP][NEXT]
新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'はGenesis Qのnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
内容の一部及び全部の引用・転載・加筆その他の行為には
作者である私と原作者naryさんの許可または承認が必要です、ご了承ください。
本元Genesis Qへ>Genesis Q