Episode:25 Take5



 ライ達が緊迫した状況に陥っている中、その浜辺に姿を見せる者たちがいた。
 全身黒ずくめ、手には鉄爪の付いた甲をつけている。
 数は13、横並びに並んでいる。
 その内、真ん中にいた男が一歩前に出た。
 隊長格なのだろう、だが言葉は発しない。
 ただその鉄爪のついた手で、「行け」と命令を下すだけだった。






「死にたい奴から前に出な」
 ライはわざとらしく銃口を向けた。
 早く行っちゃえよ。
 内心はかなり焦っていたのだ、なにしろ盗んで来た物なので残弾が少ない。
 このようなことで使うには、あまりにももったいなかった。
「お、覚えて…」
「おい、あれ…」
「なんだ!?」
 逃げ腰のままで、彼らは浜の異変に気がついた。
「影が動いてる…」
「バカ!、誰かいやがんだよ」
 そんなことは関係無い!
 逃げ出したいというのが一致した意見だった。
「ふ、死の香りがしやがる」
 バッ!
 それは人間としてはあり得ない跳躍だった。
 四つんばいの状態から、腰から宙を舞うように跳ね飛んだのだ。
 その距離は50メートル、高さは10メートル近い。
「この!」
 ガオン、ガオン、ガオン!
 立て続けに三発撃った。
「くう、痺れるぅ!」
 その反動の感触に酔うライ。
 カン、カン、カン!
 だがその銃弾は簡単に甲で弾かれた。
「マイ、壁!」
「うん!」
 ライの背中に隠れて壁を展開する。
 ガキィン!
 黒ずくめの爪が甲高い音を立てた。
 ギギ…ギィ…
 そしてガラスを掻くような音を立てる。
「うわ!」
 側面からの爪を、ライはとっさにしゃがんで避けた。
「この!」
 左手でモーゼルを抜く、だが狙いを定めるよりも早く敵の攻撃が来た。
「とっ!」
 手甲に鮫のせびれのようなソードが付いていた。
 とっさにモーゼルの銃身で受け流す。
「なんだよ、この!」
 そしてモーゼルの弾がつきるまで引き金を弾いた。
 嘘でしょ!?
 至近距離、5メートルもないその近さで、敵は全弾、甲の手のひらで受け止めていた。
「娘は貰っていく…」
「え!?」
 慌てて振り返る。
「マイ!」
 気を失っていた。
 マイをかついだ黒ずくめが、車道へ向かって飛び出した。
「この!」
 とっさに銃口を向けたが、またもや横から襲われた。
「なんで!」
 そこに何台かの車が到着する。
 その内の白いスポーツカーにマイは連れ込まれた。
「なんだよ!」
 ガオン!
 突き出された鉄爪を避け、ライはチャンスとこめかみに銃口を当てた。
「 Asta-la-vista, baby?」
 そしてためらい無く引き金を引く。
 ガキィン!
「うそ!」
 コルトパイソンの至近弾だ、いくら防弾性のあるマスクを被っていても、めり込みこそすれ、弾かれることは絶対にない。
「なんで!」
 だがその絶対に無いはずの現象が起こっていた。
「うわ!」
 振り回された腕に殴り飛ばされる。
「いてて…」
 頭を振って起き上がると、スポーツカーが走り去る所だった。
「待て…、この」
 その目の前に、鉄の爪が突きつけられた。
 ごくり…、と喉を鳴らす。
 だが鉄の爪はライを襲いはしなかった。
 ヒュンっと、金色の光が走った、帯のようにも見える。
「リキ!」
 リキが力で、一度に三人を屠っていた。
「乗れ!、追いかけるぞ」
 ライは否応もなく、リキの乗って来たミニクーパーに飛び込んだ。
「何でミニなの!」
「他に無かった」
 リキは慌てて発進させた。
 ダン!
 屋根の上で振動。
 ズガ!
「うわっ!」
 天井から手甲が突き出されて来た、それには手の甲にサーベルが取りつけられている。
「危ないじゃないか!」
 真上に向かってパイソンを抜いた。
 ドンドンドン!
 実は抜くたびに違うパイソンを握っているライである。
「こいつら何!」
 バックミラーに、路上を転がる敵の姿が見えた。
 見上げると、天井にまだ片腕が残されている。
 はっとするライ。
「伏せて!」
 リキとライは同時に伏せた。
 ライが力一杯壁を展開する。
 ガン!
 車が浮き上がるような震動に襲われた、腕に爆薬が仕込まれていたのだ。
「あはははは、屋根が消えちゃった…」
 ほうけた様に、開いた屋根から夜空を見てみるライだった。


続く





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