Episode:8A





 昔々あるところで、善なる父神ゲンドウは、人間の女ユイと恋に落ちました。
「お父さま、あなたは堕落しました!」
 女神レイは怒りのはけ口をとある小国へと向けます。
「女神さまっ、どうかお怒りをお沈め…じゃなかった、お鎮めください」
 ピンクハウス系のひらひらしたドレスを着ている少女が懇願した。
 どこに出しても恥ずかしくないような美少女でありながら、天然ボケが全てを台無しにしているミズホ姫は、レイにお供え物をさしだします。
「たんせい込めて栽培した特製茶葉から作りました、ミズホ特製ハーブティーでぇっす!」
「ぐはぁ!、こんなもの飲めないってば!」
 レイは怒りに任せて災厄をふりまきます。
「もう!っ、ミズホったら、お茶を出す時はまず私が毒見をするって、いつも言ってるでしょう!?」
「ふえええええん、ごめんなさいですぅ!」
 お母さんである王妃ヒカリに怒られるミズホ姫でしたが、時すでに遅し、そこで国王トウジは最後の切り札を持ちだしました。
「こらもう、あいつを差しだしてご機嫌取るしかあらへんなぁ」
 ばん!
 地下室の扉が開きます。
 びくっと、体をすくませる男の子。
「いやだぁああああ!、はなして、はなしてよぉ!」
「すまんなぁシンジ、これも世のため人のためや、我慢してくれや」
 ばたばたと両手両足をふりまわして抵抗を試みます。
「ぼくなんか差し出しても、レイの機嫌はおさまんないよぉ!」
「まあお前は人間と神様の間に生まれた半端もんやけどな、ええやんか、ごっつぅ美人の女神さまに好かれて、こーの幸せもんがぁ」
 っと額を小突く。
「ちっとも幸せじゃないよ、三度三度のご飯のたびに膨大な食事作らされる身になってよ」
「それはここにいても一緒やろが」
 レイがミズホに変っているだけだ。
「レイに比べりゃマシだもん」
「シンジ様ぁ、私そんなにたくさん食べてますかぁ?」
 うるうるとミズホ。
「い、いやそんなことは…」
 ここではっとする。
 もし、そんなことはないよといつもの逃げを打ったら?
 きっと良かったですぅと、下手すればおかずの増量を要求されるぞ!
 逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ!
「ひ、人よりちょっと多いかな?」
「そ、そんなぁ!、わたし牛じゃありませぇん!」
 よよよっと泣き崩れる。
「あ〜あ、泣かしよった、シンジぃ、もし女神のお怒りを鎮めへんかったら死刑や、どうする?」
「ひどいや、そんなの!」
「あーーーーー!、こんなところにいたぁ!!」
「れ、レイ!」
 シンジは脱兎のごとく逃げだそうとした。
「逃がさないわよ!、シンちゃんがご飯作ってくれるって言うから、お父さまのこと許したんですからね!」
 凄い形相のレイに立ちはだかるミズホ。
「だめですぅ、シンジ様は渡しませぇん!」
 ばちばちっと火花が散った。
「どいてよ、あたしは両親公認の仲なんだから」
「親なんて関係ありません、私なんてシンジ様と共に夜を過ごした仲なんですからぁ」
 ぽっと顔を赤らめる。
「なにそれ、シンちゃん!」
「はいっ!」
 こっそり逃げ出そうとしていたシンジは、気をつけと直立不動の体勢を取る。
「どういうことか説明してくれるかなぁ?」
「あああ、あのその、レイ、誤解だから、ね?、そんな恐い顔しないでって、うわぁ!」
 べしっと、トウジが投げ付けられた。
 壁にめり込んでいる。
「な、なんでわしが…」
「ごめんよ!、トウジ」
 かわりに謝って、そのまま逃げ出した。
「ああっ、シンちゃん!」
「シンジ様、どこへ行かれるのですかぁ!」
 シンジはもう、振り向かなかった。






