Episode:10F





「ついに対決の時か…碇」
 手元のノートパソコンを見る、ネルフからの報告、MAGI経由でのゼーレビルの状況、警察、消防署などの動き、その全てが個別のウィンドウで表示されていた。
「できましたぁ!」
 シンジが冬月にミニテストの答えを送信した。
 全てのウィンドウの上に、最大化して表示する冬月。
「でも、ここって静かで良いですね」
 それほど広くはない。
 何かの会議室なのだろう、わりとしっかりした椅子と机が並べられていた。
「シンジ君…」
「はい?」
 きょとんとした顔で冬月を見る。
「明日からも来なさい、集中的に見てあげよう」
 どよ〜んっとシンジは暗雲を背負った。
 こりゃあ酷いぞ、碇…
 教育方針にも問題ありと見た冬月は、ゲンドウよりもユイに話をしようと決めた。
「まあ、ユイ君から言ってもらわねば、あの男も聞かんからな」
 だがその嫌がらせが結局自分に帰ってくるのだから、わりと良い関係なのかもしれなかった。






「シンジたちは…、地下の第四避難所か」
 耐爆、耐震、核攻撃が来たとしても耐えるであろう場所だった。
 ゲンドウは開かれるドアをじっと見ていた。
 ゼーレビル最上階。
 ゲンドウのための神殿と言ってもいい、そこは第一会議室だ。
 ゲンドウの背後、窓の外には月がかかっていた、欠け気味の月、だがとても大きく見えた。
 松沢が暗がりから、月の灯りのもとへを進み出る、右手には先程の銃が握られていた。
「命乞いはしないのか?、さすがだな」
 ゲンドウはしゃべらない、両手を後ろに組んだまま、まるでいま振り返ったかのようにして松沢を見ている。
 銃口を眉間へむけ、狙いを定める。
 突如冬月が現れた。
「つまらん男だな、何をそんなに怯えているのかね?」
 部屋の奥まったところで将棋をさしている。
「俺は何も恐れん!」
 問答無用で撃った、弾丸は壁に大穴を開ける、だが撃たれたはずの冬月はそのままの状態で座っていた。
「フォログラフィー!」
 気がつけばゲンドウが銃を握っていた。
「所詮血塗られた道か」
「くっ!」
 松沢は左手で隠していた銃を抜いた。






「ほんとにこっちなんでしょうね!」
 木陰に隠れて、リツコのノートを覗きこむ。
「間違いないわ」
 ビシッと木に何かが弾けた。
「全くしつこいったら!」
 上で拾ってきた銃を使う、残弾が少なかった。
 木と茂みがうっそうしている急斜面を駆けおりる。
「あそこよ!」
 リツコがみつけた、不自然な窪み。
「この!」
 弾切れ、残りは12発入りのカートリッジが一ヶ。
「何人居るの?、三人?」
 壕の外には三人いた。
「いえ、まだ中にも…」
 女が飛びこむところだった。
 その後ろ姿に見覚えがある。
「母さん?」
 リツコは手が汗ばむのを意識した、鼓動が早くなる。
「つっこむわ」
 ミサトは言い残して駆けだした。
「ああああああああああああ!」
 斜面を一気に走る、一人三発の計算で計十二発、全弾撃ち切った。
「このぉ!」
 勢いのためとまりきれない、ミサトは転がるように倒した男の銃に向かってダイブした。
 タタタタタタタタタタン!
 そのミサトをサブマシンガンが追う。
「うっさい!」
 ミサトは片膝立ちで銃を向けた、そのミサトのジャケットを銃弾がかすめていく。
 バン!
 壕から頭半分だしていた男の眉間に穴を開けた。
「リツコ!」
 待ちきれなくなったリツコが壕の中に飛びこんだ。
「!」
 マニキュアをぬった女の爪、撃鉄が静かに引き起こされる。
「お久しぶりね、リッちゃん」
 女は銃をリツコへ向けた。






 発砲した、だがゲンドウは首を約3度傾けただけでかわしてみせた。
「化け物が!」
 松沢の額を冷や汗が流れる、先程までは感じなかった威圧感に押し潰されそうになっていた。
 銃弾の衝撃波がゲンドウの頬を傷つけている、血を流しているゲンドウ。
 ゲンドウは松沢に二度目の発砲を許さなかった、銃口が火をふいた、松沢が銃を取り落とす。
 銃を弾き飛ばされた衝撃に手首を傷めたらしい、松沢は手首をおさえていた。
「君にわたしは撃てんよ」
 赤いサングラスが、悪魔の瞳のように淀んでいた。






