Episode:24 Take1



「あ、アスカをからかってる場合じゃないわ、で、マユミちゃん、ふたりは?」
「はい、あの…、あ!
 ブツッ!、ツーツーツー…
「ちょっと、あ!って何よ、あ!って!!」
「すっごくテレビ的に切れちゃった…」
 どうしよう?っとアスカを見る。
「…あんたも役に立たない手下、飼ってるわねぇ」
「あ〜、う〜」
 なんだか非常に情けない顔をするレイ。
「…あいつら、一体何をやっとるんや」
 喫茶店で、それをテレビで見ながら鈴原トウジは呆れていた。
「やらせじゃないのか?」
「いつものまんまやんけ」
 あくびして、ケンスケを見る。
 いつものように迷彩色の服を着て、ケンスケは被写体探しに専念していた。
「ふわ〜あ、暇やのぉ…」
 頬杖をついて窓の外を見る。
「だったら委員長と二人で、遊びに行けば良いじゃないかよ」
 嫉妬混じりの視線を向ける。
「あほぬかせ、二人っきりやなんて、間ぁ保たんやないか」
 あっそ。
 ケンスケはため息をついた。
 その奥手ぶり、それはそれで苛つくらしい。
「お?、あれ、シンジたちじゃないのか?」
「ああん?」
 ほんまや…
 シンジとミズホが並んで歩いていく。
「ほんま仲のええこっちゃで…」
「うらやましいんだろ?」
 頬をひくつかせ、突っ込むケンスケ。
「そやけど、わしには似合わんからなぁ…」
 したくないと言わない辺りが何である。
「あ、そ…」
 拳を握りこむケンスケ。
 贅沢な奴め。
 思わず携帯を握り締めるケンスケだった。



第弐拾四話「夢で逢えたら3」



「さ、座って…」
「はいですぅ」
 公園を見つけた二人。
 子供達が遊んでいる、シンジはミズホをベンチに座らせると、その前に片膝立ちになった。
「あ、あの、シンジ様?」
「薬…、つけるから」
 はい…
 赤くなってしまう。
 まるでかしずかれてるみたいですぅ…
 いつかどこかで見た、騎士とお姫様のシーンを思い出す。
 それにはいささか、子供達の声が邪魔だったが…
「ごめん…、悪いことしちゃったね?」
 靴下を脱がせ、シンジは軟膏を塗った。
「はぁ…、でもぉ、おかげで二人っきりのままですしぃ」
 ガーゼを張り、テーピングする、それからシンジは再び靴下と、靴を履かせた。
「はい、終わり」
「ありがとうございましたぁ」
 素早く足を引っ込める。
「どうしたの?」
 その様子を怪訝に見るシンジ。
「はい…、恥ずかしかったですぅ」
 あ…
 シンジはミズホと同じように赤くなった。
 お互い反対方向を向いて、ベンチに腰掛ける。
 くうっ、どうしてそこで黙り込むかな?
 そんな二人をヤキモキとして、双眼鏡で見つめている人物が居た。



「マナさぁん、携帯返してくださいませんかぁ?」
 しっしっと、マナは手で追っ払う仕草をした。
 はぁ…
 ため息をつくマユミ。
 レイ、怒ってるだろうなぁ…
 黒髪が怒られた小犬の耳のように垂れ下がっていた。
「まったくぅ!、こんなおもしろいこと、どうして教えてくれなかったの!?」
 怒りながらも目は離さない。
「のけ者にするなんて酷い…」
「そんな、のけ者にしたわけじゃ…」
 とにかく、もっと近づこう!っと、マナは双眼鏡をマユミに返した。
 そしてくくくくくっと、笑いを漏らす。
「ま、マナさん?」
 顔が髪に隠れて見えない。
「シンちゃん達って、ずっと前からあの調子みたいなの」
 この人は何を言い出すのだろうかと、マユミは嫌な予感を覚えた。
「このまま成り行きに任せてたら、きっとシンちゃん、奥手のまんまになっちゃうよ、そこで!」
 ばっとスカートを翻す。
「我々愛のキューピット隊が、一丁骨を折ってやると、ね?、マユミ?」
「え?、あ、あたしもですかぁ?」
「うん、ま〜ゆみぃ、あたし達の仲じゃなぁい」
 ごろにゃんと擦り寄る。
「はぁ…、わかりました」
 やたっ!っと指を鳴らすマナに、マユミは深くため息をつくしか無かった。






