「碇氏はどこに?」
 ナカザキ高志はゲンドウを探して、ドームのVIPルームへ歩んでいた。
 ココンっと軽くノックする。
「失礼します」
 入室してから言葉を述べる、防音の為にそうしなければいけないのだ。
 ここへ来るまでの間にチェックを受けている為、室内にはわりとすんなり通してもらえた。
 ゴク…
 ゆっくりと振り返る男に威圧される。
「かけたまえ」
「はい!」
 多少上擦った声が出てしまったが、しかしそれにも気がつかないほどの緊張感を味わっていた。
 高志はドーム内を見下ろす為のソファーに落ちついた。
「…警備の方は?」
 背を向けたままで確認するゲンドウ。
 下の準備の進行具合を、直接目で確かめているのだろう。
 後ろに組み合わされた手は、白い手袋を握っている。
「動員数は通常の3倍に…」
「そうか、なら問題無い」
 シーンッと、気まずい沈黙が流れた。
 そうだ!っと、突如思い出す高志。
「先日、渚カヲル君が我が家に来ました」
 ぴくっと反応したのがわずかにわかった。
「うちの娘と、親しくして頂いて…」
「薫…、でしたな、確かお名前は」
「はい、ご存じでしたか?」
「妻から聞いております」
 シンジが入院した時、同室になった少女だ。
 だが厳重なチェックとセキュリティによって保護されるべきシンジと同室であったこと。
 それは薫に秘密が…あったわけではなく、たんにユイからお願いされただけであった。
「カヲル君…、舞台に立つそうで…」
 高志は切り出しにくい事を口にした。
「予定のメンバーではないともめておりましたが…」
「ご心配には及びませんよ、ナカザキさん」
 ニヤリとゲンドウは笑った。
「直に到着します」
 しかし予想よりも早く、シンジはすでに着いていた。






「まあ碇さんには良いクスリになるだろ?」
「まったくだ、スポンサーだからって口出しが多過ぎるよな?」
 そこら中で、このような会話が聞こえていた。
 下のものが聞いても誰のことだか分からないだろうが、上の者が聞けば顔色を青くした事だろう。
 つまり彼らは、そう言う立場の人間であった。
「お?、あれ…」
 その片方の男が、廊下の向こうで角を曲がろうとしている女の子を見付けた。
「あれも新人だっけ?」
「たぶんな?、なんとか数を揃えられて良かったよ…」
 ほっとした様子がうかがい知れる。
「まったくだ、この時期に突然見栄えする程度に集めてこい、だもんな?」
「売れてるのは特番に狩り出されてるし、そう簡単に集まるかっての」
「まったくだ」
 二人はその後、苦労を吹き飛ばすかの様に笑い合った。
 一方その曲がっていった女の子なのだが…
「あら?」
 っと、前方、控え室の前でたたずんでいる少年を目にとめていた。
 すたすたっと近寄っていく。
「ねえ?」
 不意に話しかけられても、銀髪の少年はちゃんと笑みで返してくれた。
「あなたも出るの?」
 にこっと微笑むだけで返事にされる。
「…あなた、いいわね?」
 その性格が気に入ったらしい。
「何がだい?」
 初めての肉声は、彼女の芯にぞくりと来た。
 良い、この子…
 明らかに相手の方が年上だというのに、物怖じしない。
「あなたあたしのバックに入りなさいよ?」
 彼女は唐突にきり出した。
「事務所には話しておいてあげるから」
 カヲルは軽く肩をすくめて遠慮した。
「なんで!?」
 少女は驚き詰め寄った。
「お姫様のお気に障ったのなら謝るよ…」
 その言葉をからかいとして受け取る。
「バカにしないで、どうしてよ!」
 ばんっと胸を叩かれた。
 やれやれ、プライドの高い子だね…
 カヲルは幼児をあやすように接していく。
「僕にはもう王子様がいるからね、お姫様は必要ないんだ」
 王子様?
 はっと、少女は気がついた。
「わけわかんないこと言って、護魔化さないで!」
 からかわれたのだと気がついたのだ。
「そんなつもりはないよ…」
「カヲルぅ、なにしてるの?」
 ガチャッと戸が開いて、衣装に着替えたレイが顔を出した。
 はっとする少女。
 こいつ…、できる!?
 自分よりはかなり年上に見える。
 それはレイの着ている黒のドレスのせいかもしれない、背中が大きく開いていて、レイの小さな胸をかなりボリュームがあるように見せ掛けていた。
 赤い瞳と青い髪が、黒い衣装と白い肌にマッチしている。
 負けてる?
 自分がちょっと悲しくなった。
「着替えはすんだのかい?」
「ええ…、ねえ?、シンちゃん来るかなぁ?」
 ふっと苦笑するカヲル。
「もう来ているみたいだよ?」
「ええ!?」
 レイの顔が歓喜に震えた。
「呼んで来て、お願い!」
「いいのかい?」
「なにが?」
 レイはすでにわくわくとしている。
「…アスカちゃんも一緒のはずだよ?」
 あっと、レイは固まってしまっていた。






 その頃シンジはと言えば…
「ほらシンジ、早くしなさいってば!」
「待ってよぉ…、パンフレット買わないと」
「あんたバカァ!?、そんなの後でレイに貰えばいいじゃないのよ!」
 アスカはバカバカと言いながら、シンジの手を握って駆けていく。
「待ってくださいぃ〜」
 ひぃひぃと息を上げながら追いかけているミズホ。
 特別に加持のはからいで、自由に歩き回れるようにしてもらったのだ。
 これにはシンジの持つ生徒手帳も効力を発揮していた。
「早くしないと開場しちゃうじゃない!」
「それはそうだけど…」
「その前に、からかうのよ!」
 やたらうきうきとしているアスカ。
 弾みで、さっきのこと口走らなきゃ良いんだけど…
 などと、シンジはキスを引きずっている。
「?」
 ミズホはふらふらと歩いていく、アイドルらしい女の子を目にとめた。
「このあたしを無視するなんて…」
 まるでアスカさんですぅ。
 などと思いながら、おかしな子だなと思っていた。



続く







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