Episode:23 Take1
レイがぼそりと言ったんだ…
「ゲルマン系のおばさんって太いよね?」
その時、僕は固まることしかできなかったわけで…
GenesisQ’ vol.23
「夢で逢えたら2」
「ちょっとこら待ちなさい!」
「クェーーー!」
…もう空は明るくなっている。
だがミサトとペンペンの攻防戦は続いていた。
「あんた人の家の冷蔵庫勝手に開けといて、生きて帰れると思ってんの!?」
「クェーーー!」
何も入ってなかったと言いたいらしい。
キッチン中央のテーブルを挟む二人(?)
「鳥科〜、鳥目ぅ、けんたっきぃ〜」
危ない目つきで酷く間違っているミサト。
「ク、ク、ク…」
絶対的な危機感を持ったのか、ペンペンが二・三歩下がった。
「クェエエエエエ!」
そして背を向けて逃げ出した。
「あ、こら!、往生際が…」
慌てて追おうとする。
キラーン☆
かかった!っと言わんばかりに、ペンペンの目が光を放った。
ジャンプ一閃、正面の壁を使って勢いの方向を180度転換させる。
「なんと!、イーアルカンフーも真っ青の三角蹴り!?、でも甘いわ!」
手短な物をつかんだ、トースターだった。
「とぅえい!」
ブンッと振り回す。
ゲイン!
だがペンペンの蹴りの方が鋭かった。
勝った!
「クエエエエエエ!」
這いつくばるミサトの上で、ペンペンは勝利の雄叫びを上げた。
「…殺す」
足元からの、尋常ならざる殺気に気がつくペンペン。
「もう怒った、マジで行くわよ、マジでぇ!」
チャ!
もはや手加減無用とばかりに銃を抜く。
「クエエエエ!」
ペンペンは慌てて玄関へ逃亡を図った。
プシュー…
そこへちょうどドアが開く。
「おーい、葛城ぃ」
ズガンズガンズガン!
加持の髪が数本舞った。
「…何やってんだ?、お前」
片膝立ちで銃を構え、引きつるミサト。
加持は足元を見た、頭が逆モヒカンになっているペンギンが一匹。
ぶち。
買い物袋の紐が切れ、どさっと落ちる。
「とりあえず、差し入れ、持ってきたから…」
とりあえず、空虚な間からは脱出できた加持であった。
●
「たんぱく質ぅ!」
喜びコンビニ弁当をかっ食らうミサト。
「しかしなぁ、もうちょっと考えて給料使ったらどうだ?」
加持はその前の席に座り、呆れた目つきを作っていた。
「なぁに言ってんのよぉ!、人間最低限のカロリーさえ取っていれば、そうそう死にゃしないわよ」
最低限のカロリーねぇ…
空き缶の山を見る。
「それより、いつからペンギンなんか飼いだしたんだ?」
「クエ?」
スルメを噛むのをやめ、見上げるペンペン。
加持はその頭をぽんぽんと叩いた。
「飼ってないわよ、勝手に入って来ちゃったのよ」
「勝手に!?」
ぎょっとして加持はペンペンをよくよく観察し始めた。
「どうしたの?」
「…このマンションのセキュリティの高さは知ってるだろ?」
頷くミサト、ミサトのマンションはゼーレ、正しくはネルフによって直接管理されている。
「そこに入り込んだとなると…」
「気の回し過ぎじゃないのぉ?、まさかペンギンが忍ぶ込むなんて、誰も思いやしないわよ」
「しかしなぁ…」
ん?っと、背中の機械に気がついた。
「葛城…」
「なに?」
「これ見ろよ?」
「ん?」
コードが書かれていた。
「これ、ゼーレが使ってるコードナンバーだぞ?」
なんですってぇ!?
瞬間、被害請求額を計算するミサトであった。
「で?」
「はい、これが3分前の映像です…」
ゲンドウの前で緊張からかかしこまる。
差し出したデジタル写真はミサトのマンションの玄関口を写したものだった。
保安部の監視カメラが撮ったものだ、忍び込むペンペンが写しだされている。
「…後は冬月の仕事だな」
ゲンドウは追加の報告をばっさりと切り捨てた。
「冬月を呼び出せ」
それだけを言い、席を立つ。
「……」
その背に声などかけようとは、毛ほども思わないオペレーターであった。
プルルプルルプルル…ピ!
「はい」
携帯を取り出す加持。
「ああ、はい」
ミサトを気にする。
「ちょっと返しなさいよ!」
「クエー!」
「返さないと今度こそ間違いなく食うわよ!?」
「クエックエックエー!」
「よっしわかったわ、存分にあんたの栄養にしなさい、それであんたはあたしの栄養になるのよ!?」
「クエーーー!?」
葛城を本気にさせるとは、あのペンギン、ただ者じゃないな…
わけのわからない感想を持つ加持。
「あ、すみません…、はい、はい、では」
携帯を切る。
「なに?」
聞いていないようでしっかり聞いていたらしい、ミサトはペンペンを踏ん付け、動けないようにして生ハムを取り上げていた。
「飼い主からだ」
「マジなの?」
「ああ、すぐ引き取りに来ると…、少しは分けてやれよ」
「嫌」
クエークエークエー!っと買い物袋から何かかすめようとしているのだが、ミサトに頭を押さえつけられているのでフリッパーが届かない。
にやり。
所詮は畜生ねっと、ミサトの笑みに気を悪くするペンペン。
目標を変更、がぶっとミサトの足を噛んだ。
「いったぁ!、なにすんのよ」
とか言っている間に、急いで買い物袋に飛び付く。
「渡さないっつってんでしょ!」
ミサトはペンペンが口にしようとしたものを横取りし、代わりに食べた。
「葛城…、それサバだぞ、しかも生…」
うええっとミサト。
「クケケケケ」
あざ笑うかのようにペンペン。
「絶対殺してやるぅ!」
安心なさい、ちゃんと食べてあげるから。
ミサトは狂気に取り付かれた。
「やれやれ…」
その様子に、ため息をつくしか無い加持であった。
●
「あの…、すみません、何度も」
ゲンドウは車に乗りこむと、急ぎ自宅ヘ向かっていた。
隣にはマヤが座っている。
「日曜だ、仕事もあるまい?、うちで朝食を取っていきなさい」
ついでに…、とゲンドウは付け足す。
「シンジたちの学校での話しも聞かせていただけるとありがたいのだが…」
マヤは微笑みで返事を返した。
「ふわぁ〜あ…」
ねむねむっと目をこするミズホ。
「今日はお休みですぅ…」
カレンダーを確認し、起き上がる。
掛け布団をちゃんとたたみ、だが髪は直さないで部屋を出た。
「でもシンジ様のいないお休みなんて…」
つまらないですぅとトイレに向かう。
カチャ。
ドアを開ける。
「!?」
中に入っていた人が驚いた。
「あ、ごめんなさいですぅ」
まだ寝ぼけているのか、そのままのペースで戸を閉じるミズホ。
「…あれ?」
っと首をひねる。
「今の方、立ってらしたような…」
しかも髪は短かったような気がする。
「そのような方、この家に…」
たった一人しか居ない。
「!」
ミズホはその答えに驚き、喜び、確認のためにもう一度ノブに手を掛けた。
「シンジ様!」
「うわぁ!」
目的のためには状況をかんがみないミズホであった。
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