「わかったってばぁ、取り分は5割ずつ、はいはい…」
 ピッとレイは携帯を切り、大きな声でアスカを呼んだ。
「アスカー!」
 車から降り、ジュースを飲んでいたアスカが近寄って来る。
「なに?」
「情報提供ありがとうって感じ、相田君、シンちゃんを見たって、今電話が…」
 ふぅん…
 コクコクっと、残りを飲み切る。
「で、シンジは?」
「ミズホと歩いてたって」
「そうじゃなくて…」
「腕なんか組んじゃって」
「だから!」
「そりゃもう仲むつまじそうに」
「違うって」
「べったべたと」
 アスカはぐしゃっと缶を握り潰した。
「バカシンジぃ〜」
 引っ掛かった。
 ニヤリとレイ。
「ねぇねぇ、今日のお仕置き、どうするの?」
 両拳を口元に、レイは期待の瞳を作る。
「そんなの決まってるじゃない!」
 アスカはびしっと明後日の方向を指差した。
「明日っからシンジも一緒に登校すんのよ!」
 がしっと手を取るレイ。
「ナイスアイディア、アスカ!」
「大体怠慢なのよね、自分の入ってるクラブに顔も出さないでさ、別に早めに登校したからって、いけないわけでもないんだし」
 こくこくと頷くレイ。
 アスカはレイに、深くゆっくりと頷き返した。
「じゃ、とっとと捕まえに行きましょうか?」
「ええ!」
 慌てて車に駆け込む。
「移動地点を予測!、時間からして…」
 地図を覗きこむアスカ。
「ここ!、あいつの性格から、この公園以外には絶対に無いわ!」
「さっすがアスカ、付き合いの長さだけは伊達じゃないわね」
「だけってなによ、だけって!」
「運転手さんGO!」
「こらぁ!」
 慌ただしく移動を始めるロケ隊だった。






「ねえ、これからどうしようか?」
「そうですねぇ…」
 また会話が途切れてしまう。
 胸がドキドキ言ってる…
 胸がバクバク言ってますぅ…
 お互いに背中を向け、ベンチの端っこと端っこに座っていた。
 おかしいな…、さっきまでなんともなかったのに…
 なんだか意識しちゃいますぅ…
 そんな二人を見て、ほくそ笑んでいる人物が居た。
「ふふふ、ラブラブキャッチャー、ポジトロンくんの威力は確かみたいね?」
 ぽ、ぽじとろん?
 電柱の影で巨大なライフルを構えるマナに、マユミはどうコメントして良いものやら困ってしまった。
「知らない?、人間って、目からいろんな情報を取り込んでいるのよ?」
「いえ、それは知っていますけど…」
 はははっと、乾いた笑いを漏らす。
「そっこっで、その気になっちゃう…、主にピンク色の色彩波長で照らし出し、ラブラブモードに突入させてしまう…」
「ようするに、ただのライトなんですね…」
 あう。
 固まる霧島。
 だが見掛けのバカらしさはともかくとして、効果の程は絶大だった。
「シンジ様?」
「なに?、ミズホ…」
 肩越しに見る。
 ミズホの髪が揺れていた、長い尻尾髪が。
「…ちゃんとしたデートって、どういうことをするんでしょうかぁ?」
 言葉につまるシンジ。
「そ、そんなこと、知らないよ…」
 実際したことも無い。
「本当ですかぁ?」
「ほ、ほんとだよ!、だってアスカたちとは…、その、遊びに出たことはあっても、デートって言うのとは違うような気がするし…」
 デートだデートだと騒がれたことはある。
 でも、いつもと何が違うのかわからなかったし…
 意識していなかったからかも知れない。
「幼馴染の延長だからかな…」
 ミズホが動いた。
 と言っても横を…、ベンチに普通に座り直しただけだったが。
「あのぉ…、じゃあ今のわたし達はどうなんでしょうかぁ?」
 はしゃぎ回る子供達を見ているふりをしながら、ミズホはちらちらとシンジを見ていた。
 それをちゃんと意識しているシンジ。
「わかんないよ…」
 シンジはぽりぽりと頬をかいた。
「だって、誰も教えてくれなかったから」
 ずり、ずりっと、何かが擦れる音がする。
「ミズホ?」
 ミズホだった。
 シンジの側まで寄ると、その背中にもたれ掛かる。
 肩を背中に、頭をシンジの頭にもたげた。
「わたしは、シンジ様に教えていただきたいですぅ…」
 バクバクバクバクバク…
 これまでに無いほど鼓動が高まる。
「ミズホ…」
 僕は…、僕はいったいどうすればいいんだぁ!?
 シンジ、16歳直前の春であった。







[BACK][TOP][NEXT]

新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
内容の一部及び全部の引用・転載・加筆その他の行為には
作者である私と原作者naryさんの許可または承認が必要です、ご了承ください。

本元Genesis Qへ>Genesis Q