 1・2・3、加持は体に堪え難いぐらいの熱い力を感じた、それから逃れようととっさに身をひねる、樹々に穿たれる弾痕。
「久しぶりだな、この感覚」
 木に体を預けて息をつく。
 心地好い緊張感、立ちこめる火薬の匂いに胸が躍る。
 磨ぎ澄まされる感覚、加持は殺気から弾丸の気配まで察していた。
 爆発、閃光。
「おうおう、とうとうなりふり構わなくなったか」
 ハンディバズーカだ。
「火力が大きけりゃ良いってもんでもなかろうに」
 加持は無造作に姿をさらすと、バズーカの砲口に弾丸を撃ちこんだ。
 ドォン!
「おお、恐い恐い」
 本当に恐いのはどちらなのだろうか?


「誰?、あなた…」
 母親ではなかった、もうすこしばかり若い、どこかほっとするリツコ。
 白衣に手を突っ込み、いつもの眼鏡をかけて冷徹な視線をむける。
「あなたのお母さんの助手だった女よ、覚えてないの?、リッちゃん」
「そ…」
 まるで突然興味を失ったように、リツコの言葉から感情が欠如してしまっていた。
「あなたもお母さんと同じね、さ、手をあげて、上の人も銃を捨ててくれないかしら?」
「ちっ!」
 ミサトは素直にしたがった。
 それをみて女はほくそ笑んだが、リツコが手をあげた時、今度は逆に凍りついた。
 手に安全ピンを抜いた手榴弾を握っている。
「ま、こんなものよね」
 あっさりと捨てる。
「あっ!」
 一瞬目で追ってしまった、地面に着くよりも早く閃光が発せられる。
 リツコの眼鏡が光量を感知して、自動的に光の透過率を下げた。
「ぎゃっ!」
 女の視神経が焼ききられる。
「とぉっ!」
 ミサトが飛び降りた、そのまま女の首筋に手刀を入れる。
 光がおさまる、まさに一瞬の出来事だった。
「全く危ないことするわねぇ!」
「いつもの手よ、気にする事無いわ」
 いつものリツコに戻っていた。
「あ〜あ、こいつ目がつぶれちゃったかも」
 特別製の閃光弾だった。
 無視してリツコは器材を漁った。
「これね」
 そこに黒いボックス型のコンピューターをみつける。
「さ、頼むわよ?」
 リツコは自分のノートを繋いだ、猫たちにラスボスの場所を伝える。
 プログラムを止めるリツコ。
「銃、貸してくれない?」
 何だろうとミサトは軽い気持ちで渡した。
 とどめとばかりに黒いボックスに銃弾を撃ちこむリツコ。
「ちょ、ちょっと…」
 カチン、ハンマーが空振る、弾が切れた。
 リツコはようやく一息はいて、ミサトへと振り返った。






 山中から今までと明らかに違う爆発が上がった。
 ミサトたちはルノーまで戻っていた。
「あいつら、戻ってくるんじゃない?」
 ミサトは首を振って否定する。
「空気が変ったわ」
「空気?」
 リツコには理解できないものだった。
「奴等は不安を感じているのよ」
「不安?、こっちは三人…、相手をしてるのはリョウちゃん一人だけじゃない」
 ミサトはルノーの運転席に乗り込んだ。


 暗闇を走りぬける、上がった火の手が僅かな光を与えていた。
 生い茂る雑草が乱雑な音をたてて踏みしだかれる。
「向こうはそろそろ終わった頃だな」
 加持は弾切れになった銃を捨てた、残りは自前のナイフ一つだ。
「あと二人、なんとかなるか?」
 息を殺して隠れる、がさ、がさ、足音が近づいてきた。
「すまんな」
 口の中で呟いて、後ろから喉笛をかき切った。
 ピューと間抜けな音をたてて気管から空気が漏れる。
「うわああああああああ!」
 それを偶然にも残る一人が見ていた。
「くっ!」
 逃げる、だが遅かった。
 まるでスローモーションのように、その男の投げた手榴弾が加持の足元に転がった。






 ミサトはルノーを出した、加持を待たずに。
「いいの?」
 リツコの問いに、ミサトは答えなかった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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