NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':Access56 


「ごめんトウジ…、でも僕にはトウジを倒さなきゃいけない理由があるんだ!」
 バルーンダミーこと、パンチングまっすぃーんトウジ一号がボコボコと左右に揺れている。
「シンジさま、ファイトですぅ!」
 ピピーッと笛を吹き鳴らすミズホ。
 上は青のジャージに下は赤のブルマ、首からかけたホイッスルを袖口から覗く指で持ち…と、完璧なマネージャーを演じている。
「トウジがいけないんだ、謝ってくれないトウジがいけないんだ!」
 ボコボコと殴りまくる。
「その調子ですぅ!」
「いいんですか?」
 庭ではしゃぎまくる二人に、ユイはちょっと呆れていた。
「問題無い…、やはり男を焚き付けるのは女なのだな?」
「女の子、ですか…」
 ゲンドウと二人で、スイカを口にしながら眺めている。
「ミズホちゃん、スイカは?」
「あ、頂きますぅ」
「あ…」
 あっさりと裏切られて、ちょっと寂しそうなシンジ。
「おばさま?、このジャージありがとうございますぅ」
 ユイはスイカを勧めながらキョトンとした。
「おじ様に貸してもらったんですぅ、おばさまとの学園生活の想い出だって」
「そ、そう…」
 はぐはぐはぐはぐはぐ!
 戸惑うユイの目前で、ミズホはスイカの切り身の一気食いを披露する。
「ぷぷぷぷぷ!、さあシンジ様、もうひと頑張りですぅ!」
 種を吹き散らかしてからまた応援に戻る。
「スイカ…、いいなぁ…」
 ちょっと疲れてきているらしい。
「…あなた?」
「なんだ?」
「想い出って…」
「へえ?、おじ様とおば様、同じ学校だったんですか?」
 レイにヘッドロックをかけたまま、引きずりアスカがやって来た。
「…何を言っている?」
「え?」
「わたしとユイが、同い年なわけがなかろう?」
 じゃ、じゃあ…
 あのブルマーは、一体…
 ニヤリ。
 珍しくユイをも戸惑わせた事に、満足してしまうゲンドウであった。






 翌日。
「なんでおらへんねん、ヒカリぃ〜…」
 朝っぱらから電話し続けているトウジがいた。
 やっぱ夕べのやつか?、はっ!、まさか嫉妬に狂ったシンジに誘拐されたんとちゃうやろなぁ!?
 かなり危険な精神状態。
 その頃ヒカリは…
「…鈴原、遅いわねぇ」
 駅前の時計の下で、約束通りにトウジをちゃんと待っていた。


 トルルルル。
 お昼ごろに鳴った電話、トウジは急ぎ取り上げた。
「も、もしもし!」
「す〜ず〜は〜ら〜…」
 地の底から響くような声。
「ひ、ヒカリか!?、お前いまどこにおるんや!?」
 すうっと呼吸する音が聞こえた。
「なに言ってるの!、今日は映画を見に行くって約束したでしょ!?」
「そ、そやけど夕べ…」
「昨日!、ちゃんと約束したわよね!?」
 ヒカリはトウジの弁解を押さえ込んだ。
「どうして電話してくれなかったの!?」
「電話?」
「そうよ!」
 ぷんぷんと怒っている雰囲気がよく伝わる。
「そやから朝から、ずっと電話かけとったやないか?」
「電話?、かかってないわよ!」
 ノートの切れ端を確認する。
「ちゃんとかけとるで、ヒカリの家の番号に…」
「家って…」
 ヒカリは呆れ返った。
「どうして携帯にかけなかったの!?」
「あ…」
 間抜けさを露呈してしまう。
「鈴原にだけ教えてあげたのに…、バカ!、もう知らない!!」
「ヒカリ、ヒカリぃ〜〜〜」
 電話に向かって泣き叫ぶトウジに、ハルカは肩をすくめてふるふると首を振っていた。






