NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':59 


 ひゅうう…
 例えるなら孤高のウサギ。
 屋上、貯水タンクの上で、カヲルは風に吹かれていた。
「やっぱりここに居たのね?」
 ニコニコとカヲルを見上げる。
「アスカちゃん…、それにレイも、どうしたんだい?」
「シンジが来てないかと思って」
 ジャキッとマグナムを構える二人。
「来てないよ」
「嘘ついてない?」
「そうかもしれないね?」
 カヲルはニコニコと笑い返す。
「カヲル?」
「なんだい?」
「大人しく捕まって」
 ふうっと大袈裟に肩をすくめる。
「知らなかったな…、そんなに僕が欲しいのかい?」
「冗談!」
「これもシンちゃんを捕まえるためよ」
「シンジ君を?」
 お互い笑みは絶やさない。
「あたしはシンちゃんが好き…」
「どうしたんだい?、急に…」
 レイが注意を引き、その間にアスカが移動する。
「この空も学校も…、シンちゃんと過ごすためにあるの」
 反対側に回り込むアスカ。
「だからあたしは、シンちゃんを捕まえるためにあらゆる犠牲を問わないの…」
「それで、僕をいけにえにすると言うわけだね?」
 嬉しそうね?
 アスカは怪訝に思った。
「なに喜んでるのよ?」
「なに…、ようやく認めてくれたのかと思ってね?」
「なにを?」
「僕とシンジ君の仲さ?」
 ムカッとするアスカ。
「お互い大事に想い合ってる、だから人質に出来ると思ったんじゃないのかい?」
 はんっとアスカは吐き捨てた。
「バカいわないで」
「そ!、友釣りって知ってる?」
「あんたをダシにして鈴原か相田と交換しようと思ってね?」
 トリガーにかけた指に力が入る。
「シンジ君の足手まといになるぐらいなら死んだ方がましさ」
「あ、そう」
 ダン!
「いま…、躊躇しなかったね?」
「うん☆」
 1メートル程真横、空中に移動しているカヲル。
「狙いも正確で…」
「威嚇なんて意味無いもの?」
「そ、そうじゃなくて!」
 アスカは焦った。
「あんたもそれ本物じゃない!」
「うん☆」
「うん☆じゃないわよ!、いったいどっから!?」
「さっきマナをす巻きにした時かっぱらったの☆」
 どいつもこいつも手段の選ばないにも程があるわよ…
 そう思いながらも、嬉々としてす巻きにしたのはアスカであった。






