NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':61 


 シンジ様とレイさんが…
 折り重なっている。
 ふえ?
 もぞもぞとしている。
 ふええええええ!?
 何をしているのだろう?
 ま、まさかシンジ様!?
 シンジがレイのお腹に耳を当てている。
 レイのお腹は膨らんでいる。
 うふふふふっと幸せな雰囲気。
 さらに『妄想』は進んでいく。
 シンジの家。
 その前に勢揃いしている家族。
 ゲンドウとユイ。
 シンジとレイ。
 シンジとレイは赤ん坊を守るように抱き合っている。
 そんな嫌ですぅ…
 撮っているのはカヲルらしく、アスカが文句を言っている。
 すんっと鼻をすすってから、ミズホはふえ?っと気がついた。
 はえ?
 自分は何処に居るのだろう?
 嫌々ながら思い返す。
 シンジ、レイ、アスカ、ゲンドウ、ユイ、かたつむり…
 ふええ?、かたつむり!?
 シンジの足元に転がる巨大かたつむり。
 ふえええええ!?
 突然シンジの声が聞こえた。
「ミズホはね?、塩をかぶって溶けて消えちゃったんだ」
 びえええええーーーーん!
 自分で描いた未来予想図に、勝手に最悪のシナリオを付け加えてしまうミズホであった。


第61話『エンジェルノート』


「あんたバカァ?」
 ひっく、ぐすんと泣いてるミズホ。
「ほらもう泣きやんでよ…」
 顔中引っ掻き傷だらけでハンカチを差し出す。
「でもでもぉ…」
 痛々しげな傷痕が醜い。
 傷を付けたのはもちろんアスカだ。
「ね?」
 何が「ね?」なのだか分からなかったが、ミズホは一応受け取った。
 芦の湖を見渡せる高台に来ている、家に帰る前にこちらへ寄ろうと言う話になっていた。
「シンジ様ぁ?」
「うん?」
「痛いですかぁ?」
 ミズホはそっと爪あとに触れた。
「いてっ!、だ、大丈夫だよ」
「でもぉ…」
 恐る恐るアスカを見ると、アスカは鼻で笑っていた。
「大体シンジがいけないのよ!」
 ちょっとだけやり過ぎたかと思っている。
「レイの誘惑になんか乗っちゃってさ?」
 てへへーっと照れてるレイ。
「だってシンちゃんも男の子だもんねぇ?」
「う、うん…」
「ふうん…、つまりはレイじゃなくってもいいんだ?」
「う、酷い!」
 アスカは二人の間に入った。
「酷いのはあんたでしょうが!」
「あたしじゃないもん、シンちゃんがその気になってくれただけだもん!」
 怒るレイを「はんっ」と嘲る。
「そうねぇ?、けだものだもの、だからレイ程度でもつい、むらむらっと来ちゃうのよねぇ?」
 アスカは大きく胸を張った。
「なによその言い方!」
「べっつにぃ?」
 やや胸を強調しつつ真っ向勝負。
「シンちゃあん!」
 泣き付く。
 しかしシンジはと言えば…
「ほらミズホ、あれが遊覧船だよ?」
「大きいですぅ」
「ふふふ…、シンジ君、後でタイタニックと洒落込まないかい?」
「あ、あの…、カヲル君?」
「なんだい?、シンジ君…」
 柵から身を乗り出すミズホ。
 その背後に居たシンジはカヲルにピッタリと張り付かれ、ミズホとの間でサンドイッチにされていた。
「あ、あの、腰…」
「腰が、どうしたんだい?」
 突き出すカヲル、逃げるとミズホの腰を押してしまう。
「シンジ様ぁ、むずむずしますぅ」
 赤くなっているシンジにむむむっとなるアスカとレイ。
「シンちゃん!」
「ちょっとシンジ!」
「ひっ!」
 思わず身構える。
「な、なに?」
「なにじゃないでしょ!、その節操ないのどうにかしなさいよ!」
「そうよシンちゃん!」
 胸倉をつかむ。
「シンちゃん男の子だから、あたしにクラクラッと来たんじゃなかったの!?」
 涙ぐむレイの真意を、カヲルだけが笑っている。
「「ちょっと、なんの話をしてんの?」」
「シンちゃんはあたしなんかより、カヲルの下半身のほうがいいんだぁ!」
 わーんっと泣き出す。
「ちょ、ちょっとレイ!」
「シンジに慰められてもしょうがないのよ!」
 しっしっとアスカはレイを抱きしめた。
「なんだよそれぇ…」
「あんたばかぁ?、だいたいなんでそう節操が無いのよ!」
「はぁ?」
「レイの胸だろうがカヲルのくっさい息だろうが、お構いなしに真っ赤になっちゃってさ!」
「そ、そんなこと!」
「ないっての!?、まったく!、盆地胸や腐敗臭とあたしの香水がレベル同じだなんてぇ!」
 キーッと、抱えたレイの頭を掻きむしる。
「…途中から自分の話しになってるもんなぁ」
「わかってんならねぇ!」
「あ、シンジ様ぁ、鳥さんですぅ」
「え?、どこどこって…、うわぁ!」
 ばさばさ群がられているミズホ。
「ミズホ、それ絶対変だよ!」
「そうですかぁ?」
 まもなく鳥に囲まれて、ミズホの姿は見えなくなった。


