碇家、家長の書斎で、シンジは脅えるように首をすくめていた。
「今回の騒動の原因、わかっているな?」
「だ、だってあれはミズホが…」
「口答えは許さん」
 ゲンドウはいつもと違う調子で答えた。
「全ては男らしく割り切る事のできない、毅然とした態度も取れずに、薬に頼ったお前の失態だ」
 シンジはギュッと唇を噛んだ。
「僕に…、どうしろって言うのさ?」
 ニヤリとわからないようにほくそ笑むゲンドウ。
「島へ行け」
「しまぁ!?」
 ばさりと広げられる地図。
 ゲンドウは沖縄にあるとある無人島を指差した。
「ここで男を磨いてこい」
「そんな!?、無理だよ、行った事も無い場所で、一体どうしろって言うのさ!?」
「お供は付ける、お前の良く知っている人物をな」
「誰?」
「秘密だ」
 にやっと笑う。
「ああ、それからこのことは、他のみなには内緒にしておけ」
「え?、どうしてさ…」
「お前独りでなければ、修行にならん」
 セットをめちゃくちゃにしてしまった責任もある。
 しょうがないか…
 だからシンジは黙って言う通りにした。
 アスカ…、レイ、ミズホごめん、でも夏休みには帰って来れるみたいだから。
 七月初旬、こうしてシンジは姿を消した。



Neon Genesis
Evangelion
GenesisQ'50

「BOYS BE・・・」



「あらぁ?」
 歯ブラシを咥えたままでうろつくアスカ。
 ピンクと白のストライプの寝間着。
「シンジの靴が無いわね?」
 いつもチェックしているわけではないのだが、新聞を取りに行く途中で気がついたのだ。
「アスカちゃん、はしたなわよ」
「ごめんなさぁい」
 素早く外に出てポストから新聞を抜いて戻って来る。
 洗面所に戻る途中で電話が鳴った。
 ジリリリリ!
「ふきゅ、レイ、お願いねぇ?」
 丸めた新聞を軽く振りながら頼んでいく。
 レイはかじりかけたパンを未練たらしく眺めてから立ち上がった。
「ご飯ぐらいゆっくり食べさせてよね…、はい、碇です」
 あ、あの…
 相手は女の子だった。
 まだ来るの?
 またシンジの追っかけかとうんざりする。
 あの、ナカザキですけど…
 あれ?
 レイは切ろうとして思いとどまった。
「ナカザキって、薫ちゃん?」
 えっと、レイさんですか?
「そ、どしたの?」
 えっとえっとと薫は迷いを見せた。
「…かけ直す?」
 こんがりと焼けていたトーストが、時間と共にぺちゃっとしていく。
 レイはマーガリンの香りが失われていく事を気にしていた。
「あ、カヲル!」
 え?
 薫の驚く声が聞こえた。
「ごめん!、後よろしく!」
「なんだい?、急に…」
 カヲルは押し付けられた受話器に戸惑った。
 寝起きだというのに、すでに制服に着替えている。
「はい?」
「あ、カヲル君?」
 カヲルは一瞬躊躇した。
「…薫かい?」
 シン…と、今度は薫が沈黙した。
「…薫?」
「あ、ごめん!、ちょっと感動しちゃって…」
「感動?」
「耳元でカヲル君が名前を囁いてくれたような…」
 カヲルは受話器をちょっとだけ離した。
「錯覚は置いておくとして、今日は、どうしたんだい?」
「うん!、カヲル君今日暇?」
 めげない薫。
 電話機の上のカレンダーを見る。
 土曜なのか…
 サボり過ぎで曜日の感覚が狂っていたらしい。
「今日はシンジ君と…」
「あら、シンジならしばらく帰らないわよ?」
「「ええーーー!」」
 通りすがりのユイの台詞に、まだ歯を磨いていたアスカと食べてる最中のレイが、それぞれ派手に泡と食べかすを吹いた。
「おばさま、それってどう言うことなんですか!」
「そうです!、せっかくシンちゃんとデートし直そうと思ったのに!!」
 アスカはぐるっと対象を切り換えた。
「ちょっと待ちなさいよ!、し直すのはあたし!」
「アスカはこの間したじゃない!」
「あんたのせいで台無しになったんでしょうが!」
 うう〜っと威嚇し合う。
「カヲル君、よくわからないけど空いてるみたいね?」
 くすくすと笑いが漏れている。
「ふ…ん、できれば僕も彼女達に混ざりたいんだけどね?」
 カヲルは真剣に呟いた。
「うんでもね?、カヲル君にはあたしと一緒に海に行ってもらいたいの」
 明るく告げる薫。
「これはまた唐突だね?」
「実は和ちゃんが言い出したんだけど、目が恐くって…」
 薫の声は真剣だ。
「恐い?」
「あれはずえったい、あたしの水着姿が目当てなの!」
 一瞬カヲルは惚けた。
 その珍しい様に、髪の引っ張り合いをしていたアスカとレイの動きがとまる。
「…和子さんは女の子じゃなかったのかい?」
「そうだけど?」
「…悪いけど、僕には君が何を言いたいのか良く分からないよ」
「ひどーい!、じゃあカヲル君はあたしがやらし〜い目つきで見られてもいいのね!?」
「嫌らしい…、のかい?」
 誰がよ!
 電話の向こうから、薫とじゃれ合う和子の声が聞こえてきた。