「お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください」
 城から少し離れた場所、森の中にある湖の前にたつシンジ。
「思えば、短い人生だったなぁ…」
 生まれた時は人間と神様の間に生まれた子として、人間からは奇蹟を起こせ、神様からは役立たずと罵られていたのです…


「酷いや父さん!僕を売ったんだねっ」
「シンジ、世の中には大変理不尽なこともある、だが逃げてはいかんぞ」
 にやりとゲンドウ。
「わたしが言うのも何だが、レイも女神だけあってなかなかの美人だ、問題はない」
「あるよ!、レイっていったら通ったあとには便所草一本残らないって言われてる胃袋の神様じゃないか!」
「だーれーがぁ、胃袋の神様だってぇ?」
 シンジはどっと冷や汗が吹きだすのを感じた。
「れ、レイ!」
 どす黒いオーラを立ち上らせている。
「いーわよいーわよ、どうせあたしは暴飲暴食の神様ですよ〜だ」
 うつむく。
「ああああ、ごめんレイ、言い過ぎたよ、だから泣かないでよ!」
「いいもん、何でもかんでも食べちゃうもん、だからシンちゃんも食べちゃおうっと、いいでしょ?、お父さま」
「うむ、問題はない」
「あるよ!、意味が違うじゃないかぁ!」
 こうしてシンジは逃げだしてきたのだ。


「いたっ、シンジぃ!」
「うわ、トウジ!」
 シンジはあわてて湖に飛びこんだ。
「きゃああああああ!、シンちゃん!!」
 青ざめるレイ、ミズホは卒倒する。
「シンジ、短い人生やったなぁ」
「言ってる場合じゃないでしょ!、早く助けなきゃ」
「何やヒカリ、殴らんでもええやろ!、一応あれでも神様の血ひ〜とんのや、これぐらいで死ぬかいな…」
 しかしいつまでたっても上がってこない、額に汗がつたいだす。
「あ、見て!」
 ヒカリが湖から何かが浮いてくるのを見つけた。
「まさか…」
「どざえもん?」
「エンギでもないこといわないでよ!」
 静かだった湖面に細波をおこして、青白く光るものが浮かび上がってきた。
「なんや、何がおこっとるっちゅうねん」
 淡く光る湖、そこから現れたのは赤い髪をした女の子だった。
「あーーー!、アスカじゃないの!」
「レイ…、ちっ、めんどくさいのが居るわねぇ」
 アスカはそっと一人ごちる。
「まあいいわ、ほら」
 アスカの両脇に金と銀のシンジが現れる。
「あんた達が落っことしたのはどっち?」
「どっちも違いますぅ!」
「ふざけてないで、シンちゃんを返しなさいよ!」
 真っ赤になって怒るレイとミズホ。
「そうそう、ちゃいます、もっととぼけた冴えへんやつですわ」
「こんなに凛々しくないとおもう…」
 かなり個人的なイメージの入っている像だった。
 女神アスカのこめかみに青筋が浮かぶ。
「うっさいわねぇ、あたしの仕事に文句あるわけ?」
「いえいえ、滅相もあらへん」
「あ、そう、わかったわよほら、正直者にプレゼントぉ!」
 金銀、両方のシンジ。
「あぶな!」
 どすんっと、さり気なくトウジの頭上に落ちる。
「じゃ、御褒美はあげたから、じゃあね〜」
 呆気に取られている一同の前で、アスカは湖の中へと消えていった。
「じゃあねって…」
 冷や汗を流すヒカリ。
「ん、まあええやないか、もうかったし、めでたしめでたしや」
「めでたくありませぇーん!」
「そうよ、シンちゃん助けなきゃ!」
 レイとミズホが後を追って湖に飛び込んだ。
「ミズホ!」
 慌てるヒカリを、トウジが抑えた。
「ヒカリ、ほっとけ」
「でも!」
「女の子はいつか親もと離れてくもんや」
 ちょっと違うんじゃないかと思うヒカリ。
 その一連の様子を、木陰から見ている少年がいた。
「シンジ君、僕が助けてあげるからね」
 愛と美の化身、銀髪の髪を持つ神、カヲルだった。






