Episode:21_3 Take4



「で、具体的には何をすればいいの?」
「そんなの決まってるじゃない?」
 とウィンクするアスカ。
「みんなであいつの邪魔をしてやるのよ」
 アスカはそう言って、不敵な笑みをみんなに見せた。






「ねえ、もうやめようよぉ…」
 下校途中のシンジとマナ、ただし家の方向には向かっていない。
「え〜〜〜?、だめだよぉ、ちゃんと来週、レポートを提出しなくちゃならないんだから!」
 組んでいる腕に、より一層の力をいれる。
「それともシンちゃん、あたしとじゃ嫌?」
 そのまま顔を覗きこんでくる。
「い、嫌じゃないけど…」
「けど?」
 無言のシンジ。
 セリフ、仕草…
 レイに似てる…
 それを思い出して、嫌だったのだ。
「でも、霧島さん…」
「あー!、また霧島さんって言ってるぅ!」
 ぐいっと腕を引かれた。
「どうしてマナって呼んでくれないのぉ!?」
 怒ってる瞳が近い。
 凄く青いんだ…、霧島さんの目って。
 思わずじっと見つめてしまう。
「や、やだちょっとシンジ君!」
 パンっと背中を叩かれた。
「いっくらなんでも、こんな所じゃダメ、ね?」
 なんだか頬が赤みがかっている。
 よくわからないが、名前の件をごまかせたのでシンジは続けた。
「霧島さん、レポート書いてよ…」
「えー!?、ダメよシンちゃん、二人で書く事って先生に言われたじゃない!」
「でも…、僕よりもこう言うことに慣れてるみたいだから…」
 爆弾投下。
 ぷうっとマナのほっぺが膨れた。
「シンちゃん、あたしがこんな事ばっかりしてると思ってたんだ!」
 爆発。
「え?、でも…」
「でもじゃないよぉ!、あたしだって恥ずかしいんだからね!?」
「そ、それならなおさらやめようよ…」
「だーめ!」
 腕を解放、代わりにシンジの手をつかんだ。
「宿題なんだから!、ね?」
 にこやかに手を繋ぐ。
 …まださっきの方がましだっかかも。
 シンジが気にしているほど、周りはシンジ達を見てはいなかった。
 …ごく一部を除いては。


 以下ごく一部の人たち。
「し、シンジの奴なんてことを!」
「シンちゃ〜ん、ぐす…」
「あ、あのぉ…」
 マユミが遠慮がちに声をかけた。
「あの人、恐いんですけど…」
「ふふふふふですぅ…」
 一人「シャーコ、シャーコ…」と包丁を磨いでいるミズホ。
「…今日の所は許可しておくわ」
「シンちゃ〜ん…」
「はあ、そうですか…」
 どうしたものかと困り果てた。
 そもそも、あたしどうしてここにいるのかしら?
 もっともな疑問を今更のように浮かべるマユミ。
「…これはもう、一刻の猶予もならないわね」
 くるっと振り返り、一同を見渡すアスカ。
 その視線がマユミの所で止まった。
「あんた…」
「え?」
「邪魔してらっしゃい」
「ええ〜〜〜!?、どうせあたしが…」
「あたし達じゃシンジが逃げちゃうでしょうが!」
「そ、そんなこと言われても…、無理です、あたしにはできません…」
「やり方は教えてあげるわ、覚えなさいよ」
「そんな…」
「できないならいいわ、この…」
 っとマユミの盗撮写真をとり出す。
「この写真が売りに出される事になるわよ?」
「ええーーー!?、一体いつ撮ったんですかぁ!?」
「うちの学校にはね、こういうことに異常な執着心を持つ変態が数人居るのよ」
 なんて学校…、と頭が痛くなる。
「わ、わかりました…」
 ニヤニヤとしているアスカに、マユミはトホホとため息をついた。






