Episode:15E





「あ、シンジ様!」
 レイとはぐれたシンジは、一人で講堂に向かっていた。
「ミズホ!、どうしたのさ?」
 息を切らせて走り寄ると、ミズホはそのままシンジに抱きついた。
「シンジ様、ごめんなさい、ごめんなさいですぅ!」
 そのまま泣き出した。
「ど、どうしたのさ?」
 困惑するシンジ。
「ミズホは、ミズホは悪い子なんですぅ!」
 うわあああああんっと。
「ミズホ?」
 シンジの声に、ミズホは顔を上げた。
 泣きはらし、目が赤くなっている。
「よくわかんないけどさ、ミズホは悪い子じゃないよ、そうでしょ?」
 にこっと笑う。
「シンジ様…」
 感激するミズホ。
「あったっしっを、ここまで怒らせた子供達は始めてよ」
「うわぁ!、ミサト先生!」
 思わずミズホを突き飛ばしてしまうシンジ。
「きゃん!、ひ、酷いです、シンジ様ぁ…」
「あ、ごめん…」
 尻餅を付いたミズホに手を貸す。
「あんた達、他の連中は?」
 ミサトのこめかみには、青筋が浮かんでいた。
「えっと…、体育倉庫の方にいましたけど、もうすぐ来るんじゃないかと…」
「そう、あなた達は教室に帰りなさい」
「え?、教室ですか?」
「そうよ?」
 ツノ付きのミサト。
「大人しく待ってなさい」
 ミサト先生、切れてるよ…
 シンジは無意識にミズホに抱きつき、震え上がっていた。


「うむ、卒業式の居残りというのも初めて聞いたな」
 父兄が十数名残っていた、中にはゲンドウとユイの姿も混ざっている。
 カメラを構えているゲンドウ。
 後は卒業式をサボった一同だ、教室でやり直しをうけている。
「相田ケンスケ君」
「ふわい…」
 全身包帯だらけのミイラ男が立ち上がった。
 松葉杖をついて、卒業証書を受け取りにいく。
 くっそー、これもシンジのせいだ…
「なにかいった?」
「べふに…」
 包帯がじゃまでうまく話せなかった。
「シンジ様、シンジ様?」
「なに?、ミズホ」
 いつもの席順ではなく、みな思い思いに座っていた。
 ミズホはシンジの後ろに陣取っている。
「ミズホ、もう今日のようなことは嫌ですぅ」
 シンジはクエスチョンマークを浮かべた。
「シンジ様が私以外の方に微笑まれたりするのは嫌ですぅ」
 なんだそんなことかと、シンジは胸を撫でおろした。
「あと手を繋がれたり、抱きつかれたり、抱き合われたり、それからえっと…」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってよミズ…!」
 慌てて振り向こうとしたのだが、お尻の辺りに激痛が走った。
 横を見る、隣の席のアスカが手を伸ばしてつねっていた。
「シンジ、逃げたら承知しないからね」
 微笑んだまま呟いた。
 青ざめるシンジ。
「碇ぃ、てめぇ…」
「惣流達だけでなく、どこまで鬼畜なんだてめぇは…」
「あ、あのちょっと?」
「くおおおおお、嫉妬の炎がめらめらと…」
 再燃する。
「シンジ様、約束してください〜!」
「え?」
 とりあえず逃げ出すシンジ。
「もう二度と、私以外の方と楽しげにお話なさらないって」
「そ、それはちょっと…」
 前門の狼、後門のトラと言う言葉が脳裏を過った。
「約束してくださらないんですかぁ!?」
 ぶわっと一気に涙目になる。
「わわわ、ミズホ!、だってそんな…」
「ほらほらシンちゃん、この場だけでも約束してあげればぁ?」
 かなり上機嫌のレイ。
「レイ!、あんたねぇ、自分だけ良い目見たからって、よくそんなこと言えるわねぇ」
「え〜?、だってシンちゃん優しかったしぃ、こう「ぎゅー」って…」
 がたがたと机をくっつけて、シンジの腕に抱きつく。
「れ、レイ!」
「あんたなにやってんのよ!」
「だってシンちゃんと机を並べるのって、もう最後かもしれないしぃ」
「あ、そう言えばそうね…って!、そんなことにばっかり気がついてんじゃないわよ!」
「へへーんだ、羨ましい?、羨ましい?」
「ちょっとレイ、離れてよ!」
「シンジさまぁ〜」
 シンジの首を持ってくいっと回した。
 くきゅ☆
「くびー!、首が、くびーー!」
 無理矢理自分の方へ向けるミズホ。
「ダメですぅ、シンジ様は私だけ見ていてくださればいいんですぅ、約束ですよ、約束しましたからね!」
「ちょっと何そんな強引なこと言ってんのよ!」
「いいんですぅ!、シンジ様には私だけいればいいんですぅ!、シンジ様!」
「な、なに?」
「他の方との約束なんて守る必要ありません!、わかりましたか?、わかりましたね?」
「そんなのひどーい!」
「そうよそうよ!」
 普段は割り込んでこない女の子たちが立ち上がった。
「そんなの碇君の自由じゃない!」
「むっきー!、うるさいですぅ!」
 なにしろ告白タイムのこともあって、女の子たちのテンションは異常なくらい高まっていた。
「横暴じゃない!、碇君の意志を尊重しなさいよ!」
「もうこれ以上シンジ様には近づけませーん!」
 立ち上がっての罵り合い。
「じゃああたしはシンちゃんが浮気しないように捕まえとこうかな、妻として」
「誰が妻よ、誰が!」
 アスカとレイは、シンジの腕の取り合いをしていた。
「悪夢よ、これは悪夢だわ…」
 ミサトは教卓の裏で頭を抱えていた。
「シンジの奴、もてるではないか」
「そうですねぇ」
 騒ぎはいつまでもおさまりそうに無かった。
 卒業証書の受け渡しが終わるには、あと数時間はかかりそうだった。






 一方その頃…
「遅いなぁ、シンジ君」
 伝説の樹の下で、一人寂しくシンジを待つカヲルの姿があったが、全員その存在を忘れ去っていた。
「シンジ君、僕は君に愛を伝えるために生まれてきたのかもしれない」
 一人でも結構楽しそうなカヲルだった。



続く







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