「だから違うって言ってるじゃない!」
「信じらんない!、碇君ってあんな人だったのね!」
ヒカリは言外に、なぜ今まで隠していたのだと責めている。
「あれは…」
「フケツよ!、いくらやましいからって隠すなんて」
学校の正面玄関での言い争い。
「こら!、恥ずかしがってないで、あんた達もこっちに来て弁解しなさいよ!」
「嫌よぉ…、恥ずかしいし」
「ですぅ」
そそくさと通り過ぎようとする二人。
「だぁ!、誰のせいでこんな事になってると思ってんのよ!、あんた達は!!」
アスカが大声を張り上げているのにも理由がある。
だってしょうがないじゃない!、朝のあれ、みんなに見られちゃってたんだから!
誤解を解いておかないとまずい。
このままじゃ、どんな噂が広まっちゃうか…
「惣流さぁん…」
「こういう奴が多いんだから…」
アスカは呪うような鰯水の声に、うわちゃーっと顔を手の平で被ってしまった。
GenesisQ’43話
「星くずパラダイス7」
噂の真相、そのいち。
マナの場合。
「あーれーはぁ、そぉ♪」
夕べの出来事だったわと、適当なフレーズを付けて歌うマナ。
ちなみに場所はマイクラスの教壇の上。
「シンちゃん…」
マナはシンジの腕の中で瞳を閉じた。
きつい包容、でも嫌じゃない、一つの布団の中…
シンちゃん優しく荒くして!
マナは恍惚として目を閉じていた。
「シンちゃんはぐわばっとあたしの上に覆い被さり、そして熱い口付けの後に…」
やだもうシンちゃんってば!
マナは一人でくねくねと踊っている。
机の上に居るので、スカートが広がって中が見えそうになっている。
『おお!』
どよめきと共に群がる男子生徒。
「げっひーん」
みんな女子のひんしゅくを買ってしまうが、その程度でくじけてはいられない。
なにしろこのクラスには、碇シンジの他に渚カヲルと言う、絶望的な壁が存在しているのだ。
「シンちゃんがいつものシンちゃんじゃないのぉ☆」
マナの暴走も、終わりは見えないままに続いていた。
そのに。
レイの場合。
「あの…、レイさん」
「なに?、改まっちゃって…」
マユミは悔いるようにうつむいた。
声、かけなきゃ良かった…
でも真相を突き止めたい、マユミは誘惑に勝てなかった。
「あの、夕べ、マナが碇君のうちに泊まったって…」
意を決して、尋ねてみる。
「うん、昨日は大変だったけど…」
え!?
マユミはそんなレイの表情に目を丸くした。
どうして頬を染めるの?
理由は思い至らないが、妙に頬の辺りをさすっているのが気にかかる。
「レイさん、ひょっとして…」
「え?」
「碇君と…」
「……」
レイは答えずにそっぽを向いて、頬杖をついた。
。
はっきり言って、らしくない。
だって言いたくないもん…
夕べのキス。
驚きと戸惑いに、レイは目を丸くする事しかできなかった。
でも…
されたことは分かったから、はっきり言って腰が抜けたようにへたり込んでしまったのだった。
「シンちゃん…」
遠くを見るような目をして、ぽそりと呟くレイ。
やっぱり!
