NEON GENESIS EVANGELION

Genesis Q':2C





「あー、レイ、カヲル君、こっちこっちー!」
 シンジがぶんぶん腕を振り回して呼んでいる。
「なになにシンちゃーん」
 レイはさっきまでのことを、とりあえず忘れることにした。
「花火だよ花火」
「ミサトセンセが、売れ残りを買い叩いてきたんやと」
 浜辺にこんもりと山のようにつまれている。
「好きなの持ってっていいわよー、でもロケット花火の、人に向けての水平発射等、危険行為は禁止だからねー」
 はーいと元気な返事。
「いっくでー、シンジ!」
 とりあえずでかい花火に手を出すトウジ。
「情緒ってものが無いのかねー」
 ケンスケは花火に興じる女の子を、カメラに収めはじめた。
「どっちがないんだか」
 あきれたヒカリは、ミズホを誘って手に持てるだけの花火を抱えてきた。
「シンジ様ぁ、どれになさいますかぁ?」
 言いつつミズホは自分がやりたい奴を手にしていく。
「くらえ、トウジ!」
 どこから持ってきたのか、低音花火をトウジに浴びせるシンジ。
「なんやそんなもん!」
 低音花火を両手に持つトウジ。
「ばっかみたい、どうして男って、あー単純なのかしら」
「いいんじゃない?楽しそうで…」
「レイ?」
 レイが大人びてみえるアスカ。
 …ユイおば様に似てきてるんだ。
 ふいにトウジのセリフが蘇る。
 夫婦同然。
 アスカは、レイはともかくシンジがねーと、一人おかしな想像をした。
「シンジ君、ぼくの愛の大きさを見てておくれよ」
 特大10連発を5本束にして打ち上げようとするカヲル。
「3・2・1…」
 どん!
「暴発した暴発した暴発したーーーーーーー!」
 火だるまになったカヲルが、水の中へ飛びこんだ。
「バカばっか…、呆れてものも言えないわ」
 とか言いつつ、こういうノリが嫌いではないアスカだった。






「あら、何かしら、これ」
 第三新東京市第一中学校理科準備室、深夜。
 本来なら人気がないはずのこの部屋に、涙の通り道にほくろのある女性が、肌荒れを気にしながらラップトップパソコンのキーボードを叩いていた。
 NERVから回されてきたウィルスを解析している、さすがにMAGI…可愛い猫ちゃんたちを感染の危険にさらすつもりは無いようだ。
「101?妙にはっきりした数字ね、養毛剤でもあるまいし、何かしら?」
 BABELが5つのコードであり、その共通する部分に101という数字が絡んでいる。
 そこまで突き止めながらも、前に進むことができないでいた。
「やっぱり猫たちを使わないとだめかしら?」
 リツコは幾つかの予備防衛策を準備してから、MAGIとラップトップパソコンをLANで繋いだ。


「赤木博士から連絡、MAGIを使用するとのことです、現在までの解析結果も届いていますが?」
「こっちに回せ」
 冬月は濃いコーヒーの入ったマグカップに口を付けた。
 娘のマヤが誕生日にくれたカップだ。
「コード101…確か加持君の報告書にもあったコードだな」
 では戦自の例の事件がらみなのか?
 短絡的に繋げてしまうのはまだ早いと、冬月ははやる心を抑えて結論を先延ばしにした。






「よっしゃ…いくで、シンジ」
「ねー、やめよーよ」
「ここまできて、何もしないで帰れるかよ」
 こそこそと、就寝時間を過ぎてから、テントを抜け出す3バカトリオ。
 シンジはカヲルが居ないのが気になっていたが、トイレだろうと勝手に決め付けた。
「せめてカメラに収めるんだ」
 ケンスケの眼鏡が、光源も無いのに光った。
「なにやってんの、あんたたち?」
 ごそごそと物音がするので、テントから顔を出したアスカ。
「またつまらないこと、考えてるんでしょー」
 ヒカリだ。
「アスカもとめてよ」
 すぐに人を頼るシンジ。
「なんやシンジ、友情より女とるんかいな」
「友情って、儚いもんだよなー」
 うんうんとうなずきあう。
「ばっかみたい、こんなの友情でも何でも無いじゃない、利用されてるだけだって、どうしてわかんないのよ」
 結局、どうあっても矛先はシンジへと向かうことになっているらしい。
「そんなだから、いつまでも性格にみあって身長が伸びないのよ」
「なんだよ背は関係ないだろー!」
「さてどうかしらね」
「そっちこそ毎晩1時間もかけて、抱いて寝るぬいぐるみ選んでたくせに!」
「なんであんたがそんなこと知ってるのよ!」
 最近シンジと対立することが多くなったと感じるアスカだった。


「「よいしょっと!」」
 トウジとケンスケが、同時に船を送り出した。
 ヒカリとアスカは呆れて寝直した。
 レイがいないことに気がついたアスカとヒカリ。
 しかしそんな心配も、く〜スカぴーと、平和そうに眠っているミズホに感化されて、ま、そのうち戻ってくるでしょーと、眠ることに決め込んだ、なにしろ夜も遅いことだし。
「じゃ、シンジ行くぞー」
「えー、どうして僕なんだよぉ」
 昼間のうちに見つけた、うち捨てられたボート。
 ちゃんと浸水もせず、水に浮かぶことも証明された。
「じゃんけん負けたろ?」
「せや、公正な勝負の結果や」
 今度はこれでUMAを探すつもりらしい。
「ひーとり抜けたら、鬼ですよって、トウジとケンスケ組んでたろー!」
「さて何のことかな?」
 ケンスケの眼鏡が妖しく光る。
「いつまでもぶつくさ言うとらんで、ええかげん諦めておとなしゅー行ってこいや!」
 トウジはシンジをボートに押し込んだ。
「じゃ!」
 片手を上げて、船を蹴りだすケンスケ。
「「がんばれよー」」
「ばかーーーー!」
 三人は三人とも、オールを乗せわすれたことに気がついていなかった。


