NEON GENESIS EVANGELION

Genesis Q':5F





 その頃カスミは…
 コク、コク、コク…
 社の中、神棚に向かい御神酒の注がれた椀を傾けていた。
 ああ…、甲斐さんが見てくれてる…。
 甲斐は楽しそうにビデオカメラを構えていた。
 カスミはおしろいの下で頬を赤くする。
 甲斐さんが喜んでくれるなら、こんなのもいいな…
 ゴゴゴゴゴ…
「地震!?」
 誰かが口にした、大きくはないが祭りの最中だっただけに、不穏な空気が流れてしまった。
 カスミはプルプルと拳を振るわせた。
 よりによってこんな時に…
 直感で「仲間たち」の仕業だと察する。
 ぐぬぅ…
 後に神主は、「般若のような形相をしたおなごじゃった」と口にした。


「悪の最後だね」
 崩壊していく洞窟。
 入り口は、出雲と出会った林の奥にあった。
 社と見せかけて、地下へ潜る階段が隠されていたのだ。
 社が燃え上がり、ゆっくりと崩れていく。
 他の場所でも、いくつか火の手が上がっていた。
「大ごとになっちゃったね」
 他人事って感じのマイ。
「まあ、後は大人に任せよう」
「おじさんよろしくね」
 リキとツバサが、同時に加持の肩を叩いた。
「待ちなさいよ!」
 アスカの手をするりとかわす。
「レイ、また遊ぼうね!」
 ツバサとマイが手を振った。
 リキが力で雪を噴き上げる。
「あっ!」
 一瞬視界が閉ざされた、そのすきに三人とも姿を消していた。
「おばけ…」
 キクはおもしろそうに呟いた。






 帰り道。
 加持は黙々と運転を続けている、車はゼーレのセキュリティーが回収し、無事だった。
 もう第三新東京市に入っている、川沿いの道を走っていた、水面からの反射が目に痛い。
 加持は珍しくサングラスをかけていた。
 ミサトは死んでいた、ただの飲みすぎである。
 この旅行の間ひたすら飲むだけだった、いい加減限界が来たらしい。
 ゲンドウとユイも静かだった、ゲンドウは黙々と新聞を読み、ユイは体を預けて眠っている。
 そのユイの隣では、キクがいだかれるように眠っていた。
「キクちゃん、気持ちよさそう」
「そーねー…」
 レイの言葉に、アスカは気のない返事をした。
 キクは第三新東京市にいる養父母のもとで暮らすことになったのだ。
 ちなみに出雲は修行のやり直しと、竹崎に引きずられて行った、以後、アスカたちは彼を見ていない。
「疲れたね〜」
「いろいろあったからね〜」
 くたくただった、シンジと話せないのも効いている、シンジの携帯は電池が切れたままになっていた。
「あ…」
 ただなんとなく川を見ていたミズホが動いた。
「シンジ様ですぅ」
 がばっとアスカとレイが起き上がった。
「どこよどこ!」
「加持さんとめて!」
 車が停車しきる前に飛びだす。
「あそこですぅ」
「あ……」
 川べりにシンジがいた、それと…
「カヲル!」
 抱き合っている、しかもいい雰囲気。
「な、ちょっと何やってんのよあの二人!」
「ああああああああああ、ダメですシンジ様ぁ!」
「どいて二人とも!」
 レイはスキー板を引っ張りだした。
 投擲体勢を取る。
「今こそヒカリの従姉妹が槍投げ選手だった成果を見せてあげるわ!」
「誤差修正3度ですぅ!」
「はっしゃあっ!」
 レイはアスカの叫びに合わせて、スキー板を放り投げた。
 スキー板は夕日をきらりと反射させて、それは糸を引くようにカヲルのドタマに吸い込まれた。
「ああっ!?、カヲルくぅ〜ん!」
 シンジの情けない声。
 あたしが酷い目にあってたってのに、あのバカ何よ!
 アスカは走りながら、どうお仕置きをくれてやろうか考えた。
「ママたち、楽しそう」
 キクは勾玉をもて遊びながら呟いた。
 ゲンドウは勾玉と、キクの手を両手で包む。
「大事にしなさい」
 キクは大人しく言うことを聞いて、首からぶら下げているお守りのような袋に勾玉をしまいこんだ。
「ママ…」
 ゲンドウの目は悲しみに溢れていた。


「あー、面白かった」
 …というツバサを睨むカスミ。
「な、何かあったの?」
「別に…」
 カスミは顔を伏せた。
「こえー…」
 リキもマイも近寄らない。
「で、あの球根はなんだったの?」
「人間だ」
 甲斐はゆったりと椅子に体を預けている。
「人間!?」
「そう、ジャイアントシェイクよりもさらに古い時代、人工心臓も無かった頃の寄生植物、人造植物を利用して白血病から娘を守ろうとした老人がいた、その遺産だよ」
「ふ〜ん」
「結局は息子が完成させ、そいつは娘に使い、そして孫を独りぼっちにさせてしまっただけだったがな」
「孫ってキクちゃんだね、じゃあキクちゃんのお母さんなの?」
「ああ…、人間を取り込んで、球根にまで戻ったんだそうだ」
 ツバサもマイもそれ以上追求するのをやめた。
「人間って、いろんな事を考えるんだな…」
「死を恐れるからな」
 リキの呟きに答える甲斐。
「あー、そう言えば」
 ツバサが思い出したように問いかけた。
「あの古文書、誰かに手を加えられてたんだけど、心当たりない?」


「ママ…、新しいママを見つけたよ?」
 シンジをどつき回しているレイ。
「…ママ」
 くすくすと、キクはじっとレイを見ていた。



続く








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