NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':60 


「あ、シンちゃん!」
 自販機の前で鉢合わせ。
「もう上がったの?」
 レイの浴衣姿をじっと見る。
「うんっ、聞いて聞いて?、牛乳風呂に入っちゃった☆」
「牛乳風呂?」
「うん、ほら…」
 手の甲をシンジの鼻先に近付ける。
「ほんとだ…、甘い匂いがする」
 レイの手を取り、キスをするようにクンッと嗅ぐ。
「シンちゃん?」
「え?、あ、ごっ、ごめん!」
 その状態にようやく気がつく。
「ううん…、いいんだけど」
 大事そうに手を守るレイ。
 シンジが触れた部分を軽く押さえて。
 湯上がりだからかな?、色っぽいや…
 浴衣から覗くうなじが色っぽいが、シンジが見ているのは肩の角度だ。
 なで肩よりももっと下がっているように見える。
 レイって、僕のことを信用してくれてるのかな?
 同じ部屋に寝泊まりする。
 そりゃアスカ達も居るんだけど…
 部屋には二人きりだ。
 男の僕がしっかりしなきゃ…
 何をするのよと声がする。
 違う、そうじゃなくて!
「シンちゃん?」
「あ、な、なに?」
「お風呂、もう終わり?」
「うん…、また後で行こうと思ってるけど、どうしたの?」
 もじもじとしている。
「…あのね?、ここってカップル用の混浴風呂があったの」
「ふうん…、って!?」
「一緒に入って…、欲しいかなぁって」
 そそっと首筋の毛を直すレイ。
「で、でも…」
 シンちゃん、照れてる?
 嫌じゃないのは顔で分かる。
 恥ずかしそうだ。
「あ、あの、僕…」
「どんなのか入って見たいなぁって…、ね?」
 ごきゅり…
 派手に喉が鳴ってしまう。
「アスカ達には、内緒ね?」
 レイは恥ずかしさに真っ赤になって、とててててっと去っていった。


「遅いのよぉ…」
 お風呂から上がったアスカは、部屋で大の字になっていた。
「シンジ君は来なかったね?」
「なんでこないのよ、あのぶわぁか…」
 よっと起き上がる。
「それにしても…」
 浴衣の裾がはだけている。
「謹みと言う言葉を知らないようだね?」
「あんた相手に気ぃ使えっての?」
 かなり機嫌が悪いようだ。
「僕も男だからね?、魅力的な女性には裏切ってもらいたくないのさ」
「…まるで口説いてるみたいに聞こえるけど?」
「そうだとしたら、どうなんだい?」
 はんっとアスカは笑い飛ばした。
「もしそうなら、シンジだけじゃなくあたしにとっても害虫ね?」
「なら今は違うのかい?」
「ゴキブリと同じよ、いっくら退治しても湧き出て来るんだから」
「酷いね…、僕はアスカちゃんのことも好きだというのに」
「なら聞くけど…、そうやってからかってて楽しい?」
「少しはね?」
「ならあとは何の意図があるのか、ぜひとも教えてくれないかしら?」
 アスカはなにもこめないままに、凄く奇麗に微笑んだ。


「すっごいご馳走…」
「二人で食べ切れ…」
「なに?」
「ううん、なんでもない」
 後の言葉を飲み下す。
 レイだったら全部食べちゃうかもって…、言わないほうがいいよな?
「さ、食べよ?」
「うん!」
 頂きますっと箸を取る。
 中央に大きな鍋。
 他に幾つか刺し身などが並べられている。
 菜箸などが用意されているにも関らず、シンジは自分の箸を鍋の中に突き入れた。
「あ」
 カシャッとレイの箸とぶつかる。
「ごめん…」
「シンちゃん何がいる?」
「うん、えっとね…」
 自分のお椀をレイに渡す。
 裾をまくりながら受け取るレイ。
 なんかこういうのって、いいよな…
 かなり和やかな雰囲気だった。