 さて一方、第三新東京市にはこの二人が残っていた。
「はぁ…」
「ん?、どないしたんや?」
 映画館を出るなりスカートを握り締めてため息をつく。
 ヒカリだ、今日はめいいっぱいのおしゃれをしている。
「…今頃はみんな、温泉に行っちゃってるのよねぇ?」
 苦笑しながら、トウジは小銭に混じった半券をいじくった。
「なんや?、行きたかったんか?」
「ん…、二人っきりで旅行かぁ…」
 ヒカリはトウジの頭から爪先までを見て、またまた大きくため息をついた。
「トウジじゃ、全然ロマンチックになれないし」
「ま、叶わん夢は見んことやな?」
 適当に笑いながら歩き出す。
「まったく、どうしてあたしってばトウジみたいのを好きになっちゃったのかしら?」
「そりゃまあ…、言葉にできへんダンディズムっちゅうもんがやなぁ?」
 ジトッと睨まれ、言葉を濁す。
「トウジ君?」
「なんでっしゃろ?」
 どうして女の子の笑顔というのは、これ程までに恐いのだろう?
「そのジャージ、たまには脱いでみない?」
「なああああ!?」
「ね?、それだけで少しは変わるかも」
「アホ言うな!、これはわしのポリシー…」
「ホントは買いに回るのが面倒なんでしょ?」
 うっと、トウジは唸ってしまった。
「やっぱりお母さんが居なかったから?」
 ヒカリは鋭い所を突いてしまった。
「…かもしらんなぁ」
 出かけてばかりの祖父と父。
「洗うの簡単やったし、服なんて買いに行くのも面倒やったし…」
「ハルカちゃんは?」
「最近は自分で買うてきおるわ、洗濯もやってくれるようになったし?」
「ならトウジも、もっとちゃんとしたもの着なくちゃね?」
 しもた!?
 ようやく誘導だった事に気がついた。
「さ、まずはシャツから見て回りましょ?」
「堪忍してぇなぁ…」
 組まれた腕を、情けなくもずるずると引っ張られていくトウジであった。


 シンちゃんはね?、シンジって言うんだ、ホントはね?
 だけどでっかいかぁら、自信を持って、あったっしっに言うんだよ?
「レイ?、幸せな家庭を作ろうね?」
「だぁ!、その歌やめなさいよね!?」
 幸せな過程かぁ…
 わざと誤解釈をして、確かに道程は幸せな方がいいのかもしれないと涙するシンジ。
「さあシンジ君?、一緒に…」
「お客さん、こまりますよぉー!」
 遊覧船、船員さんに怒られても、カヲルは船首から動かずに風を受けている。
「僕たち…、なにしてるんだろ?」
「シンジ様、シンジ様!」
 ミズホはミズホで、足元に這いつくばっていた。
「…なにしてるの?」
 怪訝そうに聞いてみる。
「こっち、こっちですぅ…」
 ズボンの裾を懸命に引っ張る。
「わかったよ、行くよ、行くから立ちなよ…」
 一応声かけとかないとな?。
「ふが!」
 その口は背後からミズホによって塞がれた。
「ひふほ?」
 ぶんぶんと勢いよく首を振っている。
 言うなって事?
 みんなは?
 アスカとレイはいがみ合い。
 カヲルは「ふふふ」と、自分の世界へ行ったきり。
 …ま、いっか。
 シンジは軽く諦めた。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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