Episode:13C





「うそ…、なの?」
 きょとんとシンジ。
「あったりまえじゃない!、でなかったら、どうしてわざわざ入試受けてんのよ」
 まったくしょうがないわね〜っと、正座させる。
「でもまるっきり嘘ってわけじゃないのよね」
「そうそう、引っ越すのはホントなんだし」
「レイさんは反省してください!」
 睨まれた。
「じゃあ、アスカたちは何処へ引っ越すの?」
「ここ」
 といって、下を指差す。
「へ?」
「ここに引っ越すのよ、あたし達だけ残してくと心配だってんで、おじ様が呼んでくださったの」
 アスカとミズホを交互に見る。
「ですからぁ、ミズホはお隣さんから同棲相手になるんですぅ」
 きゃっと頬を赤らめる。
「ちょっと待ちなさいよ、同居人よ同居人!」
「そうよ、何言ってるのミズホ!」
「嫌ですぅ!、同棲のほうがいいですぅ!」
 暴れる暴れる。
「大体あんたも悪ふざけが過ぎんのよ!」
「えー?、だってぇ、シンちゃん面白いようにひっかかるんだもぉん」
「だったらちゃんとフォローもって…、何よシンジぼうっとしちゃって」
「あ、うん…」
「もしかして、私たち御迷惑なんですかぁ?」
 うるうるとミズホ。
「ち、ちがうよ、何だかほっとしちゃって…」
「何よ、あんたあたし達と同じクラスじゃなくっても良いって言ったくせに、不安なことでもあったわけ?」
「だ、だからじゃないか…、そんなの、家に帰ればいつでも会えるって思ってたから…」
 しゅんとする。
「し、シンジ様ぁ、そんなにミズホのことを…」
 何故か対象が限られている。
「わかりましたぁ!、ミズホはもう一生シンジ様のお側を離れません、お部屋も当然一緒ですぅ!」
「うわぁっ、何言ってんだよ!」
「そうよ、離れなさいっての!」
「でもでも、部屋、足んないよね?」
 レイの一言に、全員がぴたっと動きを止めた。
「えっと…、レイの部屋…って三人も無理だよね?」
「じゃあ、2の2?」
「って、一人はレイの部屋でしょ?、後は?」
「「「当然…」」」
 三人一斉にシンジを見た。
「まずい、それはまずいよ!」
 逃げ出そうとしたシンジの腰に、ミズホが噛り付いた。
「先程の宣言は嘘じゃないですぅ!」
「こらミズホ離れろっての!」
「もうっ、それじゃあアスカと一緒じゃない、シンちゃんに嫌われても知らないからね?」
 ピョンっと離れた。
「あ、あんたたちねー…」
 拳がフルフルとふるえている。
「あっ、あっ、でもほら、今ここで決めちゃうとリスク大きいよね?」
「何だよリスクって?」
「え?、だって夜這いとか夜這いとか夜這いとか…」
 ぼっと湯気を立ち上らせるミズホ。
「ミズホミズホ…」
 レイが何か、ぼしょぼしょと耳打ちした。
「ちょ、ちょっとレイ…」
「何吹き込んでるんだよ!」
「うわー、うわー、ホントですかぁ!?」
 熱い眼差しを向けるミズホ。
 シンジの袖をつかむ。
「シンジ様ぁ、お待ちしてますぅ」
 はうっとうつむいた。
 窮地に立たされるシンジ。
「ちょっとレイ、あんたねぇ!」
「何を言ったんだよ!」
「えー?、例えばシンちゃんのご飯よそってあげたりとか、お茶碗とか片付けてあげたりとか、残したものつまんでみたりとか、シンちゃんの後にお風呂入ってみたりとか、ま、色々そんな感じの話をしただけだよぉ〜」
「レイ…、あんたちょっと危ない…」
「う…、レイの前にお風呂入るのヤだなぁ…」
「え?、じゃあ後のほうが良いの?、ねえ良いの?」
 つめよる。
「バカ…」
 冷たくアスカ。
「ふふうん!、じゃあやっぱりシンちゃんの後はあたしっと!」
「そんなのだめですぅ!、私が入りますぅ!」
 にらみ合い。
 シンジがふと思いついた。
「でも、僕の前って大抵父さんが入ってるんだよね…」
 その場が凍りついた。
「シンちゃん、今度から一番風呂決定ね…」
 シンジは返事をしなかった。