マユミはばっと踵を返して駆け出していってしまった。
そのさん。
ミズホの場合。
窓辺にたたずむ美少女というのは美しい。
特に朝日の中、心ここにあらずと言った感じで、外の景色に目を奪われている様子は言葉にも言い表せない。
今日は何があったのか?、珍しくメガネを掛けわすれている。
信濃って…
あんなに可愛かったのか?と、幾人かが盗み見ている。
そんなだから、皆ミズホのおかしな点に気がついていた。
「シンジ様ぁ、はふ〜んですぅ」
良く見ると目つきが危ない、血走っている。
ついでに目の下にはくまがある、そのわりに頬はつやつや…、いや、てかてかと光っていた。
上の空で、ぶつぶつと何事かを呟き、時折シンジの名を口にしている。
『くっ!』
血涙を流す男達。
もちろん邪推であることは言うまでもない。
そのよん。
カヲル場合。
「ふんふんふん♪」
上機嫌で門回りの植木に水を撒いているユイ。
「あら?、カヲルくんに良く似た植木ね?」
「しくしくしく…」
植木に並んで転がっているカヲル。
「ま、泣き声もそっくり☆」
天然か、わざとかはともかくとして、ユイは「さ、これでお終い」っと家の中に戻ってしまった。
そのご。
アスカの場合。
「ね、あたし達、親友よね?」
涙目でお願いのポーズを取るヒカリ。
「あーうー」
困り果てているのはアスカだ。
「全部話して、嘘なんてつかないで」
「だーかーらー…」
アスカは幾度かくり返した話を、再び「教室で」くり返してしまった。
「シンジ様、ささ…」
「って、なに手を引いてるのよ!」
アスカは自室へ引き込もうとするミズホから、強引にシンジを奪い返した。
「ずるいですぅ!」
「って何がよ!」
「アスカだって同じことするつもりじゃない!」
「アスカって、そう言う人なんだぁ…」
はっとするアスカ。
シンジが背後から抱きつき、頬をすりすりと寄せている。
「ち、違うわよ!」
「説得力無い!、シンちゃん!!」
そのシンジに、背後から抱きつくレイ。
「落ちつこ?、ね?」
「って、あんたも何処へ連れてく気よ!」
レイも同じように部屋に連れ込もうとする。
「あんたも結局同じじゃない!」
「違うもん!、シンちゃんが正気に戻ってくれるまでかくまってあげるだけだもん!」
「二人っきりの密室で?」
マナの鋭い突っ込みに唸るレイ。
「不潔ですぅ!」
「って、あんたが言うんじゃ…、きゃあああああ!」
アスカは自分の胸を抱きかかえてしゃがみこんだ。
「なんや?」
「シンジがブラのホック外したんだよ」
「って、解説するなぁ!」
ブン!
アスカは高さ50センチはあるようなスピーカーを、ケンスケめがけて投げ付けた。
ガスン!っと壁が陥没する。
「あ、あぶ…」
腰を抜かすケンスケ。
「命拾いしたのぉ…」
「離せって言ってんでしょうが、こんちくしょー!」
ガスガスとシンジを蹴飛ばすアスカ。
シンジに抱きつかれたために、狙いが外れてしまったのだ。
「こわぁ…って、わかってたけど」
「アスカって、敵と判断したらほんとに容赦ないわね?」
「切れ方が普通じゃありませぇん」
勝手な事を言う三人。
「誰のせいだと思ってんのよ、あんた達は!」
シンジを踏み付け、ぜぇはぁと荒い息をつく。
ようやくシンジの動きを縫い止めた。
しかしどうも所有権を主張しているというか、まるで奴隷を虐げているような感じにもなっている。
「さてと」
不意に立ち上がるリツコ。
「ありがとう、実に面白いデータが録れたわ?」
「って、あんた一体何しに来たのよ!」
つかみ掛ろうとする、その隙を突いてシンジは抜け出した。
「アスカァ!」
そのまま組み伏せようと…、違った。
「もっと僕にかまってよぉ!」
「ちょちょ、ちょっと、きゃ!」
今度こそ押し倒される。
「「おお!」」
懲りずに乗り出すケンスケとトウジ。
「アスカー!」
泣きじゃくるような顔ですがってくる。
「ちょっとぉ…」
さすがのアスカも、そのシンジの表情に無下できなかった。
「いいなぁ…」
人差し指をしゃぶるレイ。
「じゃなくて!、なに不安がってんのよ、あんたは!」
「シンジ様ぁ、ささ、泣くのならこのお膝に…」
「うん!」
「って、あんたねぇ!」
アスカをほっぽり出して、シンジは正座したミズホの膝に顔を埋めた。
「ミズホ、母さんみたいだ…」
す〜、はぁと息をするシンジ。
「そうですかぁ?」
「うん…」
ミズホに髪を撫で付けてもらい、シンジはほわんと顔を緩めた。
「シンちゃん…」
レイは複雑な目を向けている。
「ねえレイ?、今のシンちゃんって…」
「うん、普段押さえてた物が吹き出してるって…」
これもシンジ君?
マナも同じことを考えている。
「どうも精神状態が安定していないみたいね?」
「ちょっと、帰る前にどういう事か説明していきなさいよ!」
アスカはリツコに怒鳴っていた。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'はGenesis Qのnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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