Episode:14E
控え室。
「すみませーん、リハお願いできませんかぁ?」
っとADの女の子が覗きに来た。
「ご、ごめんなさい!、もうちょっと、たぶんもうすぐ来ると思いますから」
平謝りするメイ、はっとする。
「あ、まさか…、こうやって下手に出といて「リハさぼる気だなこの野郎」とか思ってるんでしょ?、思ってるのね!?」
「え、ええ!?、あのちょっと!!」
「いいえ、何も言わないで、全てわかってるの!、心の底で皮肉ってるんでしょ?、わかってるの、わかってるのよ!」
おほほほほーっと、涙を流しながら笑った。
「すみませぇん、ちょっと今錯乱状態入ってて…」
かわりにミヤが謝った。
逃げ出す女の子。
「ああ、ミヤ、ごめんなさい、あたしがいたらないばっかりに、あなたに迷惑かけちゃって」
ミヤの手を取る。
「許してくれるとは思ってないわ!、自分の恥を隠そうなんて思ってないもの!、さあ笑うなら笑って、どうせあたしは一人じゃなんにもできない、ただのピエロなんだから!!」
あうーっと、その場で涙を流す。
「面白いかも…」
「ねぇ?」
その呟きにはっとした。
「マイ!、レイも!?」
「マイ?、マイー!」
抱きつくメイ。
「うわっぷ、痛いよぉ」
「レイ、どうしてここに…」
呆然とするミヤ。
「マイがシンちゃんの所に遊びに来たのよ…」
頭痛を堪えて説明する。
「一体何を考えているの、あなたたち…」
「もう、マイったらお茶目さんなんだから」
額をつんっとつつく。
「まったく、おかげでこっちは大変なことになっちゃってるんだからね?」
「大変って?」
「あのね?、シンジお兄ちゃんと一緒に歌うの!」
「はぁ!?」
メイにすりすりされながら、マイはニコニコと続ける。
「お兄ちゃん女の子のカッコをしてね?、それで一緒に月の歌を歌うんだよ?、すごいでしょ!」
得意満面。
「いったいどこでどう、そういう話になったの?」
レイを見る。
「ドームに乱入しようって…、ほら、前にもやったでしょ?」
「知らない」
「以前、あたし達の放送とぶつかった時のことを言っているのね?」
ようやくメイが普通に喋った、まだマイを解放しようとはしてないが。
「そう、またああいうことしようって…、まさかあなたたちが来ているとは思ってなかったんだけど…」
ため息をつく。
「あのー…、リハ、お願いできますかぁ?」
別の女の子が様子を見に来た。
「あ、はい!、すみませんでした!!」
ほら行こう?っと、マイを急かす。
「どうも、申しわけありませんでした、今後このようなことは無いようにしますので…」
「まったくぅ、ほんとですかぁ?」
マイとメイがいなくなった途端、女の子の口調が変った。
「香港で売れっ子か何だか知りませんけど、時間も守れないなんて、プロとしての自覚が無いんじゃないですかぁ?」
かっちーんっと、何故かレイのこめかみに血管が浮いた。
「だから謝ってるじゃないですか!、こっちにだってこっちの都合ってもんがあったのかもしれないでしょ!?」
「なによあんた!、まったくこれだから盆地胸は礼儀知らなくて嫌なのよね、ペチャパイはペチャパイらしく、人生街道はじっこ生きてりゃ良いのよ、ほんと!」
うっとつまる、見るとその娘は…でかかった。
憎しみで人が殺せたら!