「あんたたちねぇ?、ケンカするなら余所でやりなさいよ」
 ギシッと椅子の背が鳴る。
「いいじゃない!」
 結果的に約束をすっぽかされたヒカリは、アスカの部屋でくだをまいていた。
「まったく」
 苦笑してしまうアスカ。
 ヒカリはクッションに座って、ストローでオレンジジュースをかき混ぜている。
「まったく信じられない!、昔っからほんとにスケベなまんまなんだから!」
 ズズッとすすって、コースターの上にトンと置く。
「ねえ、そう思わない!?」
 カランと、コップの中で氷が鳴った。
「碇君もあんななの?」
 ベッドの上に声をかける。
「似たようなもんじゃないかなぁ?」
 ベッドに転がっているのはレイだった、アスカは勉強机の前の椅子。
「シンジだって、レイやミズホにだらしない顔してるわよ…」
 アスカの不満に、ヒカリは「おや?」っと驚いた。
「アスカにはしてないの?」
「当ったり前じゃない!、こいつらと違って、あたしはそんな恰好見せないわよ!」
 ふーんだと、レイはぬいぐるみを抱いて転がった。
「ほんとはアスカが一番エッチなのにねぇ?、シンちゃん」
「あーーー!、またそれ引っ張り出して!?」
 お猿のシンちゃんだ。
 ベッドの下に隠しといたのに!
「こういうの隠すから、むっつりスケベって言われるのよねぇ?」
「言ってないでしょ、誰も!」
 ふんっと、取り返し、胸に抱き込む。
 ピルルルル!
「あ、アスカ携帯」
「わかってるわよ…、はい、あん?、鈴原じゃない、どうしたのよ?」
 横目でヒカリを盗み見ると、そっぽを向いたまま耳だけピクピクと反応させている。
 いまさらねぇ?
 ズゴゴーっと、空のコップをストローですするヒカリ。
 聞いてないふりしてもしょうがないでしょうに。
 可愛く見える。
「惣流!、聞いとんのか!?」
「あん、聞こえてるわよ?」
 アスカはしょうがないっとため息をついた。
「で、なに?」
「ヒカリのことなんやけどな?」
「えーーー!?」
 アスカの驚きに、レイもヒカリも驚いた。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、なんであたしがっ!」
「頼む、お前しかおらへんのや!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、なんでデート、こら、鈴原!、あんたねぇ!」
 プツ、ツー、ツー、ツー
「切れちゃった…」
 アスカではなく、レイが中継した。
「アスカ、モテモテ?」
 別のお猿のぬいぐるみを抱いて、その向こうから「にひひ」っと嫌らしい目を向けている。
「なにバカなこと言ってんのよ!」
 バン!
 シンジを投げ付けるアスカ。
「ああー!、シンちゃん!?、アスカってばひど〜い」
 お猿を二匹抱きかかえる。
「ん、んふ、んふふふふ…」
 二人と二匹は、ちょっと脅えるようにヒカリを見た。
「ひ、ヒカリ?」
「アスカ…、さっきの鈴原を懲らしめるって話、協力させてくれるわよね?」
「あ〜〜〜…」
 その目つき。
「アスカ、逆らわない方が良いと思う」
「わ、わかったわよ…」
 ヒカリ、鈴原の話、誤解してるみたいだけど…
 しかしアスカは触れられない恐さを感じてしまう。
 ま、人ごとだし…
 レイは他人の恋愛沙汰と、傍観の立場を決め込んだ。


「わはははは!」
 一方その頃鈴原家では…
「やったでぇ!、惣流、デートはまかしたしなぁ!」
 電話を切ったトウジがガッツポーズをかましていた。
 近所中に響く声。
 お兄ちゃん、アスカお姉ちゃんにまで…
 自室で算数の宿題をしながらも、さらに軽蔑してしまうハルカであった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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