「おはよ、シーンちゃん☆」
 席についたシンジの真正面に立つマナ。
「どう?、プレゼント、気に入ってくれたかなぁ?」
 その言葉に、シンジはキョトンとしてしまった。
「え?、くれてたんだ…」
「ひっどぉい!」
 ブウッと膨れて、マナはシンジの机に噛り付いた。
「けっこう悩んだんだよ?、あれ…」
「ごめん…、数が多くてさ、まだ全部は見てないんだ…」
 シンジは心から頭を下げた。
 その態度に、一応の確認だけを行うマナ。
「…みんなのは?」
「え?」
「アスカたちの!、見たんでしょ?、いいなぁ…、みんなは特別で…」
 すねたように、口を尖らせる。
「いや、あの…」
 困っているシンジに、カヲルは優しく助け船を出してあげた。
「どうしたんだい?、ここは正直に話すべきさ…」
「うん…」
 マナはなんだろう?、と首を傾げている。
「…実はまだアスカのを見てないんだ」
「えええ!?、どうして!」
 マナは必要以上に驚いた。
「ど、どうしてって…、特に理由は無いんだけど」
 それがますます驚きとなってしまう。
「うっそぉ!、だってアスカのでしょ?、レイとかじゃなくて…」
「おや?、どうしてアスカちゃんなら問題になるんだい?」
 マナははっきりと胸を張って威張って答えた。
「だって、アスカのプレゼントを真っ先に開けないなんて、そんなの寿命縮めてるようなもんじゃない!」
 僕とアスカの関係って一体…
 どう認識されているのか、聞きたくても問いただせないシンジであった。



Neon Genesis Evangelion GENESIS Q’45
星くずパラダイス9



「じゃあ、レイは碇君に直接…」
 控え目な質問を投げかけているのはマユミであった。
「うん、…あ、そっか、直接じゃない方がポイント高かったかも」
 頭の中に妄想が広がっていくレイ。
 誰だろう、こんな高い物をプレゼントしてくれるなんて…、あ、カードだ。
 シンちゃんへ…
 レイじゃないか。
「あ、あの、レイ?」
 この辺りでレイの口元からよだれが垂れ始める。
 困るよなぁ、こんなの…、もったいなくてどうしたらいいんだろう?
 でも…
 でも…、いいや、お返しで頑張ろう。
「お返し…」
 ジュルッとよだれをすするレイ。
 碇君…
 キュッと、人知れず拳を固めるマユミ。
 でも、レイが好きなら、しょうがないのかなぁ…
 その拳をまた人知れずゆるめたのも、マユミである。
「まったく、面白いカップルよね?」
 ぽかんとレイは叩かれて、はっと一気に正気に返った。
「アスカ…、なに?」
「あんた忘れてんじゃないでしょうね?」
「…なんだっけ?」
 アスカはすうっと息を呑んでから、はああああっと、深く深くため息をついた。
「これよこれ!、賭けのこと、忘れたの?」
 ついさっきレイを叩いたものを突きつける。
「そっか、テスト…」
「そうよ!」
 それは答案用紙を丸めた物だった。
「今週末のデートがかかってるんですからね!」
「え?、なに?、聞こえなかったんだけど…」
デートよ、デート!」
「え〜、なんですかぁ?、聞こえませぇん」
 こいつ…
 じろりと睨み付けるアスカ。
 にたにたと嫌らしくほくそ笑むレイ。
「ごめんねアスカ、今回だけはっずえーーーーったいに、譲りたくないの、わかって?」
「わかりたくないわよ、そんなの!」
「え〜〜〜?、じゃあ仕方が無いなぁ…、はいこれ」
 レイはポンッとつい先程返って来たばかりの答案用紙を手渡した。
「まったく、素直に渡しなさいよね、ほんと…、う!」
 アスカは我が目を疑った。
「マジ?」
「やればやる時やらねばねってね?、あたしだって頑張る時は頑張るもん!」
 アスカより『5点』も上回っている。
 問題としてはたったの一問の差なのだが…
 くっ!、よもやこのあたしが英語で遅れを取るなんて…
 そしてその頃ミズホはと言えば、返って来た数学の答案用紙を前に、机の上でごろごろと転がっていた。


 はうう〜…
 ふきゅう。
 うみゅう…
 多少眼鏡が邪魔なようである。
 はううううう、はう!
 その丸い眼が何かを見付けた。
 ここ、採点間違ってますぅ!
 神様、ありがとうございますぅ。
 ミズホは天にも昇る気持ちで、天井に向かって感謝していた。






