NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':64 


「きゃあああああああああああ!」
 風呂場からの悲鳴に慌てる。
「あ、アスカどうしたの、さ…」
 濡れたままキクが跳び出してきた。
 バスタオルでくるむように捕まえるアスカ。
 とうぜんアスカも濡れたままで…
「きゃあああああああああああああ!」
 また隠れる。
「見た?、見たでしょあんた!」
「あ、うん…」
「あっ!、キクちゃん捕まえて連れて来て!」
「え?」
「まだシャンプー落としてないのよ!、まったく変なとこ触るから…」
 へ、へんなとこって…
「変な事考えてないでさっさと捕まえて来る!」
「う、うん!」
 なんでわかるんだろう?
 首を傾げながら、シンジはキクを追いかけた。


「結局行って来るわけね?」
「ん〜、お母さまが服貸してくれるって言うし、化粧でそれなりに護魔化せると思うからぁ…」
 ベッドに横になったまま、レイはバリボリとせんべいをかじる。
「…あんたわかってんの?」
「ふえ?」
「そこ!、あたしのベッドなのよ!?」
「うん」
 何故だか定位置と化している。
「だったら食べかすばらまかないでよ!」
 思い悩んだ末に、レイはぱっぱと払いのけた。
「ばらまくなー!」
「え〜?」
「あんたのせいで枕に食べもんの匂いが染み付いてんのよ!?」
「あたしのじゃないから…」
「臭いっつってんの!」
「あたしには関係無いし」
「あ、そう、そう言うこと言うわけね?」
 ふっとアスカは冷笑した。
「いいわよ、レイがそうしたいのなら」
「アスカ?」
「じゃああたしはシンジの枕でも借りましょうかねぇ?、貸しもあるし」
「そんなぁ!、シンちゃんの腕枕だなんて…」
「そんなこと言って…、それでもいいわね?」
 ニヤリとアスカ。
「墓穴掘ったー!」
 苦悩するレイ。
「さぁて、それじゃあさっそくシンジと交渉に」
「アスカのバカァ!」
 慌てて掃除を始めるレイだった。


「むぅすぅんでぇ、ひぃらぁいぃて…」
「ミズホ…、キクちゃんそんなに小さくないよ?」
 ふえ?っと振り返るミズホ。
 その前にはキクが座り込んでいる。
「でもでもぉ」
 ほうっと溜め息。
「こうしていると、まるで新婚さんのようですぅ」
 ああ…、それで新聞を読めって言ってたのか。
 子供と遊ぶ母親、それを微笑ましげに見守っているシンジ。
 大体のイメージはそんなものらしい。
 シンジは大人しくテレビ欄を読み直す。
 ちなみに十五周目、四コマ漫画は十回で飽きていた。
「でもいいのかなぁ?」
「なにがですかぁ?」
 ちらりとキクを見る。
「キクちゃん帰らなくても…」
「おばさまが電話してらっしゃいましたから大丈夫ですぅ!」
 あ、そう…
 何考えてるんだろ?、母さん…
 シンジは少し心配になっていた。


「良いんですか?、あなた…」
 だが本当に何かを考えていたのはゲンドウだった。
「たまにはいい…、保護欲は愛情を育てる、なにも犬猫だけが情操教育の手段ではあるまい?」
「そう言う事ではないのですけど…」
 ユイはちょっと気にしているのだ。
「あの子を任せたご家族」
「伊達や酔狂で子は育てられんよ」
「ですがあの子が馴染もうとしていません」
「やはりレイか…」
 ゲンドウも少し思案顔を作った。
 レイにこだわり過ぎだな、あの子は…
「問題は究極の所、レイと母親の面影を何処で断ち切れるかだ」
「あなた…」
「レイに感じているものが母親と違う物なのかどうか?、それを諭せるのはレイだけだろう」
「だからといって」
「フォローはする」
 言い切る。
「わたし達は子供達に対して過保護すぎたかもしれん」
「辛い事になりませんか?」
「シンジ次第だ」
 ゲンドウはそこで話を打ち切った。