血涙を流しそうなレイとミヤ。
「じゃ、頼みますよまったく!」
ばたんっと、音をたてて戸を閉じる。
「うう…、そんなに盆地じゃないやい…」
ぶつくさとレイ。
「ペチャパイってバカにしたぁ…」
同じくミヤ。
「盆地胸盆地胸盆地胸盆地胸盆地胸…」
「ペチャパイペチャパイペチャパイペチャパイペチャパイ…」
二人の目が合う。
「「復讐してやる…」」
こっくりと頷きあって、ひゅーほほほほっと謎の高笑いを上げながら、二人は姿を消した。
カチャ…
「うに?」
覗きこむ、シンジそっくりの女の子。
キィと命名された子だ。
「レーちゃん、いない…」
キィは二、三度首を傾げると、レイを探して後を追った。
●
別の楽屋。
「キィさん!」
シンジの手をとるケンスケ。
「あああああ、あの、えっと…」
結局レイのズボン(ウエスト88もあるだぶだぶのズボン)とトレーナー、それに母親のウィッグを被って、シンジはキィに変身していた。
「きっと来てくれると思ってたんだ!」
くくくっと笑っているタタキ、それにトウジ。
「お膳立てはできてる、向こうの許可があるってんなら話は早い、乱入に見せかけたショーって寸法だ、頑張ってくれよ?」
気軽に言うタタキ。
「でも…」
「この間とは観客の数も違うけどさ、大丈夫、きっとうまくやれるさ」
無責任なケンスケ。
「シン…じゃなかった、キィ、いるぅ?」
「あ、アスカ!、それにミズホにカヲル君まで…」
一瞬隠れようと思ったが、場所が無かった。
「まったくぅ、鈴原が教えてくれなかったら、またのけ者にされる所だったじゃない」
さり気なくお尻をつねる。
「ご、ごめん…、でも何しに来たの?」
「決まってるじゃない!」
紙袋を突きつける。
「あんたの衣装を持ってきたのよ」
ニヤーリ。
「えーーー!、ちょ、ちょっと待ってよ!」
「だめですぅ!、ささ、殿方は退出してください〜」
皆の背を押す。
「あ、ちょっと待って…」
嫌な予感に苛まれた。
「じゃ、キィさん、後でね」
バタン。
閉じられる戸、妖しげに笑みを浮かべる二人。
「うう、なんだかこんなのばっかりだ…」
泣きそうになるシンジだった。
●
ドーム内が異常なほどの熱気に包まれた。
とうとうコンサートが始ったのだ、どこぞのアイドルグループがノリだけの歌を歌い、オープニングアクトを努めている。
「ふん、くだらんな」
それをVIPルームから見下ろして、ゲンドウは一人ごちた。
「一般の警備会社に扮装させて、SSSを配置した」
背後で冬月が報告する。
「問題は最後のマイ&メイだな」
「良いのか碇?、私のシナリオには無いぞ、これは…」
今日の進行用プログラム、関係者用のそれは、一部修正されていた。
「かまわん、シナリオにない事件も起きる、客も喜ぶだろう」
キィ乱入、その殴り書きを見る冬月。
「ああ、だが…」
プルルルル…
会話を遮るように、呼び出しベルが鳴った。
「何事かね?」
嫌な予感。
「なに!?、変質者ぁ!?」
まさしく予想外の出来事に、冬月は目眩いを覚えた。
「突如襲いかかって、パイ拓を取っている?、なんだねパイ拓というのは?、女の子はちょっと良かったと…、何をいっとるんだね?」
ゲンドウに聞かせるため声に出していた、が、途中から顔が赤くなっている。
「くだらん、そんな事にかまっているヒマは無いはずだ」
だがゲンドウの予想すらも越えて、やってる当人達はどてらい奴等だったのである!
「ひゅーーーほほほっ、次行くわよ壱号?」
「もちろんよ弐号」
レイとミヤだった。
ヤン坊マー坊のお面を被り、衣装部屋で見つけた妖しげなコスチュームを身にまとっている。
「むっ、ターゲット捕捉!」
「いくわよ!?」
そこにはADに足蹴にされている女の子がいた。
蹴っているのは、先程レイたちを怒らせたADだった。
「ほーらほらほら、さっさと仕事をするぅ!」
「ひーん!、でもでもぉ」
「そうかそうか、文句たれるか、ならその胸が実は上げ底パット入りだってこと、言いふらしても良いってのね!?」
「あううーー、そ、それだけは御勘弁を!」
「つーんだ、言いふらしまくってやる、これであなたは業界のつまはじき者よ?」
「お願いですぅ、実はAカップだなんてことがバレちゃったら、明日から仕事させて貰えなくなっちゃいますぅ!」
「ふふん!、悔しかったら乳でかくしてみなさいよ、ほれほれほれ」
「ひーん!」
泣いてすがる子を蹴飛ばす、そこへ響く高笑い。
「「ひゅーーーーーーーほほほほほ!」」
しかもステレオだ。
「だれ!?」
「巨乳ハンター!」
「巨乳をたてに弱い者いじめなんて許さない!」
「「貧乳にかわってお仕置きよ!」」
「きゃーーーーーー!」
たらい一杯の墨汁をぶっかけた。
「ちょっとなに、あん!」
すばやく脱がして、わしゃわしゃわしゃっと、純国産和紙で型を取るレイ。
それを二人で大きく広げた。
「パイ拓、ゲットだじぇい☆」
「ちゃー☆」
二人はいじめられていた子にポーズを決めると、ものすごい勢いで走り去った。
「ふええーん、一体なんなのよぉ!」
墨汁まみれで乳を放り出してたまま、ADは泣きはじめた。
…が!
被害はそれ一つに留まらなかった。
「被害が拡大しているだとぉ!?」
一体SSSは何をやっているんだ!
頭を傷める冬月。
「まさか陽動!?」
そんなわけはない。
オペラグラスでコンサートを見ているゲンドウ。
ゲンドウはその犯人を捕らえてしまった!
一瞬硬直する。
「碇?」
歌手の女の子が舞台を降りた所で、妖しい二人組に引きずり倒されていた。
「なにか見つけたのか?」
「冬月先生…」
口元が引きつっている。
「後を頼みます…」
ゲンドウは責任の全てを放棄した。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'はGenesis Qのnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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