NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':Access56 


 はぁ、なんで付き合わされなきゃいけないんだろ…
 さあシンジ様!
 風鈴歌山とあっているような間違っているようなのぼりを背負い、袴にはちまき姿でミズホはシンジを引っ張った。
「み、ミズホ、ちょっと待って!」
「ダメですぅ!、シンジ様はわたしのために戦って命を落とし…」
 ええ!?、し、死んじゃうの、僕!?
 ミズホの妄想に引いてしまう。
「そしてわたしは冷たくなっていくシンジ様の手を取って、「ミズホ、愛しているよ?」と最後の呟きに涙してぇ〜」
 ちょっとぉ…
 こそこそと逃げ出そうとするシンジ。
 誤解だってわかったのになんで…
「打倒トウジ!」
 そう書いたタスキとハチマキ、それに竹刀を持って出ていこうとしていたシンジに、ヒカリが教えてくれたのだ。
「もう良いじゃないか…」
 ミズホの視界に入らないよう、四つんばいで歩くシンジ。
「どこに行くのよ?」
 その前に見慣れた両足が立ちふさがった。
「アスカ?」
「ちょっと付き合って…」
 いつもならアスカだけなのに…
 その背後に控えていたのはヒカリだった。
「委員長まで…、どうしたのさ?」
 ちらちらと振り返るのは、ミズホに気がつかれるのが恐いからだ。
「ちょっとね?」
 シンジの前にしゃがみこんで、ヒカリはにっこりと微笑んだ。
 いつもと、違うよな…
 本来はトウジのためのおしゃれなのだ。
 ほどいた髪、ツーピースのスカートは少し大きめ。
 別の人みたいだ…
 シンジはその変わり様に驚いていた。


 そして今は夕方の5時。
「さ、行きましょ?」
「う、うん…」
 いきなり組み付かれて焦ってしまう。
 どっかでも見てるはずなのに、アスカ達…
 気にしていないのかと疑ってしまう。
 もう駅二つ分でジオフロントと言う辺りの街。
「あ、あの…」
「いいのよ!、ミズホ…、その、見られちゃったでしょ?」
 ギュッとヒカリは密着する。
「うん、まあ、大事って言うか…」
 後が恐いのに…
 シンジの気は散っている。
「だからこれが復讐なの!、まったく鈴原ってば、しょうがないんだから…」
 くすくすとシンジは笑ってしまった。
「な、なに?」
「ヤキモチ妬いてるんだよね?、委員長…」
 赤くなる。
「そ、そんなの!、碇君だってそうでしょ!?」
 ヒカリの焦り様にさらに笑いが込み上げてしまう。
「もう!、早く行きましょう?」
 ヒカリはシンジを体ごと引っ張った。


「うう、ヒカリ〜」
 なんでやぁと、隠れて泣いている男が居た。
「みっともないわねぇ?、男だったらチャンスを待ちなさいよ!」
「そやかて、なんで見守らなあかんねん?」
 トウジは押さえつけられた頭を持ち上げた。
「あんたが怒らせるからでしょうが!、あたし達だって半分巻き添え食ってるのよ!?」
 きつくトウジも睨み返す。
「そんなん、お前が情けないだけやないかい!」
「あんたに言われたかないわよ!」
 アスカの方が立場は上だ。
「仲直りのデートプラン立てて欲しいんでしょ!?、じゃあちょっとは我慢しなさいよ!」
 トウジはちょっとしょぼくれた。
「関係あらへんがな、こんなん…」
 そやけどヒカリの機嫌、直さんと…
 残りの休みは、多分ケンスケと過ごす事になってしまう。
 そんなん嫌や!
 夕日の中に、手招きしているケンスケが見える。
「だけど、いいの?、シンちゃん任せちゃって…」
「うう、シンジ様ぁ〜〜〜」
 ちょっと冷めてるレイと、ハンカチを噛み締めているミズホ。
「あんたでしょ?、シンジが恋愛音痴だって言ったの」
「うん、そうだけど…」
「こんなのでも!」
 グキ!
 ぐりっとトウジの頭を向ける。
「あたしらよりは、経験積んでんだから仕方がないでしょうが!」
「痛いがなぁ!」
 思いっ切きりの泣きべそを見せる。
「でも失敗してるんじゃ御利益が…」
「わしらはまだ終わっとらへんわい!」
 トウジは涙混じりに抵抗した。
「シンジがちょっとでも興味を持てばいいのよ」
「そう?」
「ヒカリが享受して、このバカに反省させられるんだから、一応ヒカリとシンジの利害は一致してるんだし」
「でもこの作戦…」
 シンジさまぁ〜っと泣いているミズホの頭を撫でる。
「あたし達にもダメージあるんじゃきついんだけど」
 うっと、切れたヒカリの言い出した作戦だけに、取り下げられないアスカであった。






