観葉植物が置かれ、買物客の為にベンチが設置されている。
ジオフロントには、そんなくつろぐ為のスペースが用意されていた。
「どうしたの?」
そこに女の子がつまらなさそうに足を揺らしていた。
背中まである髪の毛が、それに合わせて揺れている。
顔を上げる女の子。
「迷子?」
いつもとは違う、優しい声音で問かける和子。
十才ぐらいの女の子は顔を上げた。
なにこいつ?っと言う顔をしている。
「はやくママの所に帰らないと、心配してるんじゃない?」
「…一人で来たの、お母さんと一緒に来たわけじゃないわよ」
ぶっきらぼうに答えられる。
「もう和ちゃん!、ごめんね?、お姉ちゃんおせっかい焼きだから…」
女の子はまたつまらなさそうにうつむいた。
「ああもう!」
頭を掻きむしる和子。
「鞄も持たないで、こんな所に一人で来るわけ?」
「…勝手でしょ?」
「そう言ういじけた態度が嫌いなの!」
和子は女の子の隣に座り込んだ。
「和ちゃんってば!」
「薫、こういう子はほっといちゃいけないの」
珍しく真剣な表情を見せる和子にドキッとする。
「…あんたもそうだったでしょ?」
「う、うん…」
薫も和子がいなければ、いまだ一人っきりのままだったかもしれない。
和ちゃん、以外とそう言うの気にするから…
「だからちょっとごめん、ね?」
和子は薫の頷きを待たなかった。
「それで、どうしてこんな所で寂しそうにしてたの?」
「和美!」
女の人が駆け寄って来た。
「お母さん…」
女の子が嫌そうな顔をする。
「こんな所で何をやってるの!」
「お母さん?」
その剣幕に怪訝そうな顔をする和美。
その人は和子をキッと睨み付けた。
「あなたね!、なんのつもりなの!」
「あ、あの、誤解です!」
割り込もうとする薫。
和子はいいからっと手で制した。
「お母さん?」
和美と呼ばれた少女は、母親の注意が自分にない事を感じた。
「あ、いたいた…、あれ?」
駆け寄って来たのは相田親子だ。
「ナカザキさん?」
「あ、相田先輩」
「どうかした?」
「それが…」
奇妙な緊迫感が生まれている。
「薫…」
「え!?」
「行こうか?」
「ちょっと和ちゃん!」
追いかける。
「あ、あの、じゃあ!」
「うん…」
見送るケンスケ。
なんなんだ?、一体…
その理由はよく分からなかった。
●
「なんで知らない人と話してたの!」
そう叫ぶ彼女をまあまあととりなす。
「父さんは劇を見てきなよ?」
「お前はどうするんだ?」
ケンスケはちらりと和美を見やった。
「…一緒にしない方がよさそうだしさ」
「すまんな?、気をつかわせて…」
いいって事さと、ケンスケはさり気なく小遣いを要求した。
「これでいいかな」
無言でソフトクリームを受け取る和美。
壁に埋め込まれている、鑑賞用の大きな水槽を二人で眺める。
暗めの照明に、水槽の青白いライトが二人を浮き上がらせていた。
「嫌なんだ?」
和美はちらっとケンスケを見た。
「結婚して欲しくないんだ?」
ケンスケはもう一度言い直した。
「だって…」
和美は黙り込む。
「…お父さん、好きなんだ?」
「…うん」
「そっか…」
こればっかりはな。
そう思う。
「お兄ちゃんは…」
「ん?」
「お母さんのこと、嫌いになったの?」
お母さん?
その言葉に、一瞬ピンと来なかった。
「…ああ、俺の母さんは小さい頃に死んじゃってさ、覚えてない」
「ふうん…」
次の水槽へと歩き出す。
「あたしは…、新しいお父さんなんていらない」
和美はペロッと、ソフトクリームを舐め上げた。
●
「和ちゃんってば!」
引き止める薫。
「和ちゃん…、もしかして泣いてる?」
「そう見える?」
笑ってはいる、だが表情は硬い。
「どうしたの?、あの人?」
和美と言う女の子の母親。
「あの人がどうしたの?」
「ごめん…」
和子は小さく頭を下げた。
「え?」
「もう少ししてから、話すから…」
「うん」
和ちゃん…
いつもの立ち直りを見せない和子に、薫は不安なものを覚えていた。
「はぁ…、なにが悲しくてレイに付き合わなくちゃならないんだい?」
「シンちゃんがいないんだからしょうがないじゃない」
代役と言う事らしい。
「そうなのかい?、レイがそんなに僕に好意を持ってくれているとは思えないけどね?」
「あ、わかるぅって当たり前よね?、アスカはシンちゃんがいない間に大掃除するんだって、ミズホは稽古に行っちゃったし」
「それで荷物持ちは僕なのかい?」
両手に下げている紙袋を持ち上げる。
「ほかに暇そうなのいなかったからしょうがないじゃない?」
暇、ね?
カヲルは重い手応えに両手を下げた。
その様子に微笑むレイ。
「あ〜あ、でもちょっとばっかり使い過ぎちゃったかも」
「貯金…、ずいぶんと減ってるんじゃないのかい?」
べっと舌を出す。
「おあいにくさま、ちゃんと計算してますよぉだ」
鞄の表面をポンと叩く。
「シンちゃんとお出かけするぐらいは残してあるもん」
「そのシンジ君だけど…」
カヲルは急に眉音をよせた。
「なに?」
「どうも女の子と出かけたらしいね?」
「え!?」
レイの脳裏に、知っている幾つかの顔が浮かんで来た。
「マナ!?」
「彼女は家にいたよ」
夜中のうちに確認したらしい、カヲルが見たのはカーキー色のタンクトップとショーツ一枚で、壊れたエアコンに唸り声を上げている姿であった。
「それじゃあ、一体?」
考え込むレイ。
「…山岸さんさ」
「え!?」
予想外の名前に驚く。
「あの人は何を考えているんだろうね?」
「あの人…、お父様?」
「ああ…」
二人して考え込む。
「…今は手が出せないからね、後でシンジ君に聞くしかないさ」
「うん…」
レイはなぜ、カヲルがそんな事を話してくれたのか気になっていた。
●
「でもお母さんがするって言うの」
「ふぅん…」
「好きになっちゃったって言うの、だったら仕方無いよね?」
確認するような目を向ける。
「でもさ、取られちゃうかもしれないよな?」
ケンスケはその目につい口を滑らせた。
「え?」
「俺の父さん、お母さんと暮らしたいってさ」
「うん…」
「で、俺達は俺達だけで暮らしてて欲しいんだって」
「え!?」
呆然とする。
「そんなの嫌よ!」
同じように水槽を眺めていた人達が、何事かとこちらを振り返った。
「だったら、我慢してないで言わなくちゃ」
「でもぉ…」
そんな和美の頭をポンと叩く。
「お兄ちゃんの友達にもさ、いるんだよ」
「うん?」
「そうやって、いいたいことを言わないでいる奴が」
和美は少し興味を覚えた。
「どんな人?」
考え込むケンスケ。
「…バカだけど、すぐウジウジ悩んで、結局なるようにしかならないんだよな?」
和美は不満顔を作った。
「…よくわかんないよ」
「そっか…」
苦笑する。
「さ、次は何処に行く?」
「えっと…」
和美は自然と、ケンスケの手を握って歩き出した。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'はGenesis Qのnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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