NEON GENESIS EVANGELION
Genesis Q':61
「はぁ…、シンちゃんがねぇ?」
よしよしっとミズホを胸で泣かせながら、レイは分析するような台詞を吐いた。
バッカみたい…
焦っているのはレイの方だ。
花嫁修業だの…、お母さまに気に入られたり、お弁当とか…
一番着実に歩を進めて来たのはミズホである。
でもシンちゃん…
確かに恐いと感じる、そのセリフは取り様によっては悪い。
アスカかな?、あたしかなぁ…
どちらかを選んだ後のミズホが恐い…、そうも受け取れる考え方なのだ。
ま、シンちゃんがそんなこと考えるわけないかぁ…
ふうっとため息をついてしまう。
どうせシンちゃんのことだから…
大体予想はついていた。
船が港に帰り、観光客に混ざってシンジ達も下船する。
「……」
レイを盾にして隠れているミズホ。
アスカは「うりうり」っと、シンジの背中を押している。
「…ミズホ?」
びくっとミズホは脅えた。
「ごめん!」
この世の終わりのように、命一杯泣き出す手前まで崩れる顔。
「でも、違うから!」
「ふえ?」
ミズホは反射的に返事した。
「ミズホが嫌いじゃないから!」
「でもぉ…」
ぐしっと鼻をすすって耐えて見せる。
「シンジ君は、ミズホの何が恐かったんだい?」
カヲルは助け船を出したが…
「聞いてたの?」
薮を突いた。
「ま、話しかけられるような雰囲気じゃなかったからね?」
天井に張り付いていたというのは実は秘密だ。
「それで?」
「あ、うん…」
シンジは困るように答えた。
「一途だから…、かな?」
「はぁ!?」
怪訝そうにするアスカ。
「それならアスカちゃんやレイも…」
「違うんだ…」
開き直る。
「だってミズホは他を見ないから…」
「いいことだろう?」
「裏切れないもの…」
「あんたねぇ…」
「昨日の僕を見たろ?」
アスカもさすがに言いよどむ。
「…もし邪魔が入らなかったら、僕は」
レイと視線を合わせる。
やだ☆っと、頬を赤らめるレイ。
「そうなのかい?」
「うん…」
うつむく。
「傷つけたくないんだ」
しゅんっとする。
「どうすればいいか分からないから、恐いのかい?」
「うん…」
「なら僕じゃどうなんだい?」
ふぁさ…っとキザに髪を掻き上げる。
カヲルを中心にして背景がずれた…と思ったら、単にアスカに突き飛ばされただけだった。
ボッチャンと湖に落ちて波に沈む。
「だからってねぇ、逃げることないじゃない?」
その方が悲しい。
あたしだってそうよ…
避けられる方が辛い。
例えどんなでも。
恐いなんて言われたくない。
「でも、ミズホはすぐに泣いちゃうんだ…」
ミズホに目を向ける。
今もミズホは泣いている。
悲しいから?
違う、僕がいいかげんだから…
苦しめてる?
選ぶのはアスカ達だ!
だから求めない?
違う、流されてるだけだ!
体に?
興奮して!
心じゃなく?
僕だって男なんだ!?
奇麗事?
言いたくない…
誤解されても?
誰も残らないかもしれない。
それなのに?
みんなが愛想をつかすと思う。
それでも?
「わからなくて…、ホントに、ミズホになんて言えばいいのか、何をしてあげればいいのか…」
ふえ?
