GenesisQ’
Episode:16D
それから1時間後…
「ううん、トウジぃ…」
「あかん!、委員長それはあかんて、わしらまだ中学生やないか!」
「もう!、中学は出たでしょう?、あたしのことはヒカリって呼んで…」
「くっつくなっちゅうに!」
「もう高校生なのよ〜、高校生って言えば「お・と・な」じゃない、ほら〜」
「あははははは、鈴原不潔ぅ!」
「惣流!、ヒカリをとめんかい、親友やろが!」
「ああっ、ついにヒカリって呼んだわねぇ!?」
「相田君ちゃんと撮ってる?」
「もちろんさ!」
「ケンスケぇ!」
「ふにゃ〜ん、シンジ様ぁ…」
目がとろんとしている。
お目当てのシンジはテーブルの下で丸くなっていた。
なぜかカヲルの姿は見えない。
「ねえねえ、ミズホぉ、さっきから何嬉しそうにしてんのよぉ?」
アスカがからんだ。
「うにゃあん、秘密ですぅ〜」
「こら吐け!、吐くのよ!」
「え〜、嫌ですぅ!、シンジ様が「ケーキおいしかったよ?」って抱きしめてくださったなんて、そんなこと言えませぇん」
「こらシンジぃ!」
引きずり出す。
「ふにゃ?、なにぃ?」
「あんたミズホに抱きついたってホントなの!」
「あ〜?、そんな事してないよぉ…」
「ってことは、したんだ、シンちゃん」
「なんでそうなるのよ?」
「え?、だって忘れてたけど今日ってエイプリルフールだしぃ」
ケラケラと笑う。
「シンジぃ!、このあたしに嘘つくなんて、いい度胸してるじゃない!」
「ついてないってばぁ、ついてるのはアスカのお肉…」
酔ってるシンジは、すでに意識が混濁していた。
ぷっちんと何かの切れる音。
「バカシンジぃ!」
投げ飛ばした。
「うわ!」
慌ててよけるトウジ、その後ろの襖が破けた。
「ああ!、惣流の部屋丸見えじゃん!」
すかさず撮るケンスケ。
「あーーーーー!、なんでよけるのよ!」
「無茶言うなぁ!」
「なんだ?、ぬいぐるみだらけじゃん」
「あんたも撮るなぁ!」
さすがのアスカも、酔っていてはしらふのケンスケに追いつけなかった。
「いける!、これはいけるぞ!、惣流がまさかぬいぐるみマニアだったなんて!」
「それは違うとおもうけど…」
レイの訂正も意味なく、よほど恥ずかしかったのか、アスカは泣き出した。
「あ〜〜〜ん、ばかぁ、信じらんなぁい」
「あーーー!、ケンスケ泣かしよったぁ!」
「お、俺かよ!?」
「そうよ相田君!、責任とりなさいよ!」
トウジに噛り付いたままのヒカリ。
「嘘…、嘘って…」
ミズホはレイに詰め寄った。
「エイプリルフールって何ですかぁ!?」
「うん?、何でも嘘で答えなきゃいけない日の事☆」
がーん!っと衝撃に打ちのめされた。
「そ、そんな、シンジ様のばかぁ!」
テーブルを持ち上げる。
「うわぁ!、なんでこっちに…」
「きゃあ!」
「わしは関係ないやろぉ!」
「レイ!、あんた何言ったのよ!」
「ごめん、逃げるから」
ずしぃいいいいんっと、震動が階下にまで響き渡った。
●
そうだ、そうだよ、確かジュースにアルコールしこんだまでは良かったんだけど、信濃が切れた後、惣流と信濃がケンカ初めてひっくり返ったテーブルにはシンジが潰されててトウジは委員長に押し倒されたまま…、あれ?
綾波と渚の姿が見えない、シンジもだ。
どこか他の部屋で寝てるのかな?、しかし…
アスカが背中を向けている、乱れた髪と、細いうなじ。
思わず、ぐびびっとノドが鳴る。
か、カメラ、カメラどこだ!?
移動するのももったいなくて、ケンスケは足で自分のカバンを手繰りよせた。
よっし接写!って、そうだ、寝顔、寝顔…
その時う〜ん、うるさ〜いぃんっとアスカが寝言を呟いた。
パタ!
慌てて寝たふりをするケンスケ。
くっ、このままじゃラチが…、そうだ、寝返りうってるふりして…
ずりずりっと、アスカの頭を軸に円を描いて転がる。
よしっ、これで…ああ!
アスカに背を向ける形で正面に回りこんでいた。
あああああ!、俺はなんて馬鹿なんだぁ!って、そうか!、惣流の方へ寝返りをうてば…
う〜ん、なんて白々しく声を出しながら反対を向く。
アスカのドアップ。
いよっし!、ナイスだこれは高く…
唇の皺まではっきりと見えた。
ケンスケは高鳴る鼓動を抑えながらも、カメラを…
がーん!、しょ、正面から録れない!
アスカとケンスケの顔が近過ぎた、間にカメラが入らない。
ど、どうしよう、俺は一体この状況でどうすればいいんだ?、いや頑張るんだケンスケ、第三新東京市約三万人の惣流・アスカファンが、お前のレポートを待ってるんだぞ!
