NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':62 


 ポリポリポリポリポリ…
 初体験は彼の家で。
 平均16〜17歳かぁ…
 雑誌を読みながら、人差し指でポテチを押し食う。
「あんた行儀悪いわよ?」
 アスカの部屋で横になっているのはレイだ。
「…大体なんで自分の部屋で読まないわけ?」
「ん〜〜〜、持ってくの面倒なんだもん…」
 女性向け雑誌、アスカが捨てないために溜まっているのだ。
 それを片っ端から、「恋愛コーナー」だけを熟読していた。
「どうでもいいけど、ミズホに見せるんじゃないわよ?」
「わかってるぅ〜」
 手のひらをひらひらとさせる。
 ほんとかしら?
 怪しんでしまう。
「それよりシンちゃん…、どこ行っちゃったんだろ?」
 ポツリと漏らされたレイの言葉。
 もう夜も7時になろうとしていた。


「…はぁ」
「ん〜、どったの?」
 きゅっきゅとシンジは皿を拭いている。
「どうして僕、こんな事してるのかなぁって…」
 背後ではミサトが、決して生徒には見せない恰好でビールを煽っていた。
「ほらペンペン、お皿貸してよ…」
 何故だかペンペンは涙を流してサンマを飲み下している。
「…買って来たのそのままなのに、変なの?」
 いかに普段の食事が酷いか、その現われだろう。
「でもシンちゃんって、そういうの似合うわねぇ?」
「はぁ?」
 エプロン姿で食器を片付けていく。
「将来いい主夫になれるんじゃない?」
 あまり嬉しくない誉められ方だ。
「それともやっぱり奥さんを貰いたい?」
「そんなの…」
 当たり前じゃないですか。
 それでも口に出しては反論できない。
「シンちゃん…」
 神妙な面持ちで缶を置く。
「もう一本取って?」
「結構飲むんですね…」
 当然缶を捨てるのもシンジの役目なので、気になってしょうがないのだ。
「バカ言っちゃって…、それはシンちゃんの分よ?」
「え?」
「しらふじゃ、ちょっちね…」
 頬が酔いではない火照りに染まっている。
 まったくあのぶわぁか!
 シンジを押し付けた無精髭に舌を出す。
「それじゃあ、ちょっとお話、しましょうか?」
 それも気恥ずかしい話をだ。
 ミサトはシンジを座らせた。


「あんた何食べてんのよ?」
 アスカが目を細める。
 夕食後の軽い食事。
 白いご飯に卵をのせて、醤油をだばだば振りかける。
「卵白が泡立たないように混ぜるのがコツ!」
 そう言ってレイはまたがふがふと掻き込んだ。
「…なんでそんなの食べてるんだか」
 つい白い目で見てしまうのだが、レイは気にしてはいないようだ。
 むふふ、今晩のためにたんぱく質の補給をしておかないとね?
 どうやら危険な事をもくろんでいるようであった。


「ミサトさんは…」
「ん?」
「加持さんとは結婚しないんですか?」
 驚いた事に、ミサトは平穏を保って答えた。
「この歳まで待たせられちゃうとね?」
「え?」
「覚えておきなさい?」
 まずは第一の忠告。
「待ちくたびれちゃうとね?、これでも良いかなって思えて来るのよ…」
 シンジはくぴっと苦さを味わった。
「寂しくは無いんですか?」
 ぜんっぜんとミサトは笑う。
「こうしてシンジ君達とも遊べるし、リツコや加持もそう、いつも会える所にはいるでしょ?」
 それがそれなりにやっていける距離って事なのかな?
 そう考えると、少し悲しい。
「今の楽しさを壊すほどの価値があるのかってね?、賭けて負けて、やり直しが聞く歳じゃないし」
「そんな…」
「それともシンちゃんが貰ってくれる?」
「ええ!?」
 ずがたんっと反射的に下がってしまった。
「そんなに嫌がらなくてもいいじゃない…」
 すねるように缶をいじる。
「だ、だって急にそんなこと言うから…」
「あら?、本気と思った?」
 シンジはドギマギしてしまった。
「あら、赤くなった?」
「そ、そりゃ照れますよ…」
「どうしてぇ?」
 うりうりっと足で突っつく。
「…そ、そりゃミサト先生は奇麗だし、楽しいし」
「ありがと」
 ミサトも照れるように横を向く。
 ほんと、自覚してれば恐いわね?
 うつむくシンジは何処か可愛い
「あたしもシンジ君達みたいに、元気があればね?」
「そんな…」
「もう歳かしらね?、落ちつく事ばっかり考えちゃって」
 あるいは逃げる事かもしれない。
「シンジ君…」
「はい?」
「大人みんなこんなものよ?」
 急な真面目顔に戸惑ってしまう。
「みんななにかしら後悔を持っているわ?」
「はい…」
「そして同じ間違いを犯してもらいたくなくて、押し付けるの」
「先生もですか?」
 ミサトはニコッと微笑みながら頷いた。
「そうよ?、だから教師なんてしてるのかもね?」
 そっかぁ…
 妙に感心してしまう。
「あたしが恐いのはね?」
「はい」
「あなた達が真面目過ぎるって事」
「え?」
 つもりのない指摘に戸惑ってしまう。
「あなた達のことだから、今決めちゃうとそれを絶対にしそうでね?」
 分かるような気はしてしまう。
「そう…、ですね?」
「ええ、それで失敗、ごめんなさいね?、もしうまくいかなくなった時に、そのまま壊れていっちゃいそうで…」
 もう戻らない。
 戻れない。
「本当はやり直せるのに…、それを拒否してしまいそうで、恐いのよ」
 ミサトは初めて不安げな顔を見せた。
「先生?」
「好きなのはいい事よ?、問題は何を感じて、何を大事にしたいかと言うこと…」
 わからない、と眉音を寄せる。
「ミズホちゃんに感じているのは愛情?、それとも家族愛?、女の子として見てる?、家族として見てる?、それとも妹として見てる?」
「わかりません…」
 本当にそうとしか言えない。
「アスカちゃんやレイちゃんもね?、誰へのどんな好きが一番強いのか?、それは絶対に考えるべきだわ?」
 深く考えるようにシンジはうつむく。
「おーおー、悩んでるわね?」
 ちょっとだけ元の雰囲気に戻り始めた。
「あ、いえ…」
 シンジは言葉を濁した。
「なんだか同じこととか沢山言われてるのに、情けないなぁって…」
「そんな事は無いわよ?」
 けらけらと笑う。
「中学の頃に比べれば、流されてるよりは真剣に考えようって想い始めただけでも進展してるわよ」
「そうですか?」
「そ!、だからほら、確かに後もう何年も無いかもしれないけど、今日一日ぐらいじゃどうにも変わんないわよ!」
「…そのまんまミサトさんみたいにならないようにします」
「言ったなこら!」
 軽い笑いが雰囲気を明るくする。
 シンジは派手にビールを空けた。



続く







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