前回までのあらすじ


 真実の愛を求めて旅立ったレイちゃんは、ついに死闘の末、にっくき魔女ミズホを倒しました。
「シンちゃん…、大丈夫?、シンちゃん!?」
「あ、レイ…」
「ごめん、あたしのせいで、こんな!」
「何言ってんだよ、レイは僕を助けようとしてくれたんじゃないか…」
「こんなあたしのことなんて、嫌いになったでしょう!?」
「バカ!、そんなわけないだろう!?」
 それより一緒にお月見しようよ、今日はちょうど良い満月だよ?
 ああ、この一瞬が長く長く、永遠のものになればいいのに…
 しかし平和はそう長く続かなかったのです。
「バカシンジィ!」
 愛の一時を邪魔せんと、深き眠りより目覚めた大魔獣アスカ!
 そして二人は再び戦いの彼方に…、果たして愛し合う二人に安息の日は来ないのでしょうか?
「あんたね?」
「はい?」
でたらめつづってないで、ちゃんと質問に答えなさいよ!
 ビリビリビリビリビリ…
 鳴り響くのはアスカの怒声。
「耳痛い…」
 一方その頃ミズホはと言えば…
「むにゃむにゃむにゃ」
 眠っていた。



GenesisQ’38話
「星くずパラダイス2」



ほげーーーー!
 朝。
 気持ちの良い朝。
 その朝はミズホの驚きによって破壊された。
「な、なに!?」
 慌て飛び起きるシンジ、見るとミズホがわなわなと震えていた。
「み、ミズホか…、どうしたのさ、一体?」
「どうした、じゃありませぇん!、シンジ様、何をなさってるんですかぁ!?」
「な、なにって…」
 ミズホの目線が忙しなくシンジの左右に動いている。
 それに気がついて、シンジは自分の両隣を見た。
「え!?」
 そこに丸くなっているのはアスカとレイ。
「あ、いや、これは…」
「どうしてわたしだけ仲間はずれなんですかぁ!」
「ええ!?、違うよ、誤解だよ!」
「誤解じゃありませぇん!」
 とぉえいっと、ミズホは敷布団を三人の下から引き抜いた。
「え?、なに!」
「「きゃあ!」」
 ゴロンと転がる三人。
「ささ、シンジ様!」
 いそいそと布団を敷き直し、その中に潜り込む。
「さあ、おいでください☆」
 おいでくださいって…
 ドギマギするシンジを押しのける。
「きゃっじゃないでしょ、きゃっ☆じゃ!」
「そうよ!、シンちゃんはあたしと…」
 …顔洗ってこよう。
 シンジが居なくなったのも気付かずに、三人による布団の取り合いは、しばし続いてしまうのであった。






「それで今日は遅刻寸前だったのかい?」
 にこにことたたずむカヲルに、シンジは机に突っ伏したままで頷いた。
「母さんも止めないで煽るもんだから…、いつまでたっても出られなくてさ…」
「ふうん、それより僕は、どうして二人がシンジ君と寝ていたのか?、そっちの方に興味があるんだけどね?」
 シンジの頭のすぐ隣、机の上に座り込む。
 ちょっと汗ばんでしまったシンジの頭を優しく撫でる。
きゃあああ!、フケツよぉ!!
 そんなカヲルをマナはドンッと激しく思いっきり突き飛ばした。
「シンちゃんを変な道に誘い込まないでぇ〜〜〜、なんてね?」
「君は冗談でこんなことをするのかい?」
 顔面から床に落ちているカヲル。
「だってカヲル君って、それぐらいなら平気そうだしぃ」
「ふ、僕が君の舞台の主役だということぐらいは、覚えておいてもらいものだね?」
「そんなこと言ってる間に、顔の傷消えてるじゃない、汚れてもいないし」
「いつも奇麗な僕を見ていてもらいたいから、ね?、シンジ君」
「あ…、なに?、ごめん、聞いてなかった」
 ついでに見てもいなかった。
 るるーっと黄昏るカヲル。
「ふふふ…、男心を弄ぶ、シンジ君、君は罪な人だよ、ほんとにね?」
「はぁ?」
「でも僕はそんな君にラブラブなのさ」
 ていっ!
 ガスッと、そのカヲルの顔面にマナの鉄拳が炸裂する。
 カヲル轟沈。
「とにかく!、朝できなかった分はお昼休みにやるからそのつもりでね!」
「え〜、お昼はどうするのさぁ?」
「早弁でもなんでもしとくの!、もう!、自分はテレビに出ちゃってるから試験免除だって余裕かましちゃって…」
「いや、全然そんなつもりは無いんだけど…」
「当ったり前!、冗談だってば!!、とにかく付き合ってよね、「あたしのために」」
「はあ…、わかったよ」
 マナ、何だか楽しそうだなぁ…
 上機嫌で離れていく。
 シンジはちょっと、憂鬱だった。






