NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':58 


 まさかなぁ…
「校長!」
 知らぬ存ぜぬで、まるでゲンドウのように背を向けている。
 あの冗談を本気にするなんてなぁ…
 頭を掻きそうになるのを堪えているのだ。
 チラシにはこう書かれていた。
 大ウサギ狩り大会!、ウサギとハンター募集中。
 第三高校の飼い主さん?、あなたのウサギを提供してみませんか?、見事逃げ切ったウサギさんには、豪華一拍二日の温泉旅行をペアでプレゼント。
 そして一番多く捕らえたハンターさんには、どれか一匹ウサギさんとのアバンチュールを約束しちゃうぞ☆
 詳しくは生徒会事務局まで。
 …生徒会事務局なんていつできたんだ?
 加持はわずかに首を捻った。


「浩一!」
 正式発行されたチラシを手に、マナは教室に駆け込んだ。
 なに?っと、浩一は実に嫌そうな目をマナに向けた。
「これ出ない?、ねえ?」
 目が爛々と輝いているマナに、はぁっと露骨にため息をつく。
「…嫌だ」
「えーーー、なんでよう!?」
 マナの絶叫に、ほっとしている人達が拝める。
「僕が勝っても、どうせシンジ君と行くとか言いだすんだろ?」
「うん!、もち!!」
「メリットが無い」
「えーーー?、あたしにつくせるじゃなぁい」
「…それはメリットじゃないと思う」
「そんなぁ…」
「大体僕じゃ反則みたいなものだろ?」
「そう?」
「そうだよ」
「…それは随分と強気な発言だね?」
 会話に割り込んだのはカヲルだ。
「やあ、今日は来てたのかい?、カヲル君」
「随分と刺々しいね、君は?」
「一応敵だからね?」
「敵…、なのかい?」
「そうさ」
 レイと同居している。
 幼い頃からの知り合いらしい。
 それだけでも敵視するには十分である。
 特に真っ向からこう言われても、少しも機嫌を損ねないカヲルが気に食わない。
 余裕を見せつけてくれるじゃないか…
 その点も実に気に入らない。
「ふうん、なるほどね…」
「なんだ?」
「おしいね?」
「なにがだ?」
「浩一君がさ…」
 カヲルはようやく話をきり出した。
「君とは良いパートナーになれると思ったんだけどね?」
「なんでだよ」
 怪訝そうな浩一。
「じゃあ君は行かせたいのかい?、レイを、シンジ君と一緒に」
 浩一に戸惑いが見られた。
「そう言う事?」
 頷くカヲル。
「そう言う事さ」
 浩一は考え込んだ。
「そう言う事なら」
「そう言う事だね?」
 ふふふふふっと、お互い暗い笑いを漏らし合う。
「嫌らしいんだから、もう…」
 マナはぷうっと膨れ上がった。






「あれ?、アスカ、シンちゃんのとこに行くの?」
 レイは目ざとく呼び止めた。
「何でシンジよ!?」
 あんたバカぁ?、っと罵りが聞こえて来そうな感じで睨む。
「だって、ねえ?」
 レイはアスカが握り潰しているチラシを指差した。
「ミズホの所よ、ミズホの!」
「え?」
 ?マークを浮かべるレイ。
「こういうのはミズホが暴走しそうなネタでしょうが!」
 アスカはレイの先読みの甘さに苛立った。
「なぁんだ」
 その上この返事である。
「いいじゃない、別に…」
「あんたねぇ!」
「…シンちゃんって、逃げ足早いと思わない?」
 つかみ掛ろうとして、アスカはぴたっと止まってしまった。
 聞いちゃダメよ、ほら、こいつ笑ってるじゃない?
 ペースに飲み込まれてしまいそうな気がする。
 だめよ、だめだったら…、でも!
 抜け駆けはレイの専売特許である。
 くっ!、そうよ、こいつの動きを把握するって意味でも、見えるとこで動いててもらわないと…
 結局屈してしまうアスカ。
「で?」
「ん、…あのね?、シンちゃんにはウサギさんになってもらうの」
「あん?」
 一瞬どういう意味だから分からなかった。
「ウサギに?」
「そ☆、ほら、男女問わずって書いてあるでしょ?」
 レイも同じチラシを取り出し突き付けた。
「そりゃまあ、そうだけど…」
 大雑把な資格の欄に目を通す。
「だから、とりあえずは優勝してもらってからでいいじゃないかなぁ?」
「張り合うのは?」
「うん…、あたしとアスカでガード役を引っ張って来て…、ね?」
 何処から取り出したのか?、コロッケパンをぱくつくレイ。
「でもガード…、ガードねぇ?」
「それはやっぱり3人揃えばって、他にはいないっしょ?」
 アスカとレイは、交渉のために席を立った。






