NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':100 


「だぁかぁらぁ、誤解なんだってばぁ!」
 壁際に追い詰められ、シンジは泣き笑いの顔で弁解を試みた。
 しかし感情的になった彼女には通じない。
「どっかの女と喫茶店に入ったんでしょうが!?」
「う…」
「それは事実、事実ですぅ〜」
 ひらひらと舞うミズホ。
「シンちゃん、楽になろうよ」
 ポンと肩に手を置く、しかし目は笑っていない。
「だぁかぁらぁ!、僕はただ、頼まれただけで」
「デートしようって?」
「ばかシンジぃ!」
「お願いだから、僕の話をちゃんと聞いてよぉ!」
 シンジの悲鳴がこだました。


Neon Genesis
EvangelionGenesisQ'100
「ハーフな分だけ」


「男ですってぇ?」
「うん…」
 ズタボロになりながらもどうやら言い訳に成功した模様である。
 …顔が腫れているのは、いまいち満足のしてもらえる返答が出来なかったためだろう。
「で、その女ってのは誰よ?」
「…秋月さん」
「だから誰なのよ!?」
「会ったことあるだろう!?、…なかったっけ?」
 アスカはちょっと首を捻った。
 代わりに「あっ」っと小さく漏らしたのはレイである。
「もしかして、ミヤ?」
「うん…」
 急に真面目な顔つきになる。
「シンちゃん、ミヤに会ってたの?」
 その言葉に含まれる微妙な物に、ぴくっとアスカが反応を示す。
「…この街には結構自由に遊びに来られるって、言ってた」
「ふぅん…」
「ちょっとぉ…」
 不安げにアスカ。
 二人だけに通じているのが不満なのだ。
「だからミヤって誰よ?」
「あーーー!」
 突然叫びを上げるミズホ。
「な、なに!?」
「ミヤって、あのシンジ様の唇を奪っていった…」
「なんですってぇ!」
「ひっ!」
「シンジ!」
「はい!」
「あんたまた懲りずに!」
「だから違うって、そんなのじゃなくて…、それにもうずっと前のことじゃないかぁ!」
 いまいちアスカの記憶の中では結像しないらしい。
 よって勝手な想像に基づく現在進行形の妄想が浮かび続ける。
「キスしたのねぇ!」
 再び首を締められ、シンジの口から泡が吹き始める。
「殺さないようにねぇ
 思い出したのだろう、レイのこめかみもひくついている。
「でも、ミヤがねぇ…」
 レイは遠くに居るはずの貧乳友達を思い、ほろりと涙を流した。
「そんなに切羽詰まってたんだ」
「いいえ!、そんなはずはありません!!」
「ミズホ?」
 ふんふんと鼻息荒くいきり立っている。
「これは陰謀に決まっていますぅ!」
「陰謀?」
「はいですぅ」
 こくこくと頷く。
「どんな陰謀?」
「それはですねぇ?、別の男の子とくっつく振りをして、シンジ様に焼き餅を妬かせると言う…」
「ふぅん…、じゃあミズホも試してみる?」
「わたしの愛はいつもシンジ様に届いてますからぁ」
「あ、そう…」
 げんなりとするレイ。
「それはともかくとして」
「棚の上に置かないでくださぁい!」
 ジタバタと暴れる。
「シンちゃん、どうするつもりなの?」
「どうって…、なにがさ?」
 けほけほと咳き込みながら喉をさすっている。
「あんたバカぁ!?、紹介しろって頼まれたんでしょうが!」
「あ、そ、その話し?」
(その前に、手、離してくれないかなぁ…)
 だが今のアスカには抗えない。
 首から離したものの、相変わらず胸元は掴まれている。
「とりあえず、さ」
 シンジは脅えるように案を語る。
「ケンスケに頼んでおいたけど…」
「相田ぁ!?」
 すっとんきょうな声が上がった。
「…シンちゃん、ムチャするねぇ?」
「秋月さんが可哀想ですぅ」
「な、なんでさ…」
 あんまりと言えばあんまりな信用度にシンジは引いた。
「あんたねぇ?、相田と付き合うようになったら…、うう、想像するだけで鳥肌が立つわ」
「相田君、オタク入ってるもんねぇ?」
「エッチですぅ」
(ケンスケって…)
 親友に対する余りの認識に、つい同情から涙がこぼれ落ちてしまう。
「って、そうじゃなくてさ」
「なによ?」
 誤解を解くシンジ。
「ケンスケに適当な人がいないかって探してもらうことにしただけだよ」
「ふぅん…」
 ようやくアスカはシンジを解放した。
「よかったわ、あんたが友達に売るような奴じゃなくて」
(ケンスケ、ごめん…)
 シンジはケンスケの名誉回復を諦めた。
 もちろん自分の身が可愛いからだ。
「でも大丈夫なんでしょうねぇ?」
「なにがさ?」
「あんたねぇ」
 呆れた、と思いっきり顔に出された。
「上手くいくならいいわよ?、でもね、それで何か行き違いがあったら、あんたにも責任がかかって来るのよ?」
「え?、どうして…」
 ほんとに分かってないの?、と目を覗き込まれる。
「言うほど良い子じゃない、良い奴じゃないって事になったら、仲介したあんたの責任になるのよ?、ちゃんと相手のこと、調べてくれたのかってね?」
「あ…」
 シンジはようやく気が付いた。
 ミヤのことなら知っている…、と言えなくも無い。
 例え正体を護魔化すような上辺の付き合いであったとしても、仲良くなれたのは事実なのだ。
(悪い子じゃ…、ないよな?)
 それは直感に近い、そこまではいい、しかし…
 紹介すべき男の方にまでは責任が持てない。
「どうしよう…」
 青い顔をして、情けなくこぼす。
「どうしようじゃないわよ、ほんとにバカね?」
 アスカは肩をすくめて嘆息した。






