NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':63 


 ふきゅう…
 隣のシンジをちらちらと見上げる。
 おかしいですぅ…
 ぼうっとしている、いくらミズホでもこれでは気付こうと言うものだ。
 アスカとレイは朝練、カヲルもまた先に行き、今日は久しぶりの二人きり。
 いつもなら浮かれてスキップしてしまいそうな所を、少しでも長く一緒に歩くために歩幅を小さくとどめるのだが、今日はシンジの方がよっぽど遅い。
 歩調はいつもと変わらないのだが、どこから足が地に着いておらず、ふらふらと安定していないのだ。
 すすす…、ぴと。
 くっついて腕を絡めてみても反応が無い。
 ん〜〜〜…
 そのまま肩に頭を預けてみる。
「…ん、え?、うわ!?、なにさミズホ?」
 ようやく気がつくと言う始末だ、ミズホは何も言わずに不満顔のままでただうつむく。
「ミズホ?」
 そんなミズホを怪訝に思うのだが、それはまあお互い様だ。
 ミズホの服は特別おかしなものではない。
 家ではともかく、レイは外でも何処かしらボーイッシュな感じを受けるものを着る。
 ちなみに家ではシンジのジーンズなどを履く事が多い。
 アスカは一貫してスタイリッシュなものを好む。
 お互い自分の体形を熟知しているからかも知れない。
 見せ方のうまい二人に対して、ミズホは極々平凡に決める。
 ただあまりきっちりと着過ぎるためか?、どこか制服のようにも見えてしまう。
「どうしたの?」
 いつもの反応が無いので、シンジはミズホを覗き込んだ。
 逃げるように顔を逸らすミズホ。
 もしかして…、見られたのかな?、今朝の…
 やましい事があると、どうしても関連付けて考えてしまう。
 ミズホの目を見れば確認できる。
 そんな直感が働いて、シンジは更に顔を寄せた。
 見計らったかの様に、くるっと回転するミズホの首。
 !☆
 頬に押し付けられる感触。
「へへへですぅ」
 顔が赤くしミズホは上機嫌さを体全体で表現した。
 つまりは全身を使って腕に抱きつくこと。
 ちょっと重い…
 右側に体を引っ張られる。
 ミズホの頭が鼻に当たって、同じシャンプーなのにアスカとは違う香りが嗅げた。
 びっくりしたなぁ、もう…
 唇を奪われるかと思ったが、そううまくは行かないもので、単に口の端から頬寄りに唇が押し付けられただけだった。


「おっはよーって、うわぁ!」
 教室に入って来たマナは、シンジを見るなりのけぞった。
 どよ〜ん…
 そんな言葉を口ずさんでいるかと思うほど、思いっきり沈み込んでしまっている。
「なになにシンちゃん、どうしちゃったの?」
 口元を手で隠し、そそっとレイに尋ねてみる。
「ん〜、それがよくわかんなくてぇ…」
「昨日のけんか?」
「違うと思う…、今朝アスカ無茶苦茶機嫌良かったから…」
 レイの表情は面白くないと言うものではなくて、仲間外れにされて憮然としていると言った感じだ。
「ははぁん…、これはあれね?」
「あれって?」
「どうせアスカが交換条件出したんじゃないの?」
「仲直りしたいならって?、ずるーい!」
 レイはぷんぷんと膨れたまま頬杖をついた。
 ちなみに全くの誤解でシンジが落ち込んでいるのは自分の節操の無さに対してである。
「だったらレイもケンカすればぁ?」
「ケンカしなくてもシンちゃんは優しいもん」
「はいはい…」
 呆れながら席へと離れる。
「ま、シンちゃんの貞操守って頑張ってね?」
 がーん!
 一体どんな要求が出されたのか?、想像するだに恐ろしくなってしまったレイであった。



続く







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