 本来用の無い他のクラスに、アスカが顔を出すことはまずあり得ない。
 開いたままの戸口から中を見る。
 あれ?
 みんながそんな顔でアスカを見付ける。
 誰かに用がある?、そんな感じで。
 あ!
 アスカは顔を輝かせた。
「鈴原ぁ!」
 なにぃ!?
 予想外の名前に皆驚く。
「…なんや、惣流やないか」
「ちょっといいかしら?」
 外面の良さはさすがである。
 なんや、ヒカリか?
 トウジの思考からすれば、アスカが持って来る用事などそんなものだが…
 なんであいつが!
 みんなから見れば、こうだった。


「んで?、用事ってなんやねん?」
「あんたこれ知ってる?」
 チラシを見せる。
「はぁ?、ケンスケが騒いどったやつかいな?」
「あんた空いてるわね?」
「空いてるって…、なんでや?」
「まさか参加の申し込みしちゃったとか?」
「アホ言うな!」
 アスカの挑発に簡単に乗る。
「なんでわしが女追いかけ回さなあかんのや!?」
 あん?、あ、そっか…
 トウジの中では「ハンター=男」「ウサギ=女の子」の図式が成り立っている。
「それにここだけの話、ヒカリがヤキモチ焼きおったらたまらんやないか?」
 ぷっと吹き出すアスカ。
「なんや?、そないにおかしいんかいな?」
「まあね…」
 クックと笑う、トウジの方は耳まで赤くなっている。
「可愛いわね、以外と」
「アホか!、男がそないに言われて喜ぶかい!」
「ヒカリが言ってるのに?」
「なんやと!?」
 驚きだが目尻がわずかに下がっている。
「そ、それほんまか!?」
「ええ…」
「ほ、他には!?」
「は?」
「他には何を言うとったんや!?」
 ちゃ〜んす…
 アスカは隠れてニヤリと笑った。
「そうね?、男らしい所もあるとか」
「他、他には!?」
「男義に溢れてるとか…」
「当然やないか!」
 鼻高々だ。
「それでそれを見込んでお願いがあるんだけど…」
「おう、まかせえや!」
 ドンッと胸を叩くトウジ。
「ほんと!?」
「ワシも男や、嘘はつかん!」
「よかった!」
 パンッと手を打ち鳴らす。
「実はシンジの事なのよ…」
「シンジの?」
 またかと呆れるトウジ。
「またあいつなんかしたんか?」
「これからするのよ」
「あん?」
 眉をひそめる。
「その大会に出るの、ウサギ役でね?」
「ウサギ…、逃げ回る方かいな!?」
「ええ…」
「なんや、情けない…」
 そこまで言ってから、トウジはふと考えた。
「こともないな、いつものまんまか」
 ウサギのシンジ。
 くすんと部屋の隅でいじけている。
「うっさいわねぇ…、だからとにかくあんたも出て、シンジを守って欲しいのよ」
「守るぅ?、シンジをか?」
「そ、できる?」
 トウジは深く息をついた。
「そないに面倒なん…」
「あっれぇ?、おっかしいなぁ、男義に溢れたトウジ様は、幼馴染を見捨てちゃうわけだぁ」
 くっ、謀りおったな!?
 くく、引っ掛かったわね?
 お互いの視線が交錯する。
「…ヒカリ、喜んでたわよ?」
 ギクッとするトウジ。
「あたしのデートプラン、役に立ったみたいね?」
「き、汚いで…」
「今度はどこに連れてってくれるのかなぁって、楽しみにしてたわね?」
「根性ババ色やの…」
「あん?、なにか言った?」
「あんでもあらへんわ!」
 トウジは泣きながら拳を突き上げた。
「わかったわ!、やればええんやろうが、やったろやないか!」
「そうそうその意気よ!」
「こうなったら校内一、ウサギのトップを目指したるわい!」
 だーはっはっはっと泣き笑い。
 一番になられると困るんだけどね?
 アスカはへそを曲げない程度にトウジをおだてる。
 そんな二人を、影で覗いている少女がいた。
「鈴原のバカ…」
 楽しそうね?、二人とも…
 そこの所は、後でちょっともつれてしまいそうな感じであった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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