ミズホはちょっと言葉に惹かれた。
「それって、あたしとレイは放っとけるって事?」
「あ、いや…、そうかも」
「シンちゃん!」
プウッとむくれる。
「だだ、だってさ!」
ミズホには直情径行がある。
「ミズホがどうして欲しいのかなんて…、わかんないよ」
何度か迷いを見せながら、ミズホはようやくシンジを見た。
「えい!、ですぅ」
「え?」
えへへへへっと、シンジの手を両手でつかむミズホ。
「ミズホ?」
「ばっか!」
こつんとシンジの後頭部を叩く。
「アスカ?」
「ミズホって、お手軽なの…」
レイは囁くようにシンジに教えた。
「なに?」
「つまりは…」
「そういうことよ…」
手を握っているだけで、やたらと幸せそうなミズホが居る。
至福の瞬間なのかもしれない。
ミズホ…
ギュッと握り返すと、ミズホはびくっと一瞬だけ驚いた。
シンジ様ぁ〜〜〜…
だがすぐにとろけ出す。
「あ〜あ…」
「これだけでいいんだから、安いもんよね?」
なにやら温かいフィールドで包まれている港をバックに、フッと恰好をつけたままのカヲルが、そのまま波にさらわれていった。
「さ、トウジ?、次行くわよ!?」
「まだかいなぁ?、もう堪忍してぇねぁ…」
しかしヒカリの目は爛々と輝いている。
やはり女の子だ、この手のことには燃えるらしい。
「とほほぉ〜〜〜」
だが金を出すのはトウジであった。
そっかぁ…
帰りは加持の都合もあるのでみんなで電車だ。
「アスカ、嬉しそう…」
むぅ〜〜〜っとその心理を見抜こうと目を細める。
「なに考えてるの?」
「な、なんでもないわよ!」
「うそ!」
ちらっと正面のシンジに目を向ける。
参ったなぁ…
シンジの困り顔なのは、べったりとミズホに張り付かれているせいだった。
「はい、シンジ様、あーん☆」
「あ、あーん…」
銀紙を楽しそうに剥いているかと思えば、出て来たチョコをシンジの口に放り込む。
そんな行為をアスカは見逃してやっている。
「…アスカが大人しいって、変」
「してるのがあんたじゃないからでしょ?」
「ひっどーい!」
差別ぅっと訴える。
「悪意があるのと無いのとじゃ大違いなのよ!」
「ミズホだって下心ぐらいあるのにぃ…」
ぶちぶちとうつむいて不平を漏らす。
「もう、…黙って弁当でも食べてなさいよ?」
「うう…、アスカのも貰って良い?」
キラキラと光る瞳で訴える。
「…500円ね?」
「けちぃ…」
とか言いつつもちゃっかりと奪う。
「それで…」
「ん?」
アスカはシンジと靴先を突きあった。
「シンジの質問はどうなったの?」
「なにが?」
本気で忘れているシンジ。
「ミズホに聞いたんでしょ?、好きな人…」
そそっと、取られないように寄り添うミズホ。
「う、うん…、好きな人って、どんな人なのかなって」
「それはですからぁ!」
「シンジが聞いてるのはね?」
シンジの足を蹴る様にからめる。
「おじ様とかおば様とか、そう言う人達の事なのよ?」
「そうなんですかぁ?」
ふうっと一安心するが、そうよね?、っと目で尋ねているアスカにむくれる。
「どうしてアスカさんは、シンジ様と目で会話なさるんですかぁ?」
シンジとアスカは驚く様にお互いを見た後、真っ赤になって反論した。
「し、してないわよ、そんなこと…」
「今してましたぁ!」
ぱんっとアスカの足を蹴っ飛ばす。
「あんたねぇ?」
「しょうがないって、やっぱり付き合いの長さだけはね…」
「レイさんはそれでいいんですかぁ?」
「よくはないけど…」
弁当の空箱を片付ける。
「シンちゃんの愛だけは、
ヒシヒシ
と感じるから」
「シンジ様ぁ…」
ねだるような目に、シンジはレイへと口を尖らせる。
「またからかって…」
くくっと笑いを堪えている。
「ミズホって単純なんだから…」
「あんたもからかうんじゃないの!」
どんっと肩でレイを押す。
「まあまあ…、ミズホってあれよね?、基本的に害意が無くてカッコいい人が好きなのよね?」
小和田先輩とか…
「かっこいい、ねぇ?」
「なんだよぉ…」
シンジは値踏みする目に萎縮する。
「やあ、それは僕のこと…」
ぼぐっ!
…ひょっこりとレイの背後から顔を出したカヲルであったが、レイの裏拳によりあえなく沈んだ。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'
は
Genesis Q
の
nary
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nakaya
が制作しているパロディー作品です。
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