Episode:18E




「ふええ〜ん、シンジ様のバカぁ、ですぅ」
 ミズホは適当な路地へと入り、人気の無い方へ進んでいた。
「ふえ?」
 その鼻先に何かが舞う。
「あ、え?」
 瞳をうるませたままで上を見る。
「ふわぁ…」
 桜が咲いていた。
 一本だけ、あとはまだこれからと言った感じだったが。
「綺麗ですぅ」
 花びらが落ちてくる、その舞う様に小和田が重なった。
「ふ、ふええ…」
 また悲しくなってくる。
「おいおい、泣いてるぜ?」
「お嬢ちゃ〜ん、何泣いてんのかなぁ?」
「ふられたんじゃねぇの?」
 勝手なことを言う二人組。
「ふえ?」
「なあ、こんな所で泣いてないでさ」
「気分直しに、遊びにいかねぇか?」
「え、あの、い、嫌ですぅ!」
「そりゃないだろ?、せっかく慰めてやろうってのに」
「嫌です、離してくださぁい!、シンジ様ぁ!」
「いまふられたばっかなんだろ?、こねぇって」
「お待ちなさい!」
 ミズホはその声にはっとした。
「小和田先輩!」
「げげ!、もしかして…」
「女の子同士って…、そりゃあいけない」
 一人が小和田に近づく。
「なあ、あの子を解放してやれよぉ、ここは俺と遊ばない?、そうすりゃあの娘だって…」
 にっこりと微笑む小和田。
「奈々は、軟弱な殿方などいりませぬ」
 言い終えると軽く体を沈め、続いてはね上げた。
「桜花連撃!」
 まるで竜巻のように、扇子を手に回った。
「がっ!」
 軽く吹き飛ばされる。
「なんだぁ!?」
「てぇい!」
 横から赤い疾風。
「アスカストライク!」
 ゴン!
 アスカのげんこつがめり込んだ。
「うわ、痛そう…」
 思わず見ない振りをするシンジ。
「まったく、あんたねぇ、心配させるのも程々にって…、聞いてる?」
 ミズホはまたも小和田に見とれていた。
「ふわぁ…、小和田先輩、凄いですぅ」
 何事もなかったかのように立っている小和田。
 わずかに起こったつむじ風が、彼女のスカートを乱していた。
「ご無事でしたか?」
「は、はいですぅ!」
「むむ、あの女できるわね」
 意味なく闘志を燃やすアスカ。
「あ、あの…」
 シンジが小和田に駆け寄った。
「あの、ありがとうございました」
 ぺこりと御辞儀。
「はい」
 小和田は笑みを浮かべて、その感謝の言葉を受けとった。
 それだけで、軽く会釈して帰っていく。
 その背に舞い散る桜。
「あんなのもありなんですねぇ?」
 はぁ?っと、シンジとアスカは顔を見合わせた。






「で、結果は?」
「問題無しですわ」
 夫婦の頭上で暴れる子供達。
「風月扇ですぅ!」
「ひゃあ!」
 シンジの頭をかすめて扇子が飛んだ。
「ま、まさに何とかに刃物…」
「シンちゃん、避けて!」
 横っ飛びに避けるシンジ。
「やれやれ、一体今日は何を習ってきたんだい?」
「うるさいですぅ!、桜花連撃!」
 それは柔剣道場で小和田が舞っていた舞いだった。
 ドカドカカ!
 それをミサトのように何十倍速かで再現して見せる。
「ああ、カヲルくぅん!」
 ふっ飛ぶカヲル。
「ふ、シンジ君、僕はもうダメみたいだよ」
「死んじゃダメだよ、カヲル君!」
 抱き上げるシンジ。
「死ぬわけないでしょうが!、それよりいい加減やめなさいよ!」
「そうよ、危ないってば!」
「ヤですぅ!、ようやくわかったんですぅ!」
「なにがよ!」
「どうしてあの時、小和田先輩がカッコよく見えたのかって…」
 うっとりと扇子ごと胸の前で手を組みあわせる。
「これですぅ!」
 バッと、もう一度桜花連撃を決める。
「アスカさん達とは違って、か弱いわたしには無いものがここにはあったんですぅ!」
「「どういう意味よ!」」
「で、僕はその被験者と言うわけかい?」
 悲惨なのはカヲルだろう。
 このあとアスカ、レイ、ミズホによる異種格闘技戦にシンジが巻き込まれた事は言うまでもない。
「どうして…、ぼくが」
「君と僕が酷い目にあうことが、僕達の運命だからだよ」
「そんなの酷いや…」
「でも僕達にも救いはある、それは僕とシンジ君が同じ境遇にあると言うことだよ」
「カヲル君…」
「さあシンジ君、二人で慰めあおうじゃないか、お互いの心を分かち合えるのは、しょせん同じ目にあったものだけだよ、そうだろう?」
「優しいね、カヲル君…」
 この時、シンジは本気でそう思ったが、その後布団で襲われかけたので撤回した。



続く







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