Episode:10G
「あまり無茶をするものではないぞ、碇…」
「すまない、冬月先生」
ゲンドウが先生と呼ぶ時は、かならずバツが悪い時だった
飛来するグレネード弾の弾道さえ見切るゲンドウだ、銃口の向きから弾丸を避けるぐらいわけは無かった。
「まあいい、せいぜいその頬の言いわけを考えることだな」
意地悪な視線をむける。
ユイにどうごまかすか、かなり難しい問題だった。
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第三新東京市、加持のアパート前にルノーを停めて、ミサトは運転席から外へ足を放り出していた。
膝の上で頬づえをついている。
車のボンネットにはリツコが腰かけていた。
「おそいわね、彼」
「時間通りに来たことなんてないもの、あのばぁか…」
うつむく、髪が背から流れて顔を隠した。
ミサトにかける言葉が思い浮かばず、リツコは空を見上げて星を数えた。
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ゲンドウと共に帰ったシンジは、遅いながらも夕食にありついていた。
「どお?、シンちゃん」
「まだ終わんないみたい」
二人してリビングを覗き見ている。
そこにはゲンドウの頬にクスリを塗っているユイがいた、半べそだ。
「いたっ、痛いよユイ…」
「まったく!、あたし一人置いてみんなで何してるのかと思ったら…」
ぷんぷん怒っていた。
ゲンドウはひたすら平謝りしている。
「また危ない事したんじゃないでしょうね!」
「シンジたちを連れてか?、まさか、会議でののしりあいになってな、引っかかれただけだよ」
「引っかくだなんて、女の子じゃあるまいし…、はっ!、女の子!」
青ざめるゲンドウ。
「ちがうっ、それは違うぞユイ!」
「えーえー信じますとも!、でもね、嘘吐いても冬月先生に聞けばわかるんですからね!」
シンジとレイは視線を合わせた。
「気のせいかなぁ、なんだかあそこにシンちゃんがいるような気がする…」
実はシンジも同じことを思っているところだった。
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朝が来た、助手席で眠っているリツコ。
白衣をシーツがわりにかぶっている、それを見てから、ミサトは呟いた。
「ほんとバカね、あいつ…」
登る朝日、それを背に加持が歩いてくるような幻覚を見た。
「ほんと馬鹿なんだから…、あたしも」
リツコは狸寝入りをしたままで、すすり泣きを始めるミサトの声を聞いていた。
続く
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