「…って、ケンスケ何書いてんだよ」
 暇つぶしにネットにもぐり、ケンスケのページを開いているシンジ。
 ゲンドウはユイと共に「芝居を見に行く」と出ていった。
 レイはアスカのところだ、何か企んでいるのかもしれない。
「このお話は実在の人物、団体とは関係ありませんって…、思いっきりそのままじゃないか」
 第一次お弁当大戦で、レイが段ボール箱の自家製薫製器で作っていたベーコンを食べる。
「うん、いけてる」
 お弁当用に自分の手で作るのは良かったが、残った部分があまりにも多かった、今は碇家の冷蔵庫に眠っている。
 シンジはそれをおやつがわりにしていた。
「これって、アスカ悪者なのかなぁ?」
 なんだかんだ思いつつ、最後まで読んでみるシンジだった。




第八話

天にひとしい





「ねぇ、おきてよ、起きてってば」
 くすくすと耳元で囁く声。
 シンジはゆっくりと目蓋を開いた。
 ぼやけている視界に、覗きこんでいる赤い瞳。
「うわぁ!、レイ!」
 逃げ出そうとするシンジ。
「危ないよ?」
「うわっ!」
 ベッドから転がり落ちた。
「ほら、だから言ったのに」
 くすくすと笑ってる、シンジは落ちたショックで頭がはっきりした。
「レイ…、じゃない?」
 そっくりな女の子だった、だけどずっと小さい、5、6歳だろうか?
「起きたね?」
「じゃ、おばちゃんに言いに行かなきゃ」
 ぎょっとするシンジ、ちびレイが一人ではなく、10m四方の部屋一杯にいたからだ。
「ななななな、なんだよ、これ!」
「だれがおばちゃんよ!」
 ぽかっとちびレイを殴るアスカ。
 その子の白いシャツには、8と番号が打たれていた。
「驚いた?、レイの奴が嫌がらせに送ってきたのよね、でもシンジが来てくれるんなら送り返せばよかったかな…」
 シンジをうんうんっとベッドに押し戻そうとするちびレイ12〜16号。
「あ、アスカがなんでこんなところに居るんだよ!」
 ベッドの上に待避するシンジ。
「あら、何言ってるのよ、ここはあんたとあたしのために用意したスウィートルーム☆」
「え!?」
 女神アスカも、レイの同類だった。
 血の気が引くシンジ。
「そうっ!、ここがあたしたちの愛の巣になるのよ、さあシンジ、子供は男の子にしましょうね!」
「うわあああああああ、誰かたすけてよーーーーー!」


 シンジの叫びは別世界で発せられた、当然それを聞くものはいない…、はずだったのだが、極彩色のトンネルを走る少女には聞こえていた。
「まっずーい、アスカったら無理矢理シンちゃんをモノにするつもりだわ!」
「ものって、どういうことですかぁ!」
 青ざめるミズホ。
 レイはちびレイに状況を伝えるよう命令していた。
 ただちびレイが幼すぎたため、「レイ、恐がってる」、「アスカ押し倒した」、「服ぬいでる」などと、妄想が膨らむ報告しか送ってこない。
「…って、どうしてミズホがここにいるのよ!」
「そんなことはどうでも良いんですぅ、それよりシンジ様がどうなさったんですかぁ!」
「どうって、その…」
 何故か赤くなるレイ。
「あう〜〜〜!」
 その表情でどういうことか察するミズホ。
「とにかく急がなきゃ!」
 トンネルを駆け抜ける、その先に黄金色の光が見えた。
 二人は迷うことなく飛び込んだ。







[BACK][TOP][NEXT]



新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
内容の一部及び全部の引用・転載・加筆その他の行為には
作者である私と原作者naryさんの許可または承認が必要です、ご了承ください。



本元Genesis Qへ>Genesis Q