 映画はすでにチケットのある、純愛物を見る事に決定していた。
「…碇君はこういうの苦手?」
 まだ上映が始まってすぐの頃に、ヒカリが耳打ちするように尋ねて来た。
「苦手じゃないけど…」
 好きでも無い。
「眠っちゃう?」
「それって、トウジのこと?」
 スクリーンの明りだけでもわかるぐらい、ヒカリの顔が赤くなった。
「好きなんだね?、トウジのこと…」
「…うん」
 ガジガジガジガジガジ…
 最後尾の列で、前席の背もたれをかじっているミズホが居た。
「いい雰囲気ですぅ!」
「やりすぎよヒカリ!」
「シンちゃんの浮気者ぉ!」
 トウジは既に寝ているらしい。
「いいの?」
「なに?」
 シンジは遠慮気味に尋ねた。
「チケットだよ、トウジと見るはずだったんでしょ?」
「どうせ寝てるだけでしょ、あいつ!」
 少しトーンが大きくなって、隣の人に睨まれた。
 まあ、トウジらしいんだけどね…
 眠くはならずとも、シンジは退屈さを感じて疲れていた。
 お尻も痛いしさ…
 時間を確認すると、あと30分と言った所だ。
 こういうラブシーンって、アスカ達も喜ぶのかなぁ?
 木に寄りかかる二人。
 シンジは相手に誰を当てはめようかと迷った。
「うわーうわーうわーですぅ」
「しー!、ミズホ静かに!」
「シンちゃあん☆」
 入り込んでしまった三人。
「んがー!」
 無粋なのが一人。
 ぽて…
 あれ?
 シンジは肩にかかった重みに驚いた。
 委員長?
 その上、肘掛けに乗せていたシンジの手に手を重ねて来る。
 どうしたのかな?
 シーンは恋人との死に別れ。
 泣いてるの?
 目元がやけに光っている。
 そう…、なのかな?
 もじもじとヒカリの手が何かを求めている事に気がつき、シンジは何気なく手をひっくり返した。
 やっぱり…
 無意識の内に指を絡め、手をつかんで来る。
 委員長、すっかりはまってる。
 ふっと笑みを漏らしてしまうシンジ。
あああああー!
 ノクトビジョンを放り捨てて立ち上がる。
 会場中から「シーッ!」っと言うお叱りを受けてしまうレイだった。






 上映が終わる、エンディングテロップが流れる途中で会場は明るくなった。
「良い映画だったね?」
「うん」
 素直な笑顔を見せるヒカリ。
「お、お前ら!」
「と、トウジ?」
「鈴原!?」
 そんな二人の前に、トウジが勢いこんできた。
「お前ら何しとんねん!」
「何って…」
 繋いだ手に視線を向け合う。
「「あっ!」」
 二人は同時に赤くなって、慌てて離した。
「ち、違うのよ鈴原!」
「そう誤解、誤解なんだよ!」
 弁明するがもう遅い。
「シンジさまぁ〜!」
「シンちゃあん」
「死刑ね?」
 きらりんと光る瞳。
「立てぃ!、わしはお前を殴る!、殴らな気がすまへんのや!」
「ちょっと鈴原!」
「お前は黙ってんかい!」
 パン!
 良い音が鳴り響いた。
 いたっ!
 何故か頬を押さえてしまうシンジ、だが叩かれたのはトウジだった。
「…ヒカリ」
「バカ!、ヤキモチ妬くくらいならもっとちゃんと…」
 ヒカリは泣いたままで抱きついた。
「そやかて、わし…」
「もういい!、ほんとにバカなんだから」
 なんだか二人の世界に旅立ってしまう。
「かあああああ、やってらんないわねぇ?」
「めでたしめでたし?」
「うらやましいですぅ、ねえ?、シンジさまぁ」
 すりすりと甘えるミズホ。
「あ、うん…」
 ついミズホの頭を抱いてしまう。
 こういう、ものなのかな?
 無意識の行動だったのだが、はう〜んごろごろと甘えるミズホに、嫉妬と殺意の視線が集中していた。


「ユイ…」
「ええ…」
「いい見世物だったな?」
「見世物…、ですか?」
「あ、いや、なんでもない…」
 ユイの機嫌を損ねたくはないからな…
「映画を観に来て、よかったな?」
「そうですわね…」
 あなたっと、寄り添うユイ。
 しかしゲンドウは映画よりも、ずっとシンジ達の騒ぎを堪能していたのだった。







[BACK][TOP][NEXT]


新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
内容の一部及び全部の引用・転載・加筆その他の行為には
作者である私と原作者naryさんの許可または承認が必要です、ご了承ください。

本元Genesis Qへ>Genesis Q