GenesisQ’

Episode:16A





 トサッ!
 何かが倒れる音にケンスケはゆっくりとまぶたを開いた。
「はうあ!」
 ケンスケの目の前に胸があった、それと唇。
 夜、暗い室内、色はわからない、なのにそのボリュームと質感ははっきりと認識できた。
 な、なんだよ、何がどうなってんだ!?
 ちょっとだけ視線を上げる、アスカだった。
「う〜ん、シンジぃ…」
 うわっうわっうわっ!
 寝ぼけて寝返りを打った。
 一瞬だがシャツの首もとから白い谷間が見えた。
 あああああああああああああ!
 精神崩壊。
 一体何がどうなってるんだよぉ!
 ケンスケは混乱しながらも、なんとかこれまでのことを思い出そうと頑張った。



 第拾六話「っポイ!」



「と、いうわけでお引っ越しー!」
「わー、どんどん!」
「パフパフですぅ!」
「ってこら、シンジぃ!」
 こそこそと逃げ出そうとしていたシンジ。
「あんたどこ行く気よ!?」
「だって恥ずかしいんだもん!」
「なにがよ!」
 カウンタックのめちゃいけ引っ越し便が荷物を運び出していた。
 そのトラックの側で騒いでいる三人と一人。
「その大声が恥ずかしいんだってば」
「いわば今日という日は、あたしとシンちゃんの新しい生活が始まる門出の日なんだよ?、ほらこの喜びを歌にして伝えなきゃ!」
 シンジは死にたくなるようなドナドナを口ずさんだ。
「新しいお家って、どのようなお家なんでしょうかぁ?、楽しみですぅ!」
「部屋広いといいのになぁ」
「あっ、あたしは部屋数少なくてもいい!、ね?、シンちゃん!」
「相部屋なんて許しませ〜ん!」
「そうよ、なんであんたとシンジが一緒になるのよ!?」
「アスカはミズホ担当でしょ?、んであたしはシンちゃん♪」
「誰がそんなこと決めたのよ!」
「え?、だって今まで一緒に住んでた者同士ってことで、ねぇシンちゃん?」
「絶対に無い話で盛り上がるのはやめよ〜よぉ」
「シンちゃん嫌なのぉ?」
 レイはふきゅうっとこの世の終わりのような顔をした。
「あんたねぇ、せめて部屋割りぐらい現実的なことで悩めないの?」
「それがどうかしたの?」
「ちっちっち!、誰がシンジの隣になるとかあるじゃない?」
「そんなのわたしに決まってますぅ」
「「決まってない!」」
「ふぇ〜ん、シンジ様ぁ…、あれ?」
 いない。
「シンジ様ぁ?」
 キョロキョロとミズホ。
 シンジは両親と一緒に、近所の人に挨拶していた。
「もぉ!、シンジ様ぁ!」
「あ、ミズホもほら、挨拶してかなきゃ」
「はいですぅ!」
 走ってく。
「ねぇ、そう言えばアスカのお母さんはどうしたの?」
「とっくに行っちゃったわよ」
 空を見上げる。
「ハワイにね」
 空はまるで、これからの生活を祝福するかのように晴れ渡っていた。