「と、言うわけで今日もジオフロントね?」
「その心は?」
「デートの続き!」
 きゃっとはしゃぐマナに、シンジはがっくりと肩を落としてしまうしかなかった。
 アスカ達が見張ってるって言うのに…
 人一倍強い察知能力を持つシンジである、身の危険を先程からずっと感じていた。
 問題は、僕の回避能力じゃどうしようもないってことなんだよな。
 すでに諦めの境地に立とうとしている。
「さ、今日はどこから回りましょうか?」
 うきうきと掲示板を見ているマナ。
 シンジはどうしようかと迷っていた。
 このままじゃ、もう言い訳できなくなっちゃうよなぁ…
 首筋がちくちくと痛い。
「あのぉ…」
 ためらいがちな声。
 聞こえていないのか、シンジは首筋をさすっている。
 うう…っと、マユミは振り返った。
 GO!GO!っと合図しているアスカが見えた。
 やるしか…、ないの?
 なぜそこまで強迫観念に駆られているのかと言うのは置いといて、マユミはもう一度声をかけた。
「あの…、シンジ君?」
 名字を知らないので、下の名を呼ぶ。
「え?」
 急に振り返るシンジ。
「あ、ご、ごめんなさい…」
 なんだか申しわけなさそうに、マユミは立っていた。
「あ、山岸さん…」
 どうしてこんな所に…、と思ったが、すぐに思い当たった。
「ごめん…、大変みたいだね…」
「はい…、ちょっとだけ…」
 すまなさそうにたたずむ。
「よっし決めた!、シンちゃん…ってああっ!、シンちゃんなにナンパしてるの!」
「え?」
「ええ?」
「「ち、違う、ごかい…」」
 何となくハモる二人。
「あー!、しかも息までぴったり…、酷いよシンちゃん!、あたしってものがありながら!」
 え〜ん!、っと両手で顔を隠すマナ。
「ちょ、ちょっとやめてよ…」
「そうですよ、嘘泣きなんて…」
 同時に見抜く二人、じろじろと通りがかる人たちに、気恥ずかしい思いを耐えていた。
「もう!、だったらそう簡単に女の子と仲良くするのやめてよ!」
 まったくよ!っと頷くアスカ。
「ま、マナさん、落ち着いて…」
 おや?っとシンジ。
「いっくらマユミでもね…」
「あ、あの…」
 ためらいがちに割り込んだ。
「なに?、シンちゃん」
「うん、ごめん…、あの、二人とも知り合いなの?」
 顔を見合わせるマナとマユミ。
「えっとね…、マユミは同じ学生マンションに住んでるの」
「はい…」
 え?っとシンジは驚いた。
「二人とも、一人暮らしなの?」
「はい…、お父さんはお仕事の都合で…」
「あたしも!」
 あれ?、と、シンジはおかしな点に気がついた。
「霧島さん…」
「マナ!」
 怒られた。
「…マナさん、たしかオーストラリアから来たって」
「うん、あたしだけ日本に来たの」
「どうして?」
「さあ?」
 笑ってごまかす。
「シンちゃんに会うために、ここに来たのかもね?」
 そんなわけないじゃないか…
 嘘とごまかし、シンジは胸が苦しくなった。
「それで?、マユミは何しに来たの?」
「あの…」
 ちらちらと背後に視線を送った後で、マユミは「えいっ!」っと意を決したようにシンジの手を握った。
「…」
「……」
 どうリアクションしていいのか困るシンジとマナ。
「ご、ごめんなさい…」
 両手でシンジの手を握ったまま、消えそうなぐらい小さくなってしまう。
「で、でもこうしないと怒られるから…」
「怒られるって…、あー!」
 アスカ達を指差す。
「そこの「アスカハウスとレイちゃんの別荘」って書いてある段ボール箱!」
 ギクッと跳ねた。
「ばーれーたーかー!」
「シンちゃんのバカァ…」
 二人しか居ない。
 殺気!っとシンジは急に身をよじった。
「てぇい!」
 包丁を手にミズホ。
「ちちぃ!、外しました!」
「み、ミズホ、なにすんだよ危ないじゃないか!」
「大丈夫ですぅ!、プラスチックですから」
「そ、そうなの?」
 無言のアスカとレイとマユミ。
「誰かなんとか言ってよぉ!」
「とりあえず気分的にはすっきりするので、シンジ様は刺されてください!」
「やだよ!、恐いじゃないか」
「その方とのデートは嫌がらなかったのにぃ…」
 恨みがましそうに。
「どうして嫌がるんですかぁ?」
「全然別の話しじゃないか!、それにデートなんてしてないよ!」
「あんたバカァ?、あれがデートじゃなくて何だって言うのよ、ねえ?」
「は、はぁ…」
「や、山岸さんまで、そんな…」
「あ、ご、ごめんなさい…」
 気落ちしあう。
「とにかく!、あんたなんかがシンジに馴れ馴れしくすること自体間違ってるのよ!」
 ビシッとマナを指差す。
「なによそれぇ?」
 あきれ顔のマナ。
「シンジを好きにしていいのは、あたし達だけって決まってるのよ!」
「誰が決めたのよそんな事」
 怪訝そうに。
「あたし達よ、決まってんじゃない」
 得意げにアスカ。
「ばっかみたい、なにそれ…」
「シンジ様が優しくしてくださるのは、わたしだけだってことも決まってますぅ」
「「「決まってない!」」」
「ふえ〜ん、一人増えてますぅ…」
 シンジの背に隠れる。
「ちょっとシンジ、あんたもなんとか言いなさいよ!」
「ねえ、シンちゃん…」
 控え目なレイ。
「あのね?」
 上目使いに、言いづらそうに。
 口を開こうとして、できないシンジ。
「明日、またアルバイトなの…」
 何が言いたいんだろう?
 シンジの鼓動が速くなる。
「また一緒に…」
「「ストーップ!」」
 アスカとマナ、同時に叫んで驚き、お互いを見た。
「ちょっと、なんであんたが止めるのよ!」
「そっちこそなに?、シンちゃん独占して彼女気取りたいってわけ?、この垂れ乳娘!」
「むっかー!、あんたみたいに無いよりマシよ!」
「ちゃんとあるもん!」
 シンジの手をつかんで自分の胸に触れさせた。
「ね?」
 っと微笑む。
 が、シンジは顔を真っ赤にして慌てまくっていた。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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