「じゃあ行って来ます」
 ビチッとスーツを着込み、少々厚めに化粧をしている。
「まるで昔の母さんみたいだ」
 ゴン!っとシンジは殴られた。
「なにすんだよもぉ…」
「若くなくて悪かったわね?、レイちゃん、あんまり無理しなくていいのよ?」
「いえ」
 ハイヒールを履きながら、レイは待っているキクを見た。
「キクちゃんも喜んでくれてますから」
 そうなのかなぁ?
 表情の変化に乏しい、どうしてもシンジには読み取れない。
「なぁにシンちゃん、まだ反対するの?」
 レイは冷たい視線を向ける。
「…だってやっぱりおかしいよ、こんなの」
「キクちゃんがそうして欲しいって言うんだもん」
「ううぅ、わたしが行きたかったですぅ…」
 険悪なムードもものともせずに、ミズホが軽く間に割り込む。
「あんたじゃバレるに決まってるわよ」
「そりゃアスカさんでしたら素で通用するでしょうけどぉ」
「なんですって!?、この!」
 振り上げた拳はシンジに落ちた。
「なんで僕にぃ!」
「ミズホの盾になるからでしょ!」
「嘘だ!、絶対わざとだ!」
「ううぅ、シンジ様がわたしを庇って下さいましたぁ、ミズホは、ミズホはぁ〜」
 酔い崩れるか喜びを舞いで表わすか混乱するほど舞い上がった揚げ句に足をもつれさせてひっくり返る。
 ゴン☆
「きゅう!、ですぅ…」
 幸せな奴…
 でっかいたんこぶをこさえたミズホに、アスカはかける言葉が見つからない。
「でもこれはチャンスよね?」
 ニヤリ…
 その笑みが恐いんだよなぁ…
 シンジはこの先の展開が読めるような気がした。


「で、読み通りになるわけだ」
 小学校、しかしさすがに入り込むのは無理と言うもの。
「クラス聞いといて良かったわ?、図面もあるし、丁度いいビルも見つかったしね?」
 振り返ると屋上へ出るためのドアがこじ開けられている。
「…これって、見つかると」
「しっ!、来たわよ?」
 シンジは「はぁあああああ…」っと魂の一部を吐き出した後、諦めて自分も双眼鏡を覗き込んだ。


 ん〜、結構みんな年上なんだ。
 小学校二年生、今は六歳。
 ん〜、二十五・六ってところかな?、あたしは何歳に見えるんだろ?
 あまり深く考えないことにする。
 実際には「顔は若いが雰囲気は落ちついている」と言った感じだ。
 背筋を伸ばすのがコツなのねん☆
 レイはキクの背中を見た。
 ん〜〜〜、大人しい、かな?
 みんなそわそわしていると言うのに、一人だけ身動きもしようとしない。
 なんだろねぇ?
 あまりに動きが無いのでつまらない。
 が、授業そのものには退屈してない。
 ふうん…、これが小学校なんだぁ。
 自分には縁の無かった場所である。
 やっぱりシンちゃんと結婚したら、こんな風に眺めて…
 見に行くなって言ってるんじゃないよ、なんでお母さんだなんて嘘吐かなきゃいけないのさ!
 夕べのやり合いを思い出してムッとする。
 もう、シンちゃんのバカ!
 ムカムカが限度を越える寸前、レイは気付かれないように深呼吸した。
 いいや、とにかくちゃんと見てあげないと。
 キク緊張している感じは見受けられない。
 あ!
 その時、小さなものがキクの頭で跳ねたのが見えた。
 あの子!
 後ろの子が消しゴムを切ってぶつけていたのだ。
 なんて奴!
 とっさに動きかけたのだが先手を取られた。
 ビシッ!
 みんな一瞬、なにが起こったのかわからなかった。
 教師がチョークを投げ付けたのだ。
 ふええっと泣き崩れる男の子。
「うわああああああああん!」
「ちょっと何をなさるんですか!」
 そりゃ怒るだろう、チョークと音から、手加減していないのは良く分かった。
「…いじめをする子はそれが楽しければまたやります、痛みを知らない子供は痛いと言う事がどういう事か一生理解いたしません」
「体罰でしょ!」
「その通りです、理屈で物事を考えるようになってからでは遅いのです、心で感じられる今だから教え諭す必要があります」
 彼はニコッと微笑んだ。
「それが不服なら、ご自分でいじめなどしないよう、教育なさったらどうですか?」
 言う言う…
 レイは呆気に取られて呆然としていた。
 言うことは立派なのだが、子供にはチョークをぶつけた理由は説明してない。
 あれじゃあ、自分がいじめられたって思うんじゃ…
 ちょっと神経を疑ってしまう。
「それじゃあ、授業を再開します」
 まあ若い先生なんだけど…
 共感半分、反感半分といった感じに、父兄側は分かれていた。







[BACK][TOP][NEXT]


新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
内容の一部及び全部の引用・転載・加筆その他の行為には
作者である私と原作者naryさんの許可または承認が必要です、ご了承ください。

本元Genesis Qへ>Genesis Q