Episode:27 Take6
飛び立つ飛行機を見送る。
「では、計画をフェイズ2に移行しよう…」
ゲンドウは爆弾マークだらけになっている手帳を見ながらそう呟いた。
「人の心をも動かす業、策士ですね、あなたは…」
少し離れた所にカヲルが立っていた。
笑みを浮かべながら振り返る。
カヲルの言葉に、ゲンドウはただニヤリと口の端を釣り上げた。
ふふ…
ふふふ…
ふふふふふ…
二人の口から自然と笑いが漏れて来る。
「あらあら、楽しそうだこと」
ちょっぴり密談に混ざりたい気持ちを抑えるユイ。
「それで、君はいいのかね?」
ゲンドウは急に生真面目な表情を作って尋ねた。
「ええ、少し小用がありまして…」
「シンジよりも大切な?」
カヲルはふっと笑ってごまかした。
「…それに、向こうには会うとケンカになる相手が居るもので」
カヲルの頭の中には、リキの姿が思い浮かんでいた。
「大丈夫ですよ、あの子達なら…」
カヲルは、小さくなってしまった飛行機を目で追いかけた。
「シンジ君も居ることですしね」
「そうだな…」
「そうですわね、信じましょう、わたし達の子供達を…」
ああっと、ゲンドウは頷いた。
「たくましく生きろ、シンジ」
ある意味、見捨てているようなゲンドウであった。
●
「着いたよ、ここだ」
壁に耳を当てるムサシ。
「何か聞こえるの?」
「うん、壁が薄い、入り口になってるんだよ、この壁が」
通路は行き止まりになっていた。
ムサシはその行き止まりで壁を調べている。
「人の気配がする…、待ち伏せかな?」
さて、どうしようかとムサシは振り返った。
「ごめんね?」
ミヤが右手で謝っている。
「え?」
問い返す間もなく、ムサシは頭に衝撃を受けて崩れ落ちてしまった。
ミヤが力を使って殴りつけたのだ。
「リキ達みたいにはいかないけど、あたしにだってこれぐらいは、ね?」
ミヤは罪悪感から逃れるかのように一人ごちた。
スクール水着の胸元から何かを取り出すミヤ。
アンプルのような入れ物、ミヤはその口を折って、一気に飲もうとした。
「さて、誰の血なんだか…」
あわよくばっと、ミヤは仲間の血であることを祈った。
それもリキやサヨコのような扱いづらい力ではなく、また戦い向けであるように。
●
シンジは疲れたのか、車の窓から顔を出して景色を眺めていた。
スタッフは二台のボックスカーに分乗している。
シンジ達だけが普通の乗用車をレンタルしていた。
隣にはレイ、運転席には加持が居る。
住宅街のわりには、日本のように息のつまるような感じが無い、シンジは「庭が広いや…」っと、家の前にある芝生を見て感じていた。
ブロロロロ…
ミゼット3が電気自動車にあるまじきエンジン音を立てて追い抜いていった。
その荷台に女の子が座っている。
草色のシャツにアーミーパンツ。
「…地元の人じゃないよね?」
シンジはなんの確信も持たずにそう呟いた。
ミゼットが停まる、彼女はその荷台から降りると、送ってくれた老人に軽く頭を下げて礼を言った。
林に囲まれた道だった。
彼女はその道を外れて、林の中へと消えていく。
「遅かったな」
林を抜けると海に面していた。
横を向けば、1キロ程先にメイのつかまっている屋敷が見える。
「テンマか…、姿を見せろ」
彼女は…、ヨウコはその屋敷を睨んだままでテンマに命じた。
すうっと、ヨウコの頭上に現れる。
「動きは?」
「まだ何も無い、いや」
くんっと、テンマは顔を上げた。
「ミヤが、動いた」
その言葉に、ヨウコは素早く動き出していた。
●
なにこれ…、なんなの?、なに!?
血からは外見ではなく、力を取り込もうとした。
ズキン、ズキンと頭がうずく。
恐い、恐い、これは…、誰?
知っている人の気配に驚く。
シンジ君の匂いがする…
意識の奥の奥から、シンジが浮かび上がって来ていた。
それはシンジとは似ても似つかない、邪悪な笑みを浮かべている。
力が欲しいか?
誰かの声が聞こえて来た。
力が欲しいのなら、くれてやろう…
それが誰の呟きだったのか?、ミヤはわからないままに、意識を何かに飲み込まれていった。
続く
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
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