 白いワンボックスカー。
「ほらほらミズホちゃん、鼻かんで」
「ちーん!、ですぅ」
 ミズホは隣近所の人たちとのお別れに泣いてしまっていた。
「もう!、恥ずかしいったら…」
「そういうアスカも涙腺ゆるんでるしぃ」
 といいつつハンカチを差し出す。
「ふんっだ!」
 ハンカチを奪って、目にあてる。
 レイはそっぽを向いて見てない振りをした。
「ねえ父さん、新しい家ってどの辺りにあるの?」
「もうすぐだ」
 ゲンドウが運転し、シンジは助手席に座っていた。
 引っ越し屋のトラックは後ろからついてきている。
「大きなお家なんですか?、おじ様」
 アスカはシンジの頭をおさえて乗り出した。
「ちょっとアスカ、重いよ」
「ばっ!?」
 真っ赤になる。
「あ、あたしが重いですってぇ!?」
「最近ブラの紐が食い込んでましたぁ」
 ショオック、ショック、ショックとムンクの叫びが入るアスカ。
「え?、アスカ太ったの?」
 ごんっ!
「いったー…」
「太ってないわよ!」
「でもお尻のお肉も余ってましたぁ」
「やっぱり太ったの?」
「太ってない!」
「でもジーンズのウェストがきついって…」
「……」
「太ってないって言ってるでしょー!」
「なんで殴るんだよー!」
「思ってたでしょ、今!」
「あ、ほらほら、あの家じゃない?」
 アスカの気を引いてごまかす。
「え?、うそ」
「…デザイン古いね?」
 レイの素直な感想。
「1980年代前半の家をまねてるんだそうよ?」
「へぇ…」
 白い大きな家だった。
「結構部屋数多そうね?」
「三階建ですかぁ?」
「いや、2階と屋根裏部屋だ」
「屋根裏部屋…、いいわねぇ」
 心動かされるアスカ。
「隠し部屋みたいで面白そうだけど…、広いんですか?、お母さま」
「ええ、天井が少し低いぐらいで…、でもお父さんでも立てるぐらいだから心配ないわよ?」
「じゃ、そこあたし☆」
「なに勝手いってんのよ!」
「わたしはそれでも良いですぅ、そういう事ですから、シンジ様の隣はわたしと言うことで…」
「「だめ!」」
「ふえーん、どうしていつもシンクロなさるんですかぁ!?、ふぇ〜ん、シンジ様ぁ!」
「あ、ちょっと待って、ほら、ベランダに誰かいるよ?」
 手を振っている。
「え?、誰?」
「か、カヲル!」
「「えー!」」
「ななな、なんで!?」
「どうしてカヲルが!」
「おじさまぁ〜!」
 アスカ達はルームミラーに映るゲンドウを睨んだ。
「彼も一人暮らしでは寂しいだろうと思ってな」
「「「い、いらないのに…」」」
 あううっと三人は脱力してシートに沈みこんだ。






「なんであんたがここにいんのよ」
 玄関前で、じろりと睨むアスカ。
「今日から僕もシンジ君の家族になる、そういうことさ」
「家族じゃないでしょ!、居候!」
 レイはうーっと威嚇した。
「おや、じゃあ君はどうなんだい、レイ?」
 うっとつまる。
「そういうわけなんだ、こらからよろしくね、シンジ君」
「うん!、こちらこそ、カヲル君」
 助かった…、これでアスカ達に襲われないですむよ…
 カヲルの目つきに気づいてない。
「このおホモダチが…」
 三人が不穏当な目つきで睨みつけた。
「あ、ほら、はやく中を見ようよ?、ね?」
 カヲルの背を押して逃げるシンジ。
「そうだね、さあ僕達の新居を…」
「新居ってなによ!」
 ガス!
 アスカの踵落としが見事に決まった。
 沈黙したカヲルを置いて、皆で玄関をくぐる。
 その時、ミズホがシンジの袖を引いた。
「なに?、ミズホ」
「あの…」
 何かの箱を渡す。
「ケーキですぅ」
「…なにかと思った、どうしたの?」
「シンジ様のお家で、最後に何か作ろうと思いまして…」
「へぇ…」
 ケーキの箱とミズホの顔を交互に見る。
「やっぱり女の子だなぁ…、そんなこと考えなかったよ」
 え!?っとミズホの顔が赤くなった。
「ありがとうミズホ、後でゆっくり頂くよ、いいでしょ?」
「はいですぅ!」
 ミズホはスキップしそうな感じで家へ入っていった。
「へぇ…、広いキッチンねぇ?」
 取り敢えず一階から見て回る。
「女の子が三人もいるんですもの、これぐらいはね?」
 以前見に来た時よりも、さらに広くなっていた。
 明らかにリフォームされている。
「それはいいんだけど…、どうして業務用の冷蔵庫が…」
 奥にでんっと、すえつけられていた。
「だって育ち盛りが5人も居るのよ?」
 だからってでか過ぎだよ…
 中には豚や牛が丸ごと吊るされていた。
「下はキッチンにリビング、それとあたしたちの部屋になっているわ」
「え?、じゃああたし達は2階なの?」
「それと天井裏だね、ただ…」
「ただ、なによ?」
「もめると思うよ?」
 カヲルは意味ありげに微笑んだ。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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