妙なプライドを燃え上がらせるケンスケ。
そのケンスケをぶぎゅると踏んで行ったのは、今まで死角になる位置で眠っていたミズホだった。
●
その頃、屋根の上。
「気に入ったかい?」
「まあまあね」
カヲルとレイがビール缶を手に座っていた。
「屋根裏部屋…、もちろんシンジ君と一緒というのも大事だけどね、天窓からこうして屋根に出られるんだ、そこが気に入ったんだよ」
ホントかしらと言う目で見る。
「ねぇ、二人ともぉ…」
その二人の後ろで、シンジは伏せるようにふんばっていた。
「降りない?、ここ恐いよぉ…」
屋根は少し傾斜が付いていた、高さからか、見下ろすと広い庭に吸い込まれそうになる。
レイとカヲルは縁から足をぶらつかせていた。
「ほら、こっち来なよ、支えててあげるから☆」
「シンジ君は恐がりだからねぇ、そうだ、僕が緊張をときほぐしてあげるよ」
こほんと咳払い。
「「へい、チャーリー、隣の家に囲いができたってねぇ?」、「WALL」」
滑った。
「うわあああああ!」
落ちかけたが、爪を立ててなんとか耐えた。
「シンちゃんじっとしてて!」
「シンジ君もリラックスしたからって、そこまでする事無いのに」
「カヲル君酔ってない〜!?」
レイに引きずり上げてもらう。
「シンジ様ぁ〜?」
ミズホの声。
「ふえええん、シンジ様がいらっしゃいません…」
屋根裏部屋にいるらしい。
「ミズホこっち、屋根の上よ?」
レイが呼んだ。
「あ、いらっしゃいまし…たぁ!?」
滑った。
「うわああああ!」
シンジにぶつかってとまった。
「あ、危なかったですぅ」
「こっちはきっちり危ないってば!」
「シンちゃん!」
「どうして僕ばっかりぃ!」
なんとかレイが助ける。
「もう!、ミズホも気をつけてよね」
「ふえええん、だってだって…」
「いいよもう…、ミズホ、大丈夫だった?」
「……」
「どうしたの?」
「ふえええん!、シンジ様がお優しいですぅ!」
どんっと突き飛ばした。
「うわあ!!」
「シンちゃん!」
また落ちかけた。
「あ、危なかった…、何するんだよミズホ!」
びくっとするミズホ。
「ふええん、シンジ様が悪いんですぅ!」
「ぼ、僕が優しくしたらなんでいけないのさ!?」
「レイさんが言ってましたぁ、今日は何でも嘘で答える日だって」
ジト目でレイを見る。
「あ、ほら、酔ってたから、ね?」
「もう!」
「ミズホは純粋過ぎるからね、言葉の通りに受け取ったんだね?」
ふえ?っと顔を上げる。
「今日は冗談で嘘をついても良い日なんだよ、でも僕はミズホに嘘をついてない」
真剣な眼差しで見つめる。
「あ、そんな風にすると…」
「シンジ様ぁ!」
と言って抱きついた。
バランスが崩れる。
「ほらやっぱり」
うわああああ!っと、シンジとミズホは庭へ向かって落ちていった。
「シンちゃん!」
ボッチャーン!っと水柱が上がった。
「まあ、頭を冷やすといいよ、酔いも冷める」
下は池になっていた、池は半分家の下へ潜り込むようになっている。
「シンジ、危ないマネはやめなさい」
縁側にゲンドウが座っていた。
盛大に水がかかって、びしょ濡れになっている。
浴衣で、片手にお猪口。
「うげー、飲んじゃった…、僕だって好きでやってるわけじゃ…」
「きゃーーーーーーーーー!」
2階から悲鳴が。
「このドスケベがぁ!」
ガッシャーンっとガラスが割れて、ケンスケがベランダの柵を越えて落ちてきた。
シンジと同じくドッボーン!っと。
「ケンスケ!」
「撮った!、シンジ俺は撮ったぞ!、カメラカメラは!」
「ここですぅ〜…」
ミズホ頭にたんこぶが。
「俺のカメラがぁ…」
完全に濡れていた、迂闊にも使用したのは生活防水程度しかなされていない代物だったのだ。
「いや、しかしディスクは…」
「こんなものこうですぅ!」
既に抜き取っていたのか、ミズホは石でガシャン!と潰した。
「ナイスよミズホ!」
アスカがベランダから乗り出した。
「ああー!、ディスクが、ディスクがぁ…」
がっくりと肩を落とすケンスケ。
「とにかく早く上がりなさい、池がダメになる」
ゲンドウのこめかみに青筋が浮いている。
「シンジ」
「なに?、父さん」
「ガラスや襖の修理代は、お前の小遣いから引くからな」
「えー!、そんなのないよぉ!」
「だめだ、もう決めた」
「シンジ様ぁ!、わたしのせいですぅ、わたしが…」
「しーんーじー…」
暗い声が流れた。
「人が悲しんでるってのに、いちゃいちゃいちゃいちゃしやがって…」
何処からかマスクを取り出す。
「そもそもお前だけ幸せなのが不公平なんだ!、このしっとマスクが天に代わってお前を討つ!」
「なんだよそれ!」
「うるさい、これはけっして私怨からじゃないぞ!」
「うそだ、絶対嘘だぁ!」
「その弛みきった性格に男の生きざまを刻みこんでやるぞ、シンジぃ!」
「シンジ様ぁ!」
「ちょっと、シンジに何する気よぉ!」
アスカも池へダイブした。
「あなた…、この池」
「今はいい…」
後でお仕置きしてやる。
心に誓うゲンドウだった。
続く
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'はGenesis Qのnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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