Episode:11D





「あなたぁ〜、お手伝いするってばぁー!」
 扉をカリカリと掻く。
「いいよ!、自分で着替えるから!」
 一生懸命自室の扉を押さえているシンジ。
「だめよぉ、擦り傷とかクスリ塗らなきゃいけないでしょ?、ちゃんとしなきゃ治りが遅くなるんだからぁ」
 言ってる事はもっともらしいが…
「トイレまでついてこうようとするんだもんなぁ、信用できないよ…」
 ふうっとため息をつく。
 気を抜いてしまった。
 ガラッ!
「あなたっ!」
「うわぁ!」
 慌ててベッドの上へ避難する。
「ななななな、なんですか!?」
「夫婦はお互い仲良く、助けあっていくものでしょ?、さあっ!」
 にじり寄る。
「うふふふふ、ちゃんとクスリ塗ってあげるからね?、塗り薬、手で直にこう…」
 といってワキワキする。
 ぬらぬらとクスリで光っていた。
「それから、あ、そうだ汗かいてない?、ちゃんと着替えましょうね、パンツまで」
 目がイってる。
 うふふふふ…
「誰か、誰か帰ってきてよ、早く…」
 シンジの命運は尽きかけていた。






「加持さんはいない、ミサト先生は何も知らない、まったくもう最低ね…」
 ヒカリと別れ、二人は家路についていた。
「でもでも、おじ様達なら何か知ってらっしゃるかも」
「あ、そうか…」
 時計を見る、五時、まだゲンドウたちが帰ってくるには早い。
「家帰ってご飯食べて、それから聞きに行けばちょうど良いかな?」
 だがゲンドウたちは思ったよりも早く帰ってきていた。


「ほほぉ、新婚ごっこか」
「はい!、でもシンちゃんたら照れてばっかりで」
 きゃうーんっと、両頬に手を当てて恥じらう。
「いかんぞシンジ、一度はじめたのなら役になりきらねば」
 どうやらレイの味方らしい、シンジは助けを求めて母を見た。
「あらあらまあまあ、若い頃を思い出しますわねぇ」
 アルバムを漁っている。
「はい、あーん」
 夕食はゲンドウたちが買ってきたお土産の、広島風お好み焼きだった。
「れ、レイ…、もうやめようよぉ」
 親の目を気にする。
「うるうるうるうるうる…」
 口に出して瞳をうるませる。
「シンジ、食べてあげなさい」
「え?、だって…」
「命令だ」
 口の片端が笑いに歪んでいる。
 パクっと一口。
「おいしい?、ねえおいしい?」
「う、うん…」
「よかったぁ!、じゃもう一口…」
 レイが作ったわけじゃないのに、なんで嬉しいんだろう?
 シンジにはよくわからなかった。






「加持のバカヤロー!」
 ミサトの叫びが店内にこだました。
 もうすっかり出来上がっているようだ。
「ええ、それでですねぇ、もう手がつけられないんですよ」
 片方の耳に受話器を押しあて、反対側は手で塞いでいる、マコトは助けを求めていた。
「自業自得よ、自分で何とかなさい」
「で、ですが…」
「そのぐらい序の口よ?、その程度で音を上げるなら、誘わないことね」
 冷たく電話を切るリツコ。
「こ、これで序の口…」
 とうとう他人のテーブルのお酒にまで、手を出しはじめている。
「ええいちくしょう!、俺も男だ、女一人ぐらい扱えなくてどうするんだよ!」
 手に余るのは明らかだった。


「あの…、シンちゃん?、お背中お流ししましょうか?」
 心休まる暇もなく、レイの暴走は続いていた。
「良いって、良いってば!」
 ここだけは何としても死守しなければ!
 絶対防衛線を引くシンジ、風呂場に立てこもっていた
「いまさら恥ずかしがらなくってもぉ…」
「恥ずかしいに決まってるだろうっ!?、シャワー浴びるだけなんだから何てことないよ、大丈夫だって!」
 人がシャワー浴びはじめてから来る事ないだろうに!
 絶対狙ってたんだな、このタイミングをっと、シンジは両親の帰宅で油断してしまったことを後悔していた。
「だめだってばぁ!、シップの匂いとか、クスリとかちゃんと落ちないじゃない、それじゃ新しいクスリが塗れないよぉ」
 塗られてたまるかっと思う。
 だがさっきのことを考えると…
「こういう時に限って、アスカたち来ないし…」
 その頃居間では…
「あなた?、何処におかけになられるんですか?」
「ああ、アスカ君達にな」
 電話をかける。
「あ、おじ様帰ってらしたんですか?、待ってたんです!、聞きたいことがあって…」
 うわー!っとバスルームから悲鳴が聞こえて来た。
「し、シンジ!?、今の悲鳴シンジですか?」
「ああ、今レイと風呂に入るところらしい…」
 がしゃん!っと切れた。
 耳をおさえて、ゆっくり受話器をおく。
「おじゃましまーっす!」
 どたどたとアスカは駆けこんだ。
「早いな…」
 ミズホも「おじゃましまーす」と上がってくる、こっちは事情がよくわかっていないらしい。
「あなた?」
「チャンスは平等に…、そう言ったのはユイだろう?」
「あたし、そんなこと言いましたっけ?」
「言わなかったか?」
 空白の数秒間。
 バカシンジー!
 わあああああああああ!
 シンジ様のスケベ〜!
 や〜んシンちゃんのエッチぃ☆
 というセリフが流れて消えた。
「まあ、いいですけど…」
「うむ」
 何事もなかったかのように新聞を広げる。
 シンジの悲鳴は続いていた。



続く








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