「マナちゃん、しっぱぁい」
 てへっと、舌を出して自分の頭をコンと叩く。
「失敗じゃないわよ!、あんたシンジが死んでたらどうする気だったのよ!?」
「まあまあ、アスカ…」
 脱衣所、頭を包帯で3倍ぐらいに大きくしているシンジ。
「別に悪気があったわけじゃないんだろうから…」
 ミズホはずずーっと鼻をすすりながら、さらに包帯をまこうとしていた。
 …鼻水ついてないかなぁ?
 一部がびがびに固まっていた。
「ああ、シンちゃんの弁護に愛を感じる」
「あんたバカァ?、悪気も無しにあんなことされてたまるもんですか」
 たまらないのはホテルの方だろう。
「大体あんた、何でこんな所に居るのよ!?」
「シンちゃん追いかけて来たの」
 マナはぬけぬけと言い切った。
「で、でもどうしてここだとわかったの?」
「シンちゃんのお父さんから教えてもらったの、もう!、どうして言ってくれなかったの?」
「ど、どうしてって…」
 言いよどむ。
「別に、霧島さんにいわなきゃならないようなことじゃ…」
「どうして?」
 マナは酷く傷ついたようにシンジを見た。
「ど、どうしてって…」
「あたし達、そんな関係だったの?、ねえ…」
 思い詰めた様子と、真剣な表情。
 くっ…
 シャツの端が捉まれたのを感じた。
 ミズホか…
「シンジぃ?」
 アスカの笑った顔は実に恐い。
「どういうことか説明してもらいましょうか?」
「ど、どうって…」
 答えるようなことが見つからない。
「浮気なら早い内に言っちゃった方がいいわよ?」
「シンジ様ぁ、今のうちなら甲斐性で済みますぅ」
 シンジはおろおろとマナと二人を見比べた。
「シンちゃん、いいよ、もう…」
「マナ?」
 ついポロッと漏れた言い方に、二人の眉がピクンと跳ねた。
「元々、シンちゃんと友達になりたいって思ったあたしが悪かったんだから…」
「マナ…」
 今度はマナの口の端にニタリと笑みが…
「でもね?、初めて会った時、本当に嬉しかったの…」
 嘘の涙がきらりと輝く。
「これからは、あたしもシンちゃんのファンの仲間入りだね…」
「やめて、やめてよ、どうしてそんなこと言うのさ!」
 かかった!
 マナの瞳が邪悪な物に輝いた。
「僕たち友達だろ?、どうしてそんな寂しいこと言うのさ…」
「じゃあ、あたし友達で居ていいの?」
「うん、もちろんだよ!」
 ギギュウ!
 ふっく!
 シンジは強くつねられたお尻に堪えた。
 ミズホ、今は…、ごめん!
 心の中だけで謝る。
「よかった…、じゃあ女の子の友達として見てね?」
「変なの?、だってマナは女の子じゃないか…」
「くす、そうだね?」
「うん」
 ギチギチギチ…
「どうしてのシンちゃん?、脂汗なんてかいて…」
「あ、あはは…」
 痛い、痛いよアスカ…
 包帯で良く見えないのだが、シンジの後頭部にアスカのクローが決まっている。
 万力のように締め上げるしなやかな指先。
「女の子の友達!、英語で言うとガールフレンドね?」
「え?、あの…」
「ガールフレンド!」
「「そんな英訳あるわけない!」」
「はうぅ〜ん」
 二人の怒鳴り声に、紙のように吹き飛ばされるマナであった。






「嫌」
 綾波ははっきりと口にした。
「…そうなのかい?」
 頷く。
「そっか…」
 浩一は初めから答えが分かっていたかの様に、潔く諦めた。
「シンジ君は、幸せ者だね…」
 窓の外の月を見やる。
「わたしも、同じ…」
 綾波は自分とマナの出会いを比べてみた。
 必然として仕組まれた出会いだった。
 だけどシンジがレイと仲良くなったのも…、そして綾波の存在を知った時も。
「あの人は、ただ受け入れてくれたわ」
 わたしの不幸など、かまわずに…、なにも詮索しないで。
 それがシンジに感じた居心地の良さだったのかもしれない。
「だから守るの、絆を…」
 綾波の瞳がゆっくりと閉じる。
「さよなら…」
 そしてまた浩一の姿も、かすれるように消えうせる…
 再び瞳を開いた時、そこにはレイ、ただ一人だけが突っ立っていた。






「え〜〜〜!?、あんたもベッドを貸してくれ、ですってぇ!?」
 あまりの図々しさに呆れ返るアスカ。
「うん、慌てて来ちゃったから、ホテルなんて取ってないもん」
「ずえ〜〜〜ったい嫌!ですぅ、なんであんたなんかに!、ですぅ!!」
「ちょっとそれ誰の真似よ!」
「うっきゃー!」
 ベッドの上で押さえ込まれるミズホ。
「なにもアスカたちの所に、なんてお願いしてないよぉ」
 マナはシンジを真直ぐ見つめた。
「え?」
「ね?、お願ぁい、ソファーでいいからぁ」
「だぁめ!、この部屋はあたしとシンちゃんが使うんだから!」
 シンジの首に噛り付くレイ。
「大体、ベッドはアスカが壊しちゃったから使えないのよ?」
「だから言ってるのに…、シンちゃんと仲良くしようったって…」
 入り口を見やる、派手に壊れたドア。
「これじゃあねぇ?」
 うっと、レイは言葉につまった。
「い、いいの!、あたしはシンちゃんと抱き合って寝るんだから!」
「ずるいですぅ!」
「そう言う問題じゃないわよ!、シンジ、あんたはあたし達の部屋で寝なさい!」
「え〜?、どうせソファーだろ?、だったらいいよ、こっちで…」
「だめよ、こんな危険な女と一緒にさせられるもんですか!」
 …す巻きにされるよりはマシなんですけど。
 二日続いて同じ運命が待っているかと思うと、悲しくなって来る。
「ん〜、じゃあこうしようよ、アスカ達の部屋のベッドに二人、ソファーに一人、こっちのソファーに二人でどう?」
 マナの提案に眉根を寄せる。
「なんでこっちに二人なのよ?」
「だってこっちにシンちゃんが寝るんでしょ?、だったら…、ねえ?」
 なにがねえ?、なのよ…
 アスカはジト目で見ているのだが、レイとミズホはちょっと心惹かれた様子だった。
 これなら文句なく…
 シンジ様でも、しぶしぶ了解してくださるかもぉ…
「ちょ、ちょっとあんた達?」
 一歩を踏み出した二人に慌てる。
「あ、じゃあアスカは不参加?」
「やるわよ!、まったく、あんたの思い通りにはさせないんだから…」
「…って、ソファーに二人寝るんなら、別にこっちにでなくてもいいじゃないか」
 不用意な発言は死を招く。
乙女心って物を!
「今日も月が奇麗だねぇ…」
 浩一が月見を楽しむ中、その先にあるホテルのベランダに、す巻きにされた何かがぶら下がっていた。



続く







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