「おーのーれ、ゲンドウ!、許さんぞ!」
 ダイバーウォッチをゲンドウへ向けて、かちっとスイッチを押した。
 ビビビビビっと、謎の光がゲンドウを襲う。
「こんなこともあろうかと、科学的怪光線を仕込んでおいてよかったわい!」
「何が良かったんだ、何が!」
「ぬぬぅさすがゲンドウ、避けおったか!」
 お互い腰だめに対峙する。
「安心したまえ、こんなこともあろうかと、出力は麻酔薬程度におさえてある!」
「安心できるか!」
「すまんのぉ、ゲンドウ君」
 急に遠い目になる。
「これも赤木君と言う悪魔の申し子に魅入られた者の運命だと諦めてくれい」
 そういうわけだからっと、怪光線を放った。
「どうも様子がおかしいとは思っていたが、そうか、赤木博士の差し金か」
 さっと避ける。
「ええい大人しく科学的怪光線の餌食にならんか!」
「ならんわ!」
 転がっていた部品の一つを投げつけた。
「科学的防御壁!」
 と言ってラップを縦に展開する。
「それはまさかっ、ゼーレ化成で研究中の新型ラップではないのか!?」
「その通り!、さすが防弾能力も絶大だな」
「きさま人の迷惑と言うものを考えたことがあるのか!」
「ない!、なんせわしは赤木君に魂をうっとるからのぉ!」
 怪光線を放った、いびつに残されていた壁が崩れる。
「貴様出力を上げたな!」
「許せ!、貴様はわしの敵なのだ、だから私が倒す!」
「モデルハウスを破壊するなバカ者!」
「誰がバカじゃ!」
 科学的怪光線がさらに部屋と部屋をぶち抜いた。
「その小さな時計にどうやってそれだけのエネルギーをため込んだ!」
「これが私の科学力なのだよゲンドウ」
「嘘をつけー!」
 ゲンドウは一番奥の部屋へ逃げこんだ。
「とうとう追い詰めたぞ碇ゲンドウ!」
 破壊工作を重ねすぎて、そこら中の壁に大穴が開いていた。
 ほとんどの部屋が繋がってしまっている、二人は最後に残されている壁一枚を隔てて対峙した。
「極東のフランケンシュタインも最後の時を迎えるようじゃな」
 くっくっくっと、暗い笑いを上げる。
「さらばじゃ!」
 ピッと腕時計から怪光線を放つ、壁面に直径20センチ程度の穴が開いた。
「なんじゃと!?」
 その向こうの部屋で、ラップを広げているゲンドウ。
「なるほど、さすがはゼーレ化成だ」
 にやり。
「貴様、いつ…」
「さらばだ」
 げしっと壁を蹴った。
 今の怪光線で脆くなってしまった壁が、あっさりと倒れた。
「ぬおおおおおお!、ゲンドウ!!」
 ぶしっと潰れる岸和田。
 冷ややかな目で見ているゲンドウ。
「岸和田か…、惜しい男よ」
 とんとんとんっと、階段を上がってくる足音。
「二人とも、お茶が入りましたよ?」
 ユイは階段を上がった所で呆れた。
「あらあらあら…」
 右を見て。
「まあまあまあ」
 左を見る。
「ずいぶんと散らかしたのねぇ」
「それだけかー!」
 復活する岸和田。
「ええいっ、この惨状を見てそれだけかい!?、たとえばじゃなぁ、「人様のお家を破壊するようなムッツリスケベなんて最低よー!」っと、キタキタ踊りを踊るぐらいの茶目っけがあってもいじゃろうが!」
「あらそうですか?」
 ぐぐぐぐぐっと、何かを堪える岸和田。
「ふっ、甘いな」
 くいっと眼鏡を直す。
「これがニッポンの伝統芸、『のんきな母さん』とゆー奴だ!」
「がーん!」
 っとわざわざ口に出して衝撃を受けている。
「ま、負けた…」
 がっくりと膝をつく。
「だがしかし、この敗北は決してゲンドウ、貴様に受けたものではないぞ」
「ああ、わかっている岸和田」
 ふっと自嘲気味に含みあう。
「わたしとしたことが、まんまと貴様の策略にはまってしまうとはのぉ」
 はっはっはっはっはっと、立ち去ろうとする。
「どこへ行く?」
「科学と言う名の桃源郷じゃ!、次は負けんぞ、やーっすかわ君、車を用意しろ!」
 すたすたと、だがユイがその首根っこを捕まえた。
「な、なんじゃ?」
 にっこりとユイ。
「散らかしたら散らかしっぱなしで行ってしまおうというのは、甘いんじゃないですか?」
 その後二人はさんざんこき使われ、がらくたを処分するまで解放してもらえなかった。
「うう、ゲンドウ、お前の嫁さん恐いのぉ」
「うむ」
「そこっ!、何か文句でもあるんですか!」
 ひーっと叫びがこだました。






「そう、失敗したのね」
 公衆電話から、秘密回線を通じて電話をかけている。
 相手は赤木ナオコ。
「うむ、碇ユイ、なかなかの強敵じゃ」
 腰をさすっている岸和田。
「お前さんも気をつけることじゃな」
 がちゃんっと電話を切って、岸和田は寒風の中に身をさらした。
 白衣の襟をたてる。
「科学の道は、遠いのぉ」
 ユイのマッサージの味を反芻しながら、岸和田は闇へと消えた。
「うむ、いい太股であった」




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