 わいわいがやがやがや…
 今日は休み時間毎に、シンジの周りに人だかりが出来ていた。
「それでね碇君、あたしの上げたペンダント見てくれた?」
 シンジはマナの時と同じように頭を下げた。
「ごめん…、まだ全部は開けてないんだ」
「えーーー!、どうしてぇ?」
「それってやっぱり、隠れて開けなくちゃいけないから?」
 みんな碇家の事情は知っている。
 いや、知っていると言うより、垂れ流されていると言った方が正しい。
 ケンスケ…
 シンジは汗を一筋流して困りまくった。
「そんなことはないけど…、ほら、多くてさ…」
 シンジはほんとに困ってうつむいてしまった。
「…適当に整理するわけにも、いかないと思うし」
「へえ〜、優しいんだ、碇君って」
「え?」
 シンジはキョトンと顔を上げた。
 それに困ったのは、女の子の方だった。
「え?、なに?」
「あ、ううん、なんでもないんだ…」
 シンジはちょっと考え込んだ。
 優しい?
 そんなので優しいって事になるの?
 シンジには今ひとつ理解できない。
「でも…」
「ん?」
「なになに?」
 シンジの言葉尻をつかもうと、一人の女の子がシンジの顔を覗き込だ。
 ふっくらとした頬とくりっとした目、それにさらっとした長い黒髪と好奇心丸出しの無警戒な笑顔がシンジに迫る。
「あの…」
「え?」
「ごめん…」
 シンジは赤くなってうつむいてしまった。
「あーー、碇君照れてる、かっわいー!」
 きゃーきゃーとみんなではしゃぐ。
 恥ずかしいよなぁ…
 シンジはどうした物だか困っていた。






「…突然呼び出して悪かったな?」
「いえ、ちょっと困ってましたから…」
 シンジは加持に手渡された湯呑みの中の液体に戸惑った。
「なんですか?、これは…」
「ん?、スイカ汁さ、うまいぞ?」
 う、うまいって言われたって…
 どうしたものだか困ってしまう。
「…それで、今日はなんの用なんですか?」
 加持も応接セットに一緒に座った。
「レイちゃんの編入が明日に決まった」
「明日…、急ですね?」
「知らないのか?、今週末にちょっとあるんだよ、特番が」
「ああ、それで…」
 シンジは一口含んでみた。
 ポカリスウェットみたいだ…
 もうちょっと薄くしてもらえないかな?、っとちょっと悩む。
「自分のクラスの紹介があるかもしれない、その時に普通科ではまずいんだよ」
 シンジはその都合で振り回すような物言いに反感を覚えた。
「でもだからって…、もう馴染んでる時間なんてないじゃないですか…」
 加持はいきなり身を乗り出した。
「だからだ、君に頼みたんだよな?」
「僕に、ですか?」
 加持は数枚のプロマイド写真をテーブルの上にばらまいた。
「これは?」
「渚君、霧島さん、栗栖くん、みんなシンジ君の友達だったな?」
「まあ、そうですけど…」
 シンジは意図を尋ねようと、上目使いに恐る恐る見上げた。
 にまっと、嫌な笑みを浮かべている加持。
「このとおりだ!、とりあえず先頭に立って口裏を合わせてくれるよう、頼んでおいちゃくれないか?」
「ええー!、ぼ、僕がですかぁ!?」
 シンジは半ば後ずさるように腰を浮かしていた。
「すまん!、さくらを雇うにも人選してる暇が無いんだ」
「でもだからって、僕に任せるなんて間違ってます、無理ですよ!」
 シンジは半分泣き笑いで拒否しようとした。
「しかしな、君自身は気付いていないかもしれないが、君の持っている人脈は大変な物なんだ」
「でも…」
「それに気付いてくれ!、頼む、このとおりだから…」
 加持は思いっきり頭を下げた。
 …はぁ。
「わかりました」
 シンジは諦めたように口にした。
「すまない!、この借りはその内に返すから…」
「いいですよ、別に…」
 シンジはスイカ汁を飲み切って立ち上がった。
「…自棄になってるのか?」
「違いますよ…」
 シンジはくっと顎を引いた。
「レイのためになるんですよね、全部…」
 一瞬、ほんの一瞬だったが、加持はそのシンジの目に、息を呑まれてしまっていた。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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