NEON GENESIS EVANGELION
Genesis Q':2G
「ありゃま、眠っちまってるよ」
加持はシンジ、レイとカヲル、それに浩一と、奪ってきた毛布を掛けてやった。
「そりゃこれだけ騒いだ後ですもの、無理も無いわ…」
ミサトは江戸川を縛り上げ、戦自の指揮車そばに放り出してきた。
「で、だ、後はこいつをどうするかだな…」
加持とミサトは動かなくなった巨人を見上げた。
「心配…いらないよ」
呷きにも似た声。
「ちゃんと持って帰る」
「大丈夫か?」
浩一が身を起こした。
二、三度頭を振って、意識をしっかりさせる。
「暴れちゃったみたいだね」
「たいしたことはない」
部外者の声。
「これはこれは、遅まきながら御登場ですか?」
木陰に赤い眼鏡の男が立っていた、碇ゲンドウだ。
「これからどうする?」
浩一はゲンドウの心をのぞこうとした、真意が知りたかったのだ。
「望むなら第三新東京市に住めばいい」
浩一は首を振った。
「そうか…」
「ロプロース!」
浩一の声に答えて巨鳥が舞い降りた、その背に飛び乗る。
「綾波さんに…、いや、やっぱり良いです」
浩一はそう言って笑うと、怪鳥を空へと舞い上げた。
ロプロスはポセイドンをつかむと一緒に引きずり上げる、ポセイドンには黒豹に化けたロデムが取り付いていた。
「どこに行くんですかね」
「生きていこうと想えば、どこでも天国になる、生きている限り、幸せになるチャンスはどこにでもある」
ゲンドウはきびすを返した。
「その子たちを頼む」
ゲンドウが戦自の指揮車に向かって姿を消した。
しばし無言で見送る加持とミサト。
「さてと、さっさと運ぼうぜ葛城」
いつまでも放り出しておくわけにもいかない。
「そうね、じゃシンジ君とカヲル君をお願いね」
「なんでだよ」
「あんた中学生にまで手を出す気なの?」
「信用無いんだなー」
嘆息する加持だった。
●
「かーじさーん、こっちこっちぃ!」
健康的な手足をみせびらかして、アスカは濡れるのも構わずにはしゃぎまわっていた。
空が青く、陽射しはきついが、水はもう冷たい。
「じ、地獄や…」
「シンジが悪いんだ」
「やらせたのそっちじゃないか…」
3バカトリオはミサトによって水泳を強要されていた、昨夜ボートで危ない真似をした罰だ。
「シンジ様、昨夜は大変でしたねぇ」
「まあ…ね、ボートでひっくり返った時には、ほんとに死ぬかと思ったよ」
今も寒くて死にそうだけど。
「いえあの、そうではなくてぇ、そのあとのぉ」
「なに?」
「いえ…いいですぅ」
シンジはあれを夢だと思っていた。
ボートから落ちて以降、一度もちゃんと目を覚ましていないのだから当然かもしれない。
…きっと自分に自身が無いから、不安になったんだとおもう、それであんな夢を。
シンジは第三高校が専門過程に力を入れていることを思い出した。
「ちょっとは考えて見よう」
はからずもゲンドウの思惑通りに動くシンジであった。
「レイ…」
「カヲル…」
レイはまたあの浜辺に来ていた。
あれから数時間しか経ってないのに、夕べここであった出来事を物語ってくれるものは、何一つ残っていなかった。
「あの子…おちこんでるの、傷つけたかもしれないって、好きだったの、あの子」
カヲルは否定する。
「違うね、レイのは同情だ、愛情じゃない、自分が重なってみえてただけさ、浩一君と同じだよ、浩一君はそれに気がついたから、レイの前から姿を消したのさ」
「冷たいね、カヲル」
レイは座り込むと砂をひとつかみ握りこんだ。
さらさらとこぼれ落ちていく。
「第一、浩一君は生きてる、君を求めて傷つけるよりも、一人で生きることを選んだんだ、尊敬に価するよ」
「尊敬?」
瞳が赤くなるレイ。
「凄いってことさ、だってぼく達はシンジ君や、みんなと離れるなんてできないんだから、彼は例え一人きりのままでも、生きていくことを選んだんだから、強いよ」
カヲルは綾波を見つめた。
「あいつは自分で考えて、自分で決めたんだ、君と同じように、なら、同情や哀れみはかえって失礼じゃないかな?」
笑ってみせる。
「それとももう一度話したいかい?、どうする?、いまならまだ彼に声が届くかもしれない、浩一君なら拾ってくれるよ、きっと、けどその方が残酷だとおもうけどね」
綾波は湖の向こう、山と繋がる雲に向かって、少し迷ってから「さよなら…」と呟いた。
カヲルは普段見せないとびきりの笑顔でレイの手を取った。
「さ、帰ろう、シンジ君が待ってる」
綾波は、微笑んでみせた。
「ええ」
カヲルはレイが変ったと感じた。
「女は恋をして変わるのさ」
そんな加持の言葉を思い出すカヲルだった。
続く
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'はGenesis Qのnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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