Episode:21_1 Take5



 レイが…、他の男の子と会ってた…
「シンジ、シンジどうしたの?」
「あ、うん、なんでもないよ」
 シンジは靴を脱ぎながら、アスカに適当な返事を返した。
「そう?、プリンの素、売ってた?」
「うん、買ってきたよ?、ほら…」
 コンビニの袋を渡す。
「ぷりんー!」
 奪い取るようにアスカは台所へ、シンジは青い顔をしたまま屋根裏部屋へ戻った。
「…カヲル君、いないんだ」
 天窓を開け、冷たい空気を誘いこむ。
「あれ?、おかしいな…」
 胸が痛い。
「しょうがないって…、そう思うって決めてたのに…」
 アスカにも言ったのに…
 胸がうずく。
「いざとなると…、変な感じだね?」
 シンジは泣いていた。
 知らない間に、泣いていた。
「急、だからかな?」
 勘違いだと思うほど、楽観的になれない。
 でも、嗚咽を漏らしてしまうほどじゃない。
 まだ耐えられる、まだ我慢できる。
 シンジは何度もくり返して、大きく息を吸い込み、吐いた。
「レイは僕のものじゃない…」
 こんな幾人もの女性の間をふらつくような、二股をかけるような男に、君達が弄ばれてるかと思うと…
 鰯水の言葉が重くのしかかってくる。
 優しいのと優柔不断は違う!、それを盾に女の子の気持ちを弄ぶなんてもってのほかだ!
 その通りだ…
 僕は決定的になる選択をしたくなくて、逃げてるだけなんだ…
 そして浮かび上がるカヲルのセリフ。
 みんなが欲しいのはシンジ君の気持ちや心だからね、焦らなくてもいい、でもいつも考えてあげて欲しいんだ…
 間に合わなかったと言う想い。
 あたし達が、シンジを好きなの、おわかり?
 アスカの言葉が虚しい。
「悪いのは僕だ…、だから僕が諦めなくちゃいけないんだ…」
 汗ばむ手を何度も握りこむ。
 アスカが、ミズホがまだ居るから…
 そんな風には考えられない。
 レイはレイだから。
「そっか…、もう、馴れ馴れしくできないね…」
 考えて見れば、朝、シンジよりも早くレイは学校へ行き…
 そしてシンジよりも遅くに帰ってくる。
 シンジが部屋から出なければ、避けることは簡単だろう。
「簡単な、ことなんだ…」
 シンジはぐいっと、袖で涙をぬぐった。
「でも、それじゃレイが傷ついちゃうよね?」
 あたしのせいだって…
「アスカ達も怒り出すかも」
 救いにはならなかった…、が、ちょっとだけ心が軽くなった。
「さ、プリンの準備しなくちゃ…」
 まだ目が赤い、だがシンジは気にしなかった。
 アスカにも、ゴミが入ったと言ってごまかした。
 それがその時のシンジにできる限界だった。






「じゃ、先に行くわね?」
 ふわ〜あっと、シンジはあくびで答えた。
「シンちゃんだらしな〜い」
「しかたないよぉ、まだ早いんだし…」
 手を口元にやり、くすくすと笑うレイに、シンジはいつも通りの態度を見せていた。
「シンちゃん朝練とかないの?」
「あると思うよ?」
「あ、なら出なさいよ、それなら一緒に行けるじゃない」
「え〜?、やだよ辛いもん…」
「アスカ時間だよ?」
 シンジをジーっと見るレイ。
「ん、なに?」
 居心地の悪さを感じるシンジ。
「シンちゃん、忘れ物してない?」
「忘れ物って…、するのはそっちでしょ?」
「ん、もう!、行ってらっしゃいのキスは?」
 ズクン!
 これまでに無い胸の痛みに、シンジは思わず手で押さえそうになってしまった。
「しないよ?」
 そのはっきりとした言い方に、なにか引っ掛かるものを感じるレイ。
「シンちゃん?」
「ほら!、バカやってるからどんどん時間無くなっていっちゃうじゃないのよ!、行くわよ!?」
「あう〜ん、シンちゃ〜ん!」
 耳を引っ張られていく。
「ばいばい…」
 寂しげに手を振ってみる。
 ばいばいと言ったのはそんな気分だったから…
 シンジはじっと、玄関で二人の声が聞こえなくなるまでつっ立っていた。



続く




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