「うん、そう言うわけだからすぐに「いつもの待ちあわせ場所」に来てね?、待ってるから!」
 薫は用件を急ぎ伝えて電話を切った。
「くすぐったいってば和ちゃん!」
 薫の部屋。
「あんたがそう言う目で見てたなんて知らなかった!」
 続けて薫の胸を揉もうとする。
「そんなことするから危ないって言ってるの!」
「発育不良がナマ言うんじゃないの!、あたしがしっかり育ててあげるから」
 もみもみもみ。
「いらないってばぁ!」
 逃げ回る薫。
「まあカヲル先輩も線細いし、あんたみたいなのの方がつり合い取れるのかもしれないけど…」
「余計なお世話!」
「でもだめ、どうしても我慢できない!、どうしても我慢できない!」
「我慢できないってのはこっちだってばぁ!」
「そ・こ・で、ここはあたしの発案したオペレーションに付き合ってもらうわよ?」
 和子から逃れ、壁際で胸を抱きかかえるように隠す薫。
「作戦って、ねえ、そんなのうまくいくと思ってるの?」
「当ったり前じゃない!」
 和子は力一体元気に一冊の本をつき出す。
 そのタイトルには、『一皿のオムライス』と書いてあった。






 一皿のオムライス。
 それは今年一番売れた恋愛小説のタイトルである。
 お話は、貧乏な学生二人がオムライスで有名なお店に入る所がメインとなる。
「ここのオムライスってさ、ホントに美味しいって評判なんだ…」
 彼はしきりにポケットの中の財布を確認している。
「…うん、でもあたしこんな金額払えないよ?」
「でも、二人でなら払えるとおもうから…」
 え?っと驚く彼女。
「あのぉ、すみません…」
 彼は申し訳なさそうに尋ねた。
「二人でオムライスを一つ頼みたいんですが、かまいませんか?」
「ええ、良いですよ?」
 人当たりのよさそうなウエイトレスのお姉さんは、そう言って注文の確認も取らずに戻っていった。
 それからたわいない会話が続く。
 少女は思っていた。
 恥ずかしい…
 たかが千円ちょっとのお金が払えないなんて。
 二人で一つのお皿のオムライスを食べるなんて、なんて思われるのかしら。
 デートの真似事がして見たかったんだ、呆れられちゃったかな、こんなのも奢ってあげられないなんて…
 会話の内容は取り留めも無いが、それだけに長くは続かない。
 二人の会話は、次第に途切れ途切れになっていく。
「お待たせしました」
 会話が完全に無くなったのを見計らうかの様に、ウエイトレスが特大のオムライスを持って来た。
「なに?、これ…」
 目を丸くする少女。
「あれ?」
 彼は周りを見渡した。
 なんだ…
 良く見ると、量が多過ぎるからなのか?、わけあっているカップルの数は以外なほど多かった。
 あ〜ん、どう?
 おいしい…、君も食べなよ?
 そんな光景を眺めた後、二人は同時にちらりと様子をうかがった。
 ばっと真っ赤に顔を染めてうつむく二人。
「…食べようか?」
「うん」
 二人は同時にスプーンをさし込んだ。
「「あ…」」
 オムライスの中で、カチャリとぶつかるスプーンとスプーン。
 これも、間接キスになるのかな?
 二人はのぼせてしまって、とても食事どころでは無くなった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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