NEON GENESIS EVANGELION
Genesis Q':57
うう…、シンジ様の御迷惑になっては、でもぉ。
うんうんとミズホは悩んでいた。
何を着るか、で。
「うう…、今日のミズホは無力なんですぅ、何もお手伝いできません…」
両手を組んで、蛍光燈に祈りを捧げる。
「ですから、せめて温かい目で見守りたいんですぅ…」
「ついでに熱い視線で見つめてもらおうと言う魂胆だね?」
「そうなんですぅ…、って、どうしてここにいらっしゃるんですか!?」
ミズホはキッと睨み付けた。
「良いのかい?、そんな風に邪険にしても」
「ほえ?」
警戒心はまだ解かない。
「これだよ…」
「これは!?」
真っ白な衣、羽二重。
「これが何を意味するか?、君にわからないはずはないね?」
新婚初夜で布団の脇で三つ指ついて待ってるような感じ。
…になっているのはシンジで、ミズホは布団の上に横になり、指をくいっと折り曲げている。
「シンジ様、かまぁん☆ってお誘いすると、シンジ様は野獣のように襲いかかって来られて、この白無垢に純潔の証しをぉおおおお!」
急ぎばたばたと着替えようとする。
「っと、その前に…、邪魔ですぅ!」
どがん!っと諸手で突き飛ばされる。
「しまった、ミズホの部屋は階段の正面!?」
そのままガタガタと階段を落ちていくカヲル。
「えっと着替えましてぇ、ではさっそく」
こっほん。
「シンジ様ぁ!、
ふぎゃあ!?
」
「あのね?」
シンジの首が、駆け上がったミズホによって微妙に折れる。
「しっしですぅ!」
テーブルの横には、「うにゃん?」っと小首を傾げる猫がいる。
「何しに来たのよ、あんたわ」
ミズホを追い払いたいアスカであった。
「「シンジ様はそんなにわたしのことがお嫌いなんですかぁ!?」ってミズホが泣くんだ、ごめんね?」
クロを廊下に追い出し襖を閉める。
かりかりと掻く音がしたのも束の間、とんとんとんっと言う音がした。
「なんだろ?」
「階段よ、下に降りたんでしょ?、それより宿題!」
「わかってるよぉ…」
だがどうしても気になってしまう三人。
「ねえシンジ?」
「なに?」
「あの猫、どこから連れて来たの?」
「さあ?」
「さあって…」
「父さんが連れて来たみたいなんだけど、よくわからないんだ…」
「そう…」
お父様、どこから連れて来たんだろ?
見た覚えのある種類だ、捨て猫にしては大きいし、野良にしては人に慣れている。
「それよりほら!、さっさとレイのレポート写しなさいよ!」
「あ、うん…」
「写してる間、レイの方は進まないんだからね?、二人とも間に合わなかったらシャレになんないじゃない」
「そっか…」
ふとレイの方を見る。
「あ、間に合わなかったら、ペナルティー貰っちゃうからね?」
う、それも恐いな…
恐いので指を動かし始める。
「…あんたホントにキータッチ遅いわねぇ?」
「ほっといてよ…」
「急ぎなさいよ?」
「まあまあ、そのまんま写せばいいだけなんだし?」
「あんたバカァ?、中身が同じじゃ、丸写ししたって怒られちゃうじゃないのよ?」
「その時はぁ、あたしからの愛ってことで、ディスク交換してあげる」
「え?」
「もう!、あたしのやったのをあげるって言ってるの」
「…嬉しいけど、遠慮しとく」
「えー、どうしてぇ?」
「こいつのやった宿題の出来が、そんなにいいわけないでしょうが」
「その通りだね」
自分で言ってて情けなくなる。
「でもでもぉ、レイさんがお役に立てないとなると、ここはやはりわたくしめが!」
「やめときなさいよぉ…」
だがアスカの言葉にぶんぶか首を振って先を続ける。
「なに?」
いやいやながらも、気の毒になって声をかけるシンジ。
「自由研究です、自由研究ぅ!」
「へ?」
ミズホは必死に気を引こうとして頑張っている。
「ささ、この研究結果をまとめましてレポートに…」
小皿に盛ったさくらんぼ。
「研究?」
「ミズホの接吻練習!ですぅ!、ほほを、ほうしれ…」
さくらんぼの枝を、懸命に舌で結ぼうとしているらしい。
ひきっ!
