NEON GENESIS EVANGELION
Genesis Q':2F
「冬月教授?」
リツコ自慢の車は当然のごとく「BABEL」にやられていた。
旧石器時代の乗り物を駆る感覚で、ゼーレビルまで「スーパーカブ」に乗ってきたリツコは、冬月に面会を求めた。
必殺の開けてからドアノック。
だが冬月はいまだ復活していなかった。
「だめね、これは」
●
「素晴らしいわ…」
加持とミサトの脇をすり抜けるように、恍惚とした表情で江戸川は歩き出た。
「あんた…、あんたいったいなにをしたの!」
直感で首謀者だと決め付ける。
「何を怒っているの?みなさい、旧時代、神と崇められていたものが今ここにあるのよ」
その言葉はミサトには理解できなかった。
「神?浩一君をとりこんでいる、ただの化け物だろう?」
加持は怒りをぶつけた。
「浩一…?、ああ、あの実験体のこと?」
「実験体…」
レイが江戸川を見た。
「そうよ、実験体、そのために作ったの、人じゃないわ、人の形をした物なの」
「どこかで聞いた言葉だね」
カヲルは怒っていた。
「つまりそんなつまらない物を造るために、シンジ君をあんな危険な目に合わせたんだね?」
戦自の巻き添えを気にしないやり方に腹をたてていた。
「そうね、つまらないものかもしれないわね」
以外にも反論しない。
「だって、お楽しみはこれからですもの」
「つまりなにかね、今度のクラッキングは何かをバックアップするために行われているもので、終了すれば全てのネットワーク、及びプログラムは復活すると…」
「ええ」
それを聞いて安心する冬月。
リツコは冬月の椅子に座ってコーヒーに口をつけた。
冬月は窓から街の様子を眺めている、電光掲示板までが「BABEL」の文字を表示している。
「鳥取砂丘…、例のOパーツか」
「オフレコにしておきますわ…、先のハッキングはカードに化けた何かが行ったもの、今度は別の何かです」
「どうして分かるんだね」
「癖が違いますから」
冬月には理解できない世界だった。
「楽しみ?」
「そうよ」
抑揚のないレイの声に江戸川は気圧された。
「そのためにあの人を苦しめたの?」
「人じゃないわ、作ったんだもの、綾波さん、だったかしら?、あなたもそうでしょ、神の力を手にするために作られたんだもの、人じゃないわ、人形よ!」
「わたしは人形じゃないわ」
赤い瞳が危険な色を含んだ。
「いまは言い争ってる場合じゃない」
「そうだね、あれをとめないと大変なことになるよ」
加持とカヲルだけが冷静に巨人を見ていた。
「止める?ポセイドンを?」
あざけり笑う。
「俺にはできないかもしれない、だがここにはそれができる、やれる人間がいる」
加持はカヲルとレイを見た。
「彼を助けよう」
「ふざけないでっ、私は手に入れるのよ、真なるバビルの塔を!」
パン!
ミサトは江戸川をはり倒した。
「ふざけないで、自分の欲のために子供を…」
「子供じゃないわ、人形よ!」
ミサトの逆鱗に触れた、思い出される記憶、殺してくれと言った子供達。
「人形じゃない、人だわ!、人の心を持ってる、人間よ!」
はあはあはあ…と息の荒いミサトの両肩を押えて落ち着かせる加持。
「人は酷いことをするな…」
何を言い出すの!とミサト。
「だけどな、それを嫌悪するのも人間だし、正すのも人間だ、そう人間なんだ、俺も、貴方も、君達も、そして彼もね、その人間なんだ」
加持はもう一度レイとカヲルに言う。
「助けてやれるね?」
しょうがないと肩をすくめるカヲル。
「霧が晴れる前にかたを付けないと、騒ぎになるしね」
レイは何も言わず、巨人へと振り返るのだった。
●
「3つのしもべ?」
「はい」
リツコはマジックで適当な紙に図を描いてみせた。
「塔は頭脳です、それから少年と、従者、兵士、そしてそれらを繋ぐ鳥、そんなところでしょうか」
「それが「B・A・B・E・L」の正体かね」
「文字が何を現すのかは解りませんが、間違いないでしょうね」
「よくわかったな」
「バックアップを目的としている以上、相互にやり取りをしているはずですもの、そこに気がつけば後は簡単でしたわ」
冬月はゲンドウの真似をしてファイティングポーズを作った。
「混乱の塔なるかなバビル、たしかバビロンにその基礎が残っていたのではなかったかな?」
「戦自がリバースバベルで何を見つけたか知りませんわ、けどバビルの塔のコピーを作った本当の意図はどこかにあるはずです」
「それは碇の仕事だな」
冬月は赤い電話に手を伸ばした。