 一方、和やかでない者もいた。
「ふえええーーーん!、シンジ様が、シンジ様がぁ!」
 カコン、カコン、カコン、カコン、カコン、カコン!
 ピン球が台から弾けて、対戦者の後ろへと飛んでいく。
「負けた…」
 惨敗した卓球部員達ががっくりと膝をついている。
「温泉と言えば卓球、ここが俺達の見せ場なのに…」
「残念だったな?」
 その肩をポンと叩く加持。
「また来年があるわよ…」
「うわあああん!」
 これかぁ…
 先程レイに質問していた女の子である。
 抱きしめるのもいいかも…
「ま、女の胸で泣くのもいいさ?」
 来年は無いけどな?
 ミズホの気晴らしにと、予算を餌に勝負を持ちかけたのは加持だった。
「それで、もう気はすんだか?」
「シンジ様が、シンジ様がぁ!」
 まだだめのようである。
「仕方が無い」
 加持は苦笑して、一枚のメモをミズホに渡した。


「ふわぁ…、食べてるだけで随分時間かかっちゃったね?」
 片付けられた料理、部屋はそれなりに広く、狭く、二人で寝っ転がるには少々辛い、絶妙な広さを持っていた。
「ねえシンちゃん?」
「なに?」
 大の字になっているシンジ。
 その脇の下辺りで、レイは小さく丸くなっている。
「あの…、ね?」
 シンジの浴衣をギュッと握る。
「お風呂…、はいろ?」
 ドキン!
「うん…」
 シンジは顔を見ないままに頷いた。


 しょうがないじゃないか…、あんな雰囲気で見ちゃったらくじけちゃうよ…
 二人で貸し切りのために、時間制になっている。
 レイってば、ちゃっかり予約してたんだな…
 シンジは先に浸かっていた。
 でもどうしよう?
 広さを計る。
 岩風呂、もちろん人工的なものなのだが、一応は室外にある。
 問題は広さだよな…
 初めはくっつかないですむと安心した。
 入って見ると…
「段差が…」
 外側は腰が下ろせるようになっている。
 そのため浅いのだ。
 見えちゃうよ…
 腰までしか浸かれない。
 必然的に真ん中に寄らなければ隠せない。
「シンちゃん…」
 ビクッと肩が震えてしまった。
「う、うん…」
 チャポン…
 背後で湯の音。
 わずかだがお湯が増える。
「えっと…」
 レイもちょっと困ってしまった。
 ひゃああああ!、ど、どうすればいいのかな?
 一応タオルで隠してはいるが、このままだとシンジの真正面に胸があると言う恥ずかしい状態になってしまう。
 入っちゃえ!
 ばしゃ!
 少々乱暴に身体を沈める。
「あ、きゃ!」
「ど、どうしたの!?」
 堅く緊張し過ぎて振り向けない。
「う、うん…、タオル取れちゃった」
 お湯が減る。
 ザァッと言う音が、レイが立ったのだと教えてくれた。
 タオル…、直してるのかな?
 違った。
 ま、いっか。
 女は度胸である。
 レイは反対を向くと、そのまままたしゃがみこんだ。
 えええええ!?
 背中にレイの背中がぴたっと引っ付く。
「ちょ、ちょっとタオルは?」
「うん…、シンちゃんだけだし、まあいいかなって」
「ダメだよ!、ちゃんとしてよ!?」
「ええ〜、どうしてぇ?」
「こ、困る、よ、恥ずかしいし…」
 真っ赤になって顔を伏せる。
「…恥ずかしいのはあたしじゃないかなぁ?」
「それはそうだけど…」
「それにシンちゃんには何回も見られちゃってるし」
「ち、違うよ、見てないよ!」
「嘘つき…」
「み、見ちゃったり…、見せられたことはあるけど」
 バシャ!
 後ろ向きにお湯をかけられた。
「な、なんだよ…」
「シンちゃん男らしくなぁい!」
「え?、な、なんでだよ…」
「見たんなら見たって…、それでいいじゃない」
「レイは…」
 少し迷う。
「それで、いいの?」
 はぁっと嘆息するのが聞こえた。
「感想…」
「え?」
「くらい、欲しいなぁって」
「うん…」
 思い返そうとして、シンジは脇腹をつねられた。
「シンちゃんのエッチ…」
 どうしろって言うんだよぉ!
 シンジは泣きそうになっていた。







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