Episode:18C




「ほらアスカちゃん起きて!」
「おば様ぁ〜、まだ8時じゃな〜い、もうちょっとぉ…」
「ダメよ、日本舞踊が目指す物は心のありようなの、あなたの心の形が舞いに出るのよ?」
「でぇもぉ、せっかくの日曜日なのにぃ」
「早く、ね?、ミズホちゃんはもう起きてるわよ?」
「え!?」
 がばっと起き上がる。
 ユイの隣でミズホがにやけていた。
「アスカさん、だらしないですぅ」
 むっかぁ!
「なによ、あんた今まであたしが起こしてあげてたんじゃない!」
「そんな過去のことは忘れましたぁ」
「ぬわぁんですってぇ!」
「今日からわたしは清く、正しく、美しく生きるんですぅ」
「動機が不純なくせして見下すんじゃないわよ、まったく!」
 アスカはしぶしぶながら布団を出た。






 ちゃぽん…
 蒸気が天上に溜まり、滴がシンジの正面に落ちてきた。
「シンジ君…」
「か、カヲル君!?」
「いいかい?」
「え!?」
「お風呂だよ、一緒に入ろうと思ってね」
「あ、うん…」
 湯船はゲンドウのこだわりから、足をのばしてもゆったりできるほど大きく、そしてシンジとカヲルが並んで入っても余裕があった。
「ふぅ…」
 頭の上にタオルを乗せるカヲル。
「お風呂はいいねぇ、まさに人類の生み出した究極のリラクシングプレイスだよ」
「…変な英語だね?」
「そうかい?、レイが使っていたんだけどね」
「レイが?」
「ああ、シンジ君こそが、自分にとってのそうだってね」
 レイが…
「嬉しそうだね?」
「え!?、あの、か、カヲル君にとってはどうなのかなって…」
「もちろん、僕にとってもそうだよ」
 湯船の底で、シンジの足に手で触れる。
「かかか、カヲル君?」
「じっとしてて」
「ええ!?、でも!」
「マッサージだよ」
「え?」
「してないんだろ?」
「う、うん、まあ…」
「ほら…」
「あ!、か、カヲル君!」
「ふふふ、シンジ君…」
「カヲル君…」
いやあああああああああああ!
 布団を跳ね飛ばし、がばっと起き上がるレイ。
「ゆ、夢!?」
 首元に手を当てて汗をぬぐう。
 髪が寝汗で張り付いていた。






 その頃ユイ達は…
「それでは、よろしくお願いいたします」
「はい、先生のお願いとあればそれはもう」
 不安げなアスカとミズホ。
「あの、おば様これはいったい…」
 目の前にそびえ立つ大きなお屋敷。
「一度本当のお稽古を体験して見た方がいいんじゃないかと思って、お願いしたのよ?」
「そ、そんな無茶なぁ…」
「いえ!、わたしはやります!」
 やらいでか!っと、肩に力をいれる。
「わたしのために、なによりシンジ様に相応しくなるために頑張りますぅ!」
「よかったわね、シンちゃん」
「……」
 呆然としているシンジ。
 傍らにはアスカ達が着るための着物が入ったケースが置かれていた。
「もしかして、僕って荷物もちのためだけに連れて来られたの?」
「あら、ちゃんと着付けを手伝ってあげなさい?」
「えええええ!、やだよそんなの!」
「あら、どうして?」
「恥ずかしいからに決まってるだろ!?、女の子の着替えなんて手伝えないよ!」
「困ったわねぇ、でもまだ二人とも自分では着られないし…」
「そ、そうよおば様、だからこんな無謀なことはやめにして…」
「だめですぅ!、これも立派な花嫁になるためですぅ!」
「あら、ではもしかして先生のお子さんの?」
「ち、違います!」
「シンジ様ぁ、違うってなんですかぁ!」
「あ、いや、そういう意味じゃなくて」
「じゃあどういう意味よ!、バカシンジ!」
 ぱかんとどつく。
「あら女の子が乱暴な…、それでは嫌われてしまうわよ?」
「いいんです!、こいつの生殺与奪権はあたしにあるんですから!」
「酷い、それはあんまりだよ…」
「そうですぅ!、シンジ様はわたしの…」
 言いかけて赤くなってやめる。
「なるほどわかりました」
 何やら意味ありげに頷き、ユイに向き直る。
「すべてはこの安奈におまかせください」
 にっこりと微笑んでから、アスカとミズホに着いて来るよう言った。
 しぶしぶながら着いていこうとするシンジ、その手をユイが取った。
「母さん?」
「シンちゃん、気をつけてね?」
「へ?」
「安奈先生って、ちょっと変わってるのよ」
「か、変わってるって!?」
「人って…、色々といるものなのよ?」
 ふうっと遠い目をする。
「ちょっと待ってよ、なんだよそれ!」
「いい?、シンちゃんしっかりね?」
「か、かあさん!?」
 謎の笑みを残して去る。
「か、母さん、どうしろってのさ…」
 シンジは言いようのない不安を覚えた。






「それはともかく、なんで先生がこんな所にいるの?」
「いやぁ、断りきれなくってさぁ」
 なぜかアスカの隣にはミサトが座っていた、もちろん正座だ。
「近所のつきあいでやむなくね」
「でもでも、ちょっと安心しましたぁ」
「そお?」
「はいぃ、先生みたいな方でも良いのかと思うとちょっと」
「ぬわぁんですって!」
「何事ですか?」
 片膝をたてかけた所で、障子を開けて安奈が入ってきた。
「あ、なんでも…」
「ばっかねぇ」
「うう、殺されるかと思いましたぁ」
 安奈の後に入ってきたのはシンジだ。
 それともう一人。
「ああ、小和田先輩ですぅ!」
 軽く会釈する小和田。
「あらシンちゃん」
 髪を結い上げたミサトに驚く。
「ミサト先生もですか?」
「がらじゃないんだけどねぇ…」
 そうですね、と言いかけてやめた。
「さあシンジ君もそちらに座って」
「あ、はい」
「さて、それでははじめましょうか?」
 アスカにミズホに先生かぁ…
 何か言いようのない不安を感じるシンジだった。






「んで、みんな出かけちゃったの?」
「ああ、そうみたいだね…」
 ゲンドウは休日出勤、家にはカヲルとレイだけが残されていた。
 レイの前にフレンチトーストとコーンポタージュスープを並べるカヲル。
「なに、これ?」
「たまにはこんなものもいいだろうと思ってね?、いらないのかい?」
「食べるけど、毒、はいってない?」
「失敬だね」
 レイの顔をじっと見る。
「…なに?」
「目の下にくまができてる」
「え?、ほんと?、やだなぁ…」
「おかしな夢でも見たんじゃないのかい?」
 ギロッと睨む。
「…なんだい?」
「あ〜あ、いつもならあたしとシンちゃんの二人っきりになる所なのになぁ」
「それは贅沢というものだよ」
「せめてカヲルが居なかったら、もっとのんびりできるのになぁ」
 あまりのねぼすけぶりに、置いてけぼりにされたレイだった。







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