「あんたもバカねぇ、シンジに聞いたからってどうなるもんでも無いでしょうが」
「だって、聞けってお父様が…」
 シンジと同じように突っ伏すレイ。
 だがその意味合いはずいぶんと違っている。
 レイは…、どうなのさ。
 レイがしたいようにすればいいよ、僕は…、応援するから。
 シンちゃんの答え、か…
 どっちとも取れる答えだった。
「応援するって…、頑張れって事なのかなぁ?」
「どっちかってぇと、気が進まないって感じだったけどね?」
 やっぱりそう思うよねぇ…
 うだうだとレイは転がった。
「あの…」
 遠慮がちに声を掛けて来たのはマユミだ。
「レイ、どうかしたんですか?」
「ああ、こいつね…」
 ちらりと見るが、制止は来ない。
「プロにならないかって話しが来ちゃってんのよ」
なんだってぇ!
 ガラッと開いた窓の外には…
「鰯水!、あんたそんなとこでなにやってんのよ!」
「そんなことはどうでも良いんです!、レイさん、それは本当なんですか!」
「あ〜、うん、一応ねぇ…」
 腕を組んで、顔を埋める。
「おめでとうございます!、そりゃ絶対受けるべきですよ!」
「一応おまけなんだけどなぁ、その話しは…」
「え?、おまけ、ですか?」
 怪訝そうな鰯水に、アスカが代わって答えを返す。
「ほら、ローカルだけどアイドルしちゃってるじゃない?、だからこいつに、アイドル専科にクラス替えしろってね、校長先生から…」
 なにぃ!?
 焦ったのはクラスの男子生徒だ。
 まずい!、もうすぐ夏!、夏と言えば水泳!、その後には体育祭、応援するのはチアガール!、文化祭には綾波さんの…
「頑張ってね?」
 にっこりと…、ああ!、それがぜんぶ夢?、夢になるのか!?
 聞き耳が一気に集中する。
「ん〜、シンちゃんと一緒のクラスになるのはいいんだけどぉ…」
「なによ?」
「別にアイドルなんてしたくないしぃ」
 うんうんと一斉に頷いている。
「なに言ってんですか!、パーッと写真集で盛り上げて、その後は一気にCDデビュー!、ぐんと知名度高まって、後は転がるように」
 ヘアヌード!
 何故かクラス全員の頭の中で同じ単語が大写しになっていた。
「なに鼻の下伸ばしてんのよ?」
 はっと我に返る鰯水。
「これは失敬…、とーにかく!、アイドルですよアイドル!、華やかなりしかな芸能界!」
「めんどくさぁい」
 レイは興味なさげに、くぐもった声を出す。
「な、なにがですか!、だって」
 はたと止まる。
「碇…、シンジですか?」
 ピクリと言う反応に、鰯水はやはり原因はそれかと察した。
「あいつがやめとけって言ったんですね!」
 なんてやつ!
 男子の8割が拳を握る。
「違うわよ、あのバカ、やるんなら応援するってさ」
「あ、じゃあなんで…」
「お金結構たまったしぃ、もうバイトする必要も無いし…」
 レイを見る、が、レイは今だに顔を上げない。
「シンちゃんが居ないとこで頑張ってもしようがないし…」
「でも…」
 口をはさむのはマユミだ。
「でも、レイがやりたいのなら、碇君は関係無いと思います」
「マユミ?」
「ぶらぼー!、良く言ったね、君!」
 マユミは余計な事を言ったかな?っと暗くなる、しかし…
「碇君は好きな事をしているのに、レイばっかり縛られてるなんて、そんなの不公平だと思います…」
 動き出した口は止まらない。
「好き…と言うのと、束縛されることは違うと思います」
 だがレイの答えは違っていた。
「側に居ようと思うのって、悪い事なの?」
「え?」
 マユミはきょとんとレイを見返した。
「だめだめ!、ずっと側に居てもらいたいんなら簡単だもん」
 ね?っと、レイはアスカを見上げた。
「…おでこに皺が付いてるわよ?」
「う…、じゃなくて!」
「はいはい、冗談じゃなくて、本気で言えばいいのよね?」
「ずっと一緒に居て欲しいって、きっとシンちゃん…」
 何を想像したのやら?、またレイは赤くなって伏せってしまった。
 顔を隠して、照れている。
「そんなに…、碇君が良いんですか?」
 そのまま、コクリと頷くレイ。
「シンジはともかく、あんたがシンジにベタ惚れだもんね?」
 アスカは軽く肩をすくめた。
「まあ無駄よ無駄、シンジ抜きにこいつが動くはず無いんだからさ」
「そんなことないけど、でも…」
「でも?」
 遠くなるのは、嫌だなぁ…
 それがレイの、本音であった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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