「なんだろ?騒がしいな…」
 レイは薮をかき分けている最中だった。
 ふと湖に目をむける。
「あれ?」
 だれかが居たような気がした、目をこする。
「…気のせいだよね?」
 水の上に人がいるわけはない。
 レイは薮を抜けると空を見上げた。
 月が真上に来ている。
 遮るものもなく十分過ぎるほどに明るい。
「約束の場所…」
 レイの影が消え、かわりに綾波が肉体を手に入れた。
 いないのか…と落胆しかけたことで、綾波は自分自身に驚いた。
「落胆…?」
 奇妙な感じだった。
「ごめん、またせたかな?」
 先と同じように、彼は音も立てずに現れた。
 綾波がいつもの綾波だったらなら気づいていただろう。
 彼の足跡は浜のど真ん中から、突然始まっていた…
「話って、なに?」
「ま、とにかくすわろーよ、ジュースもあるしさ」
 浩一は缶コーラを2本取り出すと、綾波に1本渡そうとする。
「いらない…炭酸、嫌いだから」
「あ、じゃこっちのほうがいいか」
 今度は午後ティーのレモン、さっきのコーラはどこかに消えた。
 二人は並んで座ると、しばらく何も語らずに湖に囚われている月を眺めた。
「……月は好き?」
「……ええ」
「僕も好きなんだ、特に湖に映った月が」
「どうして?」
「自由なようで、不自由、そこから逃げ出すこともできなくて、ただ揺らめいているだけ…、本当に凄いのはあの綺麗な月じゃなくて、それを受け入れている湖…、自由なようで、不自由……」
 レイ自身にも重ねられる、自由なようでいて、実際にはこの街の中でしか安全を得られない。
 保護下でしか安心して暮らしていけない。
 本当に素晴らしいのは、そんな自分を受け入れてくれた人たち。
「友達は優しくしてくれる?」
「ええ…」
「いいなー、僕の友達は無口でさ、なんにも話してくれないんだ」
「どこにいるの?」
「すぐ近くで見守ってくれてる、けど僕のことを心配してくれてるわけじゃないとおもう」
「なぜ?」
「だって壁を感じるから」
 ドキッとする綾波。
 壁…心の壁。
「でも、どうして君には話せるんだろう?」
「わからないわ」
「…似てるんだ、きっとぼく達、だからかな」
 浩一はレイの肩に頭を乗せ、もたれかかった。
 綾波はとくに拒絶しない。
「僕は、君と出会うために生まれ変わったのかもしれない…」






「こりゃまた、えらい騒ぎですな」
 会議室に戻った冬月を待っていたのは、ゲンドウだけではなかった。
 無精髭と尻尾髪の男、加持リョウジ。
「君か、まさかNERVの監視にかからずにここまで入りこむとはな」
「そう卑下しなくてもかまいませんよ、多少の苦労はしましたからね」
「多少か?」
 皮肉の笑みを口元に張り付かせて、冬月はいつもの席に着いた。
「で、何のようだね」
「幾つかのルートで情報を送ったはずなんですがね、どうも妨害にあったようで…、それで一番確実な方法を取ったわけです」
「直接話しにか…で?」
「戦自がどこで何を見つけてきたのかわかりました、イラクのバグダット近郊です」
「リバースバベルか…」
「さすが極東マネージャー、よく御存じで」
「それを手に入れたものは聖地を作り出す…、戦自め」
「さすがに塔を持ち帰るのは不可能でしたがね、幾つかのアイテムを極秘で手に入れたそうですよ」
「非合法にかね」
「手に入れたものは2つ、塔の頭脳らしきOパーツと、とある遺伝子設計図」
「設計図?ミイラや骨ではなく?」
「設計図です、空間に立体的に描き出されるそうなんですがね、いやはや、俺にはよく分からない分野で」
 冬月の方が好きそうだと思う加持。
「設計図から何を産み出した?」
 ゲンドウは結果の方に興味があるらしい。
「そこまではまだ…ただ今回の事件と「101」というコードに秘密が」
「また101かね」
 うんざりだと冬月。
「これ以上はNERVの諜報部にでも動いてもらわないと…なにしろ人手が足りないもので」
 肩をすくめる加持。
 それと同じタイミングで、冬月の携帯が鳴った。
「どうした?」
「監視カメラを見てください」
 冬月は会議室用の大型モニターに火を入れると、画面の上を指でなぞった。
 幾つかの記号らしき絵図を描き上げたところで、モニターが廊下、各部署などを映し出した。
「査察ですか」
「あれは…マルサか?」
「違うな」
 ゲンドウはその中でも指揮を取っている女性に目をつけた。
 おかっぱ頭に、そばかすのある顔、歳は30前後だろう。
「税務署に見せかけているようだが…、内調だな」
 先程のウィルス騒ぎを思い出し、情報が外部に漏れた可能性を考える。
「まずいぞ、碇」
 だがゲンドウはファイティングポーズを崩さない。
「ほうっておけ、情報が漏れたのなら地下施設を目指すはずだ、遊ばせておけばいい」
 それであの女をごまかせるとは思えんが。
 ゲンドウはどの程度の情報を与えてやるべきか、その算段に頭を悩ませた。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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