「なにをしとんのや?」
 早々とヒカリに捕まったトウジは、更衣室で着替えていた。
「お願い、かくまってよ…」
 ロッカーの中に身を潜めていたシンジは、そのまま戸を閉めようとした。
 ガシッとそれを邪魔するトウジ。
「え?」
「…なあ、知っとるか?」
 トウジは声を潜めて周囲をうかがった。
「賞金かかっとるで、お前の首…」
 シーンっと一瞬静まり返る。
 バン!っと戸を閉じにかかるトウジ。
「うわああああ!」
「すまん!、今月きついんや、大人しく捕まってくれ!」
「裏切り者ぉ〜〜〜!」
「ここに居たのか!?」
「ケンスケ!?」
「なんや、お前!?」
 バン!っと閉じた入り口の戸が、バンバンバンッと叩かれている。
「こらぁ!」
「出て来なさぁい!」
 シンジとトウジは一瞬自分を見失った。
「お前…」
「なにかしたの?」
「ちっがーう!」
 涙目だ。
「惣流と綾波だよ!」
「え!?」
「俺と交換に渚を渡すとか言い出して…」
「なんでまた?」
「それで俺を人質にシンジを…」
 ぴたっとケンスケは言葉を止めた。
「そうか、シンジがここに居たんなら悩むことは無いんだよな?」
 サーッと青くなっていくシンジ。
「ちょ、ちょっと!?」
 交代にケンスケに血の気が戻っていく。
「いや…、実は綾波のファンクラブからも目をつけられちゃってさ」
「なんでまた?」
「…シンジのせいだよ」
「僕のぉ!?」
「そうだ!」
 開けなさーい!
 背後の騒ぎは大きくなる。
「綾波に頼まれたんだよ、シンジのガードになれって…、なのに綾波のファンクラブに目の敵にされちゃってさ?、たまんないよなぁ…」
 ニヤッと嫌な笑いを向けられる。
 あ、あ、あ、あ、あ!
 ケンスケが力を抜いていくのが分かる。
「シンジをさし出せば、さ、わかるだろ?」
「分かりたくないよ!」
 ロッカーの外に出て慌てる。
「アホか、出口なんぞないで?」
「いいや、あるよ、あった、一つだけ!」
 ケンスケに向かって、珍しいタイプの笑みを浮かべる。
「キれおった…」
「ケンスケ!」
「おっ!?」
 放り投げられたタオルを思わず受け取る。
 バン!
 ドアが開いた瞬間、女の子達がなだれ込んで来た。
「おおおおお!」
「相田君ゲットぉ!」
「こっちによこしなさいよ!」
「うわぁあ!」
 ケンスケにとっては一生に一度のことかもしれない。
 女の子達に奪い合われるなど。
「嬉しくないぞぉ!」
「んでも顔は笑ろとるやないか?」
 胸に押し潰されてるケンスケ。
「胸って言ったって、重装備の軍服じゃないかぁ!」
 ハンター達の服は、とてもとても臭かった。


「はぁ、脱出成功…」
 そんな女の子達の足元を、這いつくばってシンジは何とか抜け出した。
「もう時間も迫ってるし、もう一度どこかに隠れてれば…」
「そうはいかないわ!」
 アスカの声がこだまする。
「千里の道も一歩から!、今日の勝利は明日の希望!、大体十歩くらいは幅跳びできる計算だから、シンちゃん一緒にベッドイン!」
 レイもかなり切れている。
「嫌だあああああ!」
 シンジは廊下を駆け出した。
「あ、こら!」
「アスカより早い!?」
 まさに脱兎のごとくと言うやつだ。
「綾波さん、惣流さん!」
「鰯水!」
「鰯水君!?」
 ぐっと親指を突き出し、追い抜いていく。
「まかせて下さい!、こう見えても人の後を追いかけるのには慣れてるんです!」
「あ、そう…」
 ガン!
 キラッと歯を光らせている間に、曲がるのを忘れて壁に激突。
「アスカ、鰯水君って…」
「ストーカーに落ちるタイプね?」
 遥か後方に捨てていく。
「それにしても…、シンちゃんに追い付けないなんて」
「この服が悪いのよ!」
 だぼだぼの上下一式。
「足が疲れちゃって…」
「向こうは網タイツだもんねぇ?」
 レイはそのあと黙り込んだ。
「…何考えてんのよ?」
「あ、うん…」
 納得いかないような顔をしている。
「シンちゃん、すね毛がなかったような…」
「そんなわけ…」
 思い出せない。
「処理したとか?」
「まさか!、ガムテで!?」
「シンジだからカミソリじゃないの?」
「脱毛剤…、ミズホに借りてたりして」
「「嫌な感じぃ」」
 ミズホが居れば、きっと「そんなの使ってませぇん!」っと泣き叫ぶ所であろう。
「こらぁ!、シンちゃんの浮気者ぉ!」
 いわれのない誤解がまた増える。
「でもアスカ?、これで良いのかも…」
「なにがよ?」
 シンジの背中が遠くなる。
「このまま追い立ててれば、誰にも捕まらないんじゃないかって」
「まあね?」
「あたし達のトップはないけど、誰にも捕まらないのなら、ね?」
「それはそうだけど…」
 嫌な予感がする。
 それが極限に膨れ上がる。
「あ!」
 シンジが立ち止まるのが見えた。
 その前に現われたのは浩一だった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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