「ふんふんふん♪」
 第三新東京市の外苑、新興住宅地にあるマンションの一室から、妙に軽快な鼻歌が漏れ聞こえていた。
 床一面には洋服が足の踏み場も無く散らかっている。
 たんっとギリギリ確保された足場を、踊る様に跳ね飛ぶ素足。
「ご機嫌ね?」
 ガサガサとビニール袋の音をさせて帰って来たのは黒髪の女性。
「サヨコ」
 うっと胸に服を合わせたまま、ミヤは気まずそうに固まった。
「あまり広げてると後が大変よ?」
「はぁい」
 スーパーから戻って来たサヨコは、ミヤの部屋をざっと眺めるように覗いた。
「随分と揃えたのねぇ?」
 一着二着ではない、下手をすると数十着は広げられている。
 ここへ『転居』して来た時には、バッグ一つ程度の荷物しか無かったはずなのだ。
「いいじゃない、服なんてめったに見られないんだもん」
「そうね」
 サヨコは柔らかに微笑んだ。
 いつも閉じ込められている様な狭い場所に居る。
 そのため趣味に合った服を買いに出られる機会などほとんど無きに等しい。
『施設』の売店で揃えられる物には大した物は無いのだ。
「そう言うサヨコだって、それ、新しいのでしょ?」
「ええ」
 ミヤの羨ましげな視線に苦笑を見せる。
 目線が胸に注がれていたからだ。
 少し胸元が大きく開いた袖なしの服は、驚異的な胸の膨らみを横側から見せつけていた。
(脇から胸が見えてるって)
 肉がはみ出すように、はちきれそうに。
 ミヤは自分の胸に視線を落として寂しくなった。
 ついサヨコの膨らみを手で再現してしまう。
「うう…、どうして?、同じ物食べてるのに」
「何か言った?」
「なんでもぉ」
 と護魔化す。
 真面目に話すと悲しくなるからだ。
「で、シンジ君に電話してみたの?」
 サヨコは冷蔵庫に物を移しながら尋ねた。
「ええ、写真を送ってくれって、それで悪いんだけどぉ」
「なにかしら?」
 エプロンを着け、髪をまとめる。
「後で写真撮ってくれない?」
「ああ…、それで散らかしてたのね?」
 サヨコは仕方が無いわねぇと苦笑した。
「そんなに男の子と付き合いたいの?」
「サヨコには分かんないのよ!、…あっちでもモテモテじゃない」
 施設でのことを言う。
 気立てが良く、物腰も柔らかく、気の付く美人。
 研究者達の間でも、アイドルとして通っている。
 だが彼女は気が付いていないようで…
「そうでもないわよ?、みなさんお茶を飲みに来て下さるだけだから」
「あ、そう」
 不機嫌そうにそっぽを向く。
(やっぱシンジ君もそうだし、もてる奴ってのは鈍く出来てるのね)
 ちやほやされるがゆえに、感覚が麻痺してしまっているのだろう。
「おかしな子」
 サヨコはぶちぶちと呟くミヤの背中に小首を傾げた。
「それで、服はもう選んだの?」
「これにしようかなぁって、どう?」
 ノースリーブのシャツに、短めのスカートの組み合わせ。
「そうねぇ、それも悪くは無いけど」
 サヨコは長めのスカートに普通のブラウスと、さらに上着を選び出した。
「こちらの方が合うんじゃないかしら?」
「…どうしてサヨコって、胸が隠せるように組み合わせを選ぶの?」
 ミヤはちょっとだけ、涙ぐんで訴えた。
 これもまた、サヨコには余り伝わらなかったようである。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
内容の一部及び全部の引用・転載・加筆その他の行為には
作者である私と原作者naryさんの許可または承認が必要です、ご了承ください。

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