「はいらたたれすぅ!」
「…なんで舌がつるの?」
「バカ?」
「…自由研究なんてないのに」
三人の視線はとても冷たい。
「あーもぉ、うっとうしんだから…、やっぱり連れて来るわ?」
「え?」
「猫よ猫!、ミズホよりはましでしょうから」
ぷぎゃあ!
っとミズホの泣き声が柱を揺らした。
寝室。
ベッドの上に座り、その前に置いた猫の頭をポンと叩く。
ピッ!
目から出た光が、壁面にクロの見たものを映し出した。
「むっ!?」
女の子座り、誰かの膝小僧。
「むむ?」
膝の上に乗ろうというのだろう、一瞬膝の向こうの暗闇が映った。
「むう…」
レイか?
頭を撫でられたらしい、一瞬画像が上下に揺れる。
見上げると澄んだ瞳があった、その手前に二つの隆起。
「ええい胸はいい!」
シンジを映せシンジを!
一人で拳を振り上げている。
「どう?」
「あれ、レイじゃないの?」
「なにをしているんだろうね?」
ゲンドウ自身は、背中を向けているのでよくわからない。
3人はそっと扉を締め、階段まで交代した。
「どうも…、普通の猫じゃなかったのね?」
「うう、お父様のえっちぃ…」
少し鳥肌が立っている。
「世の中には、知らない方がいい事もあるのさ」
カヲルはどこか悟っている。
「ま、いいわ」
アスカはカヲルの肩をポンと叩いた。
「あと、お願いね?」
「なにをだい?」
「あの猫を遠ざけててって言ってんのよ!、だいたいあんた、ミズホに泣きつかれて邪魔しに来たんでしょうが!?」
そこまで言われても、カヲルは不敵にニヤニヤと笑っている。
「ん?、なによ…」
「あっ!、カヲル、知ってたのね!?」
「なにをだい?」
「あの猫のことよ!」
「ああ…、何かがあるのはわかっていたけど、何があるのかはわからなかったってところかな?」
「あん?」
「あら?」
不意の登場にギクッとする三人。
「なにをしてるの?」
「な、なんでもないです!」
「あはははは」
ばたばたと慌てて逃げていく姿に小首を傾げる。
「どうしたのかしら?」
「勘違いとは恐いものですね?」
カヲルのよく分からない物言いに、ユイは曖昧な笑みを返した。
「どうしてもダメなのかい?」
「ダメよ」
アスカはカヲルのノートをマナに押し付けた。
「はい!、これがあれば写せるでしょ?」
「まあそうなんだけど…」
ちろっとシンジの顔をうかがう。
「大丈夫?」
「諦めたよ…」
あははっと力無く笑う。
「僕としては霧島さんよりも、シンジ君に提供したい所なんだけどね?」
「ダメって言ってるでしょ?、シンジにはちゃんと自分でやらせるのよ」
「どうしてそう、こだわるんだい?」
「ど、どうしてって…」
ちょっと赤くなる。
「そ、その顔は…」
レイは冗談っぽくクラッと来た、
「シンちゃんと徹夜ができるとかって思ってる」
「そうなのかい?」
「シンジ様ぁ!」
「「違うって!」」
「そりゃ宿題は手伝ってもらわなきゃできないけどさ…」
「べ、別に楽しみになんてしないわよ!?」
「してるんだね」
「シンジさまぁ!」
「「ず、ズボンに!」」
「しがみつかないでよ!」
「見えちゃうでしょうが!」
レイとマナは、わくわくっとツインで見守っている。
「大体昨日まではレイが独占してたんでしょ!?」
うーっと、ミズホの威嚇の対象がレイに変わる。
「あ、でもだって、あたしアスカみたいに変な下心持ってなかったから…」
「下心って何よ!?」
「うっく!?」
「何かを考えていた証拠だね?」
「どうせ「御褒美、貰ってもいい?」なぁんて…」
「ずっこいですぅ!」
「考えてないってぇ!」
「あーはいはい、どうせあたしは考えてましたよ」
居直ってしまうアスカだった。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'
は
Genesis Q
の
nary
さんに許可を頂いて私
nakaya
が制作しているパロディー作品です。
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