「二人の完璧なユニゾンによる一点同時の過重攻撃、これしかないわ!」
巨人の前に立ちふさがる二人に叫ぶ、いつもながら雑な作戦を立てるミサト。
「となればやっぱり狙うのはあそこだね」
カヲルは巨人の赤い玉をさした。
「カヲル…」
「なんだい?」
「あなたのこと、嫌いじゃないわ」
「なんだい、突然」
「死んだら、言えないから」
「大丈夫だよ、君は死なない」
「あなたが死んだらよ」
綾波は壁を展開して巨人を押しとどめた。
「時間が無いわ」
「いくよ」
カヲルが壁を細く細く、錐のように尖らせた。
一本の剣に変える。
剣を投げる、それを君の壁で包んでくれ。
頭の中で声をかける。
カヲルは返事を待たずに剣を投げた。
綾波の壁を貫くように剣が飛ぶ、だが壁は破れずに、そのままカヲルの剣をラッピングする。
今までにない、強い黄金色の輝き。
だが巨人は視認できない速度で飛んできた剣を、睨むだけでとめてみせた。
「サイコキネシス!?」
綾波は壁を張りなおした。
「レイ!」
綾波の壁に手をかける巨人、目に見えるほど強い壁を作るが、巨人の手はその壁を引き裂きはじめた。
「そんな…シンジ君と同じことを!?」
カヲルはレイを助けようとした。
パン!
その足元に弾丸が突き刺さる。
流れてくる硝煙の臭い。
「江戸川!」
「邪魔はさせないわ!」
きちがい染みた目で加持とミサトを牽制する。
「くっ!」
一瞬気を取られたカヲル。
「きゃあ!」
綾波の悲鳴、小さな体が、剣で殴り飛ばされた。
「レイ!」
カヲルは巨人の背に思いきり力を叩きつけた。
片足をつく巨人。
即座に綾波も力を放つ。
ぶうん!
巨人が剣を振りまわした、先端が爆砕したように散って、綾波の力を拡散消失させる。
立ち上がる巨人、剣はその形を変える。
「あれは…槍?」
ねじりあがるように長く伸びる、先端が3つにわれた。
「三叉槍、あれこそポセイドンの持つトライデントだわ!」
狂喜する江戸川。
槍に浩一の力が注ぎこまれていく、発狂しそうな程の生への苦しみ。
「浩一…」
綾波はその槍が自分へ向けられるのをじっと見ていた。
あの巨人は浩一の苦しみの形、そのものなのだ。
「レイっ!、やめるんだ浩一くん、君は綾波と一緒になりたかったんだろう!?」
苦し紛れの言葉だった、だが意外なことに巨人は動きをとめた。
「どうしたの!」
江戸川の悲鳴。
「使いなさい、槍を、その力を、そして」
真なる塔を呼び覚ますのよ!
「続けるんだ、カヲル君!」
加持は江戸川に飛びついた、ミサトも協力して銃を取り上げる。
巨人は綾波の壁を槍を使って取り払うと、その体をつかんだ。
不気味に口が歪む。
「笑ってる?」
ミサトは寒気を感じた。
「浩一!」
ゆっくりと、目があるようにカヲルへと振り向く。
「レイを放すんだ、わかってるのか、君は力ずくでレイの壁を取り払ったんだ、君の言うことが正しいなら、今君はレイの心を踏みにじろうとしているんだぞ!」
ふぅおああああああああああああ!
予想以上の反応がかえってきた。
巨人は怒りに震えてレイを投げ出した、そのまま槍を振り上げ、カヲルへ投げ付ける。
「だめええええええええ!」
かろうじて壁が槍と拮抗する。
レイは槍を投げた後の隙を見逃さなかった、巨人の懐に入りこみ、赤い玉に両手を当てた。
「こういちぃっ!」
両手から力を放つ、赤い玉がくだけた、槍が力を失って、先端から霧散していく。
「浩一…」
巨人の胸が割れた、そこから浩一がこぼれでる。
綾波は浩一を受け止めると、浜に横たえた。
「助かった…かな?」
カヲルはレイに笑ってみせた。
●
冬月は受話器を置いた。
「SSSが出た、じきに塔は抑えられる」
「ようやく眠れますわ」
リツコは椅子から立ち上がった。
「すまなかったな」
「いいえ、これも仕事ですから」
振り返りもせず部屋を出て行く。
冬月は後になって、マヤのことを聞きそびれたと後悔した。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'はGenesis Qのnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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作者である私と原作者naryさんの許可または承認が必要です、ご了承ください。
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