「こんなの初めて…」
あすかは体の動きを抑えられなかった。
はっとする、その姿をにこやかにアスカが見ていたからだ。
ぷいっと赤くなって顔を反らせる。
可愛い…
プッと吹き出すアスカ。
しかしレイに与えられていたのは、フルコーラスを歌うわずか5分たらずだけであった。
シンジの包容を感じる。
これも力なのね?
シンジの力と共鳴現象を起こす綾波の力。
ありがとう、わたしを出してくれて…
綾波はレイに向かって感謝した。
曲が終わった。
静かにギターを下ろすシンジ。
わああああ!
歓声が上がった。
しかし先程のあすか程のものではない。
しかしこれで、計画の第一段階は…、ぬお!?
ニヤリと笑おうとしたゲンドウのメガネがズリッとずり落ちた。
「あああああ!」
わなわなと、指差して震えるアスカ。
あああああー!
どよめく会場。
「やるじゃない」
口を押さえて笑うあすか。
綾波がシンジにキスしていた。
背伸びするように、手を後ろに組んで唇を押し付けて。
シンジもそれを拒否せず、逆に目を閉じて受け入れている。
「ふぎゃあああああ!、何てことするんですかぁ!」
暴れるミズホ。
「ミズホ、落ちつくんだ!」
「ふんぎゃああああ!」
ガコン!
何かが外れた。
「ほえ?、ほええええええ!」
がしゃあん!っと、ど派手に照明器具ごと落下していくミズホ。
「だから落ちつくように言ったんだよ」
カヲルは一人浮いたままで見下ろし、ふっと髪を掻き上げた。
「まあ、あと三キロ痩せていたら、抱き上げてあげたんだけどね?」
カンッと、カッコつけてポーズを取っていたカヲルの股間部に、真下からのマイクが直撃していた。
「うう、いたたたたですぅ…」
ミズホが落ちたのはシンジの上だった。
「ああ、シンジ様!」
「ちょっと重いってば、どいてよ!」
ミズホはぐしゅっと泣きそうになった。
「はう〜ん、シンジ様までぇ!」
「シンちゃんじゃなくて、あたしぃ!」
「ほえ?」
良く見ると、シンジの下にレイが居た。
「レイさん、何やってらっしゃるんですか?」
「あのねぇ!」
怒って怒鳴り返そうとしたら、ほくそ笑んでいるカヲルが見えた。
「てい!」
とっさに持っていたマイクを投げ付ける。
マイクは真下から見るとちょうどいい具合に広げられていたカヲルの中心部に直撃した。
ふらっとして、ぼてっと落ちて来るカヲル。
「どうせカヲルの仕業でしょ!」
レイは勝手に決め付けた。
「それよりミズホ!」
「はう〜ん、シンジ様の意識がありませぇん!」
抱き起こして、かっくんかっくんと振っているミズホ。
「ミズホのせいでしょ!」
「それもこれも、レイさんがキスなんてなさるからですぅ!」
「嘘!?」
「したじゃないですかぁ!」
しまったぁ!
レイは本気で悔しがった。
あの子がしたの?、記憶に残ってないなんて損した気分!
その間もミズホはミズホで混乱していた。
「早く消毒を…、人工呼吸をせねば、あううううう!」
思い悩んで目がぐるぐると渦を巻いてしまっている。
混乱しまくったミズホは、直線的に「えい!」っと動いた。
「あああああ!、ちょっとミズホ!?」
シンジ様…
ミズホは目を閉じて、シンジの唇を奪っていた。
幸せですぅ…
「ふがーーー!」
今度はレイのもがく番だ。
シンジの両肩をつかみ、ミズホは首をわずかに傾げてキスしていた。
しかしシンジの方はと言えば…
ぶくぶくぶく…
泡を吹いている状態であった。
●
「これは、なに?」
呆然としているあすか。
セットが崩れ、収録は中止になっていた。
なんなのよ、一体…
それは誰にも分からない事であった。
「バカ!」
家の廊下。
「ううううう…」
ミズホは自分の部屋の前で正座させられていた。
「いいこと?、あと1時間はそうしてなさい!」
シンジ様ぁ…
ミズホは泣きそうになっていた。
レイとカヲル君は、父さんと一緒か…
自室で物思いにふけっているシンジ。
二人でタタキとの話し合いに付き合っているらしい。
「でも助かったかな?」
あのままだと、本当にデヴューさせられていたかもしれない。
下からはアスカの怒声が聞こえて来る。
まだ怒ってるんだ…
当たり前だった。
せっかく自分だけだと思ったのに、レイとミズホにまで、同じ日にキスされてしまったのだから。
これじゃああたしの負けじゃない!
アスカ的に考えると、先にキスした事と同じぐらい、最後にキスした相手というのも重要らしい。
シンジは下の階が静かになった事に気がついた。
「終わったのかな?」
よこらしょっと立ち上がる。
「ミズホにココアでも入れてあげよう…」
しかしシンジは気を失っていた事もあって、知らされてはいなかった。
ミズホにもキスされたと言う事を。
続く
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'はGenesis Qのnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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