とにかくここで、待ってなさいよ!
 そう言ってアスカたちは駆け出していってしまった。
「はああああ…」
 派手にため息をつくシンジ。
 波打ち際に座っている。
「とにかく探さないと、ね?」
 マナが優しく微笑みかけた。
「あれ?、シンジお兄ちゃんだぁ!」
「え?」
 バシャバシャと浜に上がって来る。
「あ、マイちゃん…、だっけ?」
「うん!、どうしたの?」
 その暗い雰囲気に首を傾げる。
「ちょっとね…」
「ふうん…、あのね、ミヤとサヨコも居るんだよ?」
「二人も?」
「うん!」
 花のような笑顔で答え、振り返る。
「おーい、こっちだよぉ!」
 そして手を振る。
「あ、シンジ…、くん」
「秋月…さん」
 ザザァン…と言う波の音と、ザワザワとする人の声が…
「って、すぐ二人の世界に入っちゃうんだから」
「か、からかわないでくださいよ、サヨコさん…」
 シンジ達は、赤くなってうつむいた。
「ちょっとぉ…」
 ジト目のマナ。
「で、こちらのお嬢さんは誰?」
「あ、秋月ミヤさん、前に同じクラスだったんだよ、ね?」
「…シンジ君、この人は?」
「同じクラスの霧島マナさん…」
「ふうん…」
 なんだろう?
 シンジはもぞもぞと体を動かした。
「初めまして、あたし「シンちゃん」と同じクラスのマナです、シンちゃんにはいつも「仲良く」してもらって…」
 何よこの女!
 敵意剥き出しの口調に反応する。
「ミヤって呼んでね?、あたしもシンジ君には「何度も」助けてもらって、大変お世話になってるの」
「あ、秋月さん、そんな…」
 素直に言葉通り受け取るシンジ。
「ごめんね?、この間も「キス」しちゃって」
「あ、あれはそんなんじゃ…」
 怒ってる、怒ってるよ…
 マナの怒気を気配で察する。
「へえ、シンちゃんってやっぱりもてるんだねぇ?」
「きゅ、急に何言い出すんだよ、マナさん」
「だってこんな奇麗な人とも知り合いみたいだし?」
「あら?、もしかしてお邪魔だったかしら?」
「そ、そんなことないですよ、サヨコさん…」
 むーっとミヤとマナが同時にすねる。
「なんか、態度が違くない?」
「どうして照れるかなぁ?」
 シンジには答えようが無い。
「それで、今日みんなは?」
「みんなは、ちょっと…」
 シンジは、もごもごとしながら先程までのことをみんな話した。


「まったくもお!、シンジ君、ツバサの遊びに付き合うこと無いわよ!」
「あ、いや、僕にそのつもりは無いんだけど…」
 シンジはちらちらとサヨコを見ていた。
「あたしがどうかしたの?」
 キョトンとしているサヨコ。
 シンジはカーッと赤くなって黙り込んだ。
「あーーー!、シンジ兄ちゃんエッチっちだぁ!」
「ち、違うよ、そうじゃなくて!」
 こいつもか胸か…
 ぐぐぐぐぐっと、ちょっとだけ握り拳を作るミヤ。
 マナも少し同意気味。
「もうシンジ君ったら…」
 サヨコも両腕で軽く胸を隠す。
「いえ、その…、女の人って、どうして着る物によってそんなに変わるのかなと思って…」
「あら?、そんなに違うかしら」
 サヨコは自分の体を見下ろした。
「はい、セーターとか着てた時は、柔らかそうな人だなぁって思ってたんですけど…」
「けど?」
「今は年上のお姉さんって感じで…、あ、すみません、生意気でしたね…」
 シンジは言いながら、ミサトの言葉を思い出した。
 髪が長くて、面倒見が良くて…
「あの!」
「ん?」
 キョトンとするサヨコに、シンジは頭を下げていた。






 ザザァン…
 波打ち際、足を濡らした水が引いていく。
 くっ!、その手があったか…
 シンジの背後にはさらに女の子が増えていた。
 もちろんサヨコ、ミヤ、マイである。
「で、こちらが、その…」
 シンジの紹介に、にっこりとするサヨコ。
 ツバサはちらりとアラシを見た。
 また負けてるよ…
 派手にため息をつく。
 背後にはライとテンマが増えていた。
 アラシの横の女性は、確かに胸もあるしお尻もあった、腰だってくびれている。
 だがサヨコの均整の取れた肢体に叶うはずもなく、また顔に至っては比べるだけ無駄であった。
 さらにマイの存在である。
 審査員であるリキが、彼女の意志に背けるわけが無かった。
「完敗だ…」
 がっくりと膝をつくアラシ。
「失礼ね!」
 パン!
 彼女はアラシの頬を張って去っていった。






「ま、勝ちは勝ちだからぁ!」
 上機嫌のアスカ。
「そうそう、これ全部アラシの奢りね?」
「ごちそうさまですぅ」
 皆でなだれ込むバーベキュー。
「悪いね、僕達まで」
「ツバサ、自分の分は払えよ…」
「心の狭い奴は嫌われるよぉ?」
 目の端にリキを捉える。
「マイ〜〜〜」
「ぷんだ!」
 頭を下げまくっている、腰を折ったジャイアントパンダというのは可愛いかもしれない、全然関係の無い話しだが。
「ナンパなんてするようなの、嫌いだもん!」
「見てただけだよ、な?、アイス買ってやるから」
 ぴくんと犬耳が反応する。
「プリンが良いか?、シャーベットも付けるぞ?」
「そんなごまかされないもん!」
 だが尻尾がパタパタと振れている。
 機嫌が直るまでは後一息のようだ。
「そんなに食べると太るわよ、レイ」
「なによアスカ、そんなこと言ったってこの串は譲んないんだから」
「良いじゃないですかぁ、もう手遅れなんですからぁ」
 ぴたっと、レイの手が止まる。
「あたし太ったかなぁ?」
「冗談よ、冗談」
「レイさんちょっと細過ぎですぅ…」
「ありがとう、でも…、二人に言われても、同類哀れむって言うか」
「どういう意味ですかぁ!」
「あんたちょっと説明しなさいよ!」
「きゃうー!」
 そのどたばたを余所に…
「あれ、シンジ君は?」
 気の付いたようにミヤ。
 ついでにマナも消えていた。






「シンジ君って、やっぱりもてるんだね?」
「なんだよもぉ、その話はやめよぉよ…」
 うんざりとして、シンジは浜辺を歩いていた。
 もう陽もくれる寸前だ、人影もまばら。
「でもアラシさんが言ってたことも本当かもしれない…」
「え?」
「誤解なんだよ、みんな…、誤解してるんだ」
「誤解?」
 立ち止まる。
「誰かに優しくしてるのを見て、優しいと思ってくれてる…、でも僕は人に優しくするってどういうことなのかわからない」
「…優しいかどうかは、人が決めるんじゃないかな?」
「え?」
 マナは手を差し伸べた。
「あっち、行ってみない?」
「…うん」
 浜の先には、ちょっとした岩場があった。


「マナって、こっちから来たんだっけ?」
「うん」
「じゃあ今は里帰りかなんかなの?」
 追いかけて来たんだってば!
 ボケボケのシンジに、つい叫んでしまいそうになる。
 岩場にはちょっとした洞窟があった。
 とはいっても奥行き5メートル程のだが。
「ここね?、昔よく隠れて遊んだの」
「ふうん…」
 ほんとは訓練がきつくて逃げ込んでたんだけど…
 そんなこと言えないよねっと、マナはちょっと胸を傷めた。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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