NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':69 


「キムチらーめんって、キムチいぃ〜☆
 何だか感動しているマナが居る。
「…ようするに、どうしてもそれ、言いたかったんですね?」
「ちょっとね」
 マユミの視線はとっても冷たい。
 ずるずると歳に似合わずわびしい空気を堪能するマナ。
「…なんだか十年後ぐらいが見えてるようです」
「うっ…、マユミだってきっと同じよ」
「マナほど退廃的じゃありませんから…、引き上げの指示が来ましたけど?」
「う〜、どうせならご飯食べる前にしてくれればよかったのにぃ」
 今日もまだここに泊まりだと思って食べていたのだ。
「まあいいけどね、今日は何処で食べて帰る?」
「…まだ食べるんですか?」
「食べる時に食べておくのが戦士の基本よ?」
 …冬眠前の熊みたい。
 帰ってからのぐ〜たら具合に、どうしてもそう思ってしまうマユミであった。


「そんなに、嫌?」
「へ?」
 アスカの潤んだ瞳にドキッとする。
「あたしと一緒になるのって」
「ちょ、ちょっと?」
「生活がどうのこうのって言うなら、あたしが働くわよ、それぐらいの自信はあるし」
「何を言ってるのさ?」
「シンジのためなら少しぐらいの我慢は出来るわよ!、でもあんたはあたしと一緒にいるより…、周りを気にするの?」
 するりと組んでいた腕がほどけてしまう。
「アスカ…」
「苦労とか我慢なんて二の次よ」
「うん…」
「シンジと一緒に居たいのよ」
「そこまで…、言ってくれるの?」
 シンジの頬を、アスカの指がさするように撫でる。
「バカ…」
 辛いものを隠した微笑み。
 押し殺した感情が涙になって頬をつたっている。
「アスカ…」
 自然と唇を寄せてしまう。
 誰かの瞳が大きく見開かれた。
 裏切るのね…
 今にも口付けしそうな二人を睨む。
 ママを裏切るのね。
 キクだ。
 今の気持ちは本物でも…
 次の瞬間は分からないのに。
 くす…
 くすくすくす…
 つい笑いがこぼれてしまう。
「え?、うわ!」
「きゃあ!」
 口付ける寸前で、シンジとアスカ、二人の足元が急に盛り上がった。
「アスカ!」
 手を引いて胸に抱き込み支える。
「なんだこれ!?、ケーブル?」
「ちっ!、もうちょっとだったのに…」
「え?」
「あ、な、なんでもないわよ!」
 おほほほほほっと、ついおばさん笑いで護魔化してしまう。
「それよりこれよ!」
「あ、うん…、ネットワーク用のケーブルみたいだ」
「こんなに浅い所に埋まってるはず無いのに」
 道に沿って波打っている。
「何で動いたんだろ?、うわ!」
 またミミズのようにのたうった。
「シンジ!、キクちゃん!?」
「え?」
 ケーブルの向こうにキクが居る。
「何でこんな所に!?」
「危ない!」
 シンジの静止を聞かずに駆け抜ける。
 アスカはキクを抱いて逃げようとした。
 土手に沿ったコースが、下からの隆起に崩壊していく。
「アスカ逃げて!」
「分かってるわよ!」
 土手が崩れていく、崩壊はアスカを追いかける。
「…お姉さんは用済み」
「え?、なに?」
 キクはアスカの胸元で呟き…、そして勾玉を額へ押し付けた。


「動いたようだ」
 暗闇の中、浩一が静かに顔を上げる。
「目標はジオフロント地下500メートル、ネットワークケーブルの接合点に居る」
 浩一の言葉に答えるように、その周囲に光が灯った。
 円筒形の筒の様なものが、浩一を中心に斜めに固定されている。
「001はクラッキングを、002は補助を、003はメインバスの占有率を確保して、004は攻勢プログラムを三秒ごとに撃ちこみ、005は反撃に抗じるための防壁を展開、006はこちらのダミー情報を流して、007、008と協力して敵の回線を塞いで閉じ込めるんだ、009は…」
 ちらりと見る。
「今はいいよ、待機していて」
 どれもが黄色の液体で満たされている。
 中には浩一とそっくり同じ顔をした、男の子や女の子が表情もなく裸体を浮かべていた。


 ビクン!
 アスカの体が一度跳ねた。
 ザァ!
 腕からこぼれ落ちたキクが地面を転がる。
「アスカぁ!」
 シンジの絶叫と同時に地面の脈動も停止する。
「シ…、ンジ」
「アスカ?」
 近寄ろうとしてたたらを踏む。
「あっ!」
 振り向いたアスカの額に、勾玉を目玉とした瘤状の寄生物体が生まれていた。


 嫌ぁ!
 あたしの心を覗かないで。
 あたしの心を汚さないで!
 アスカは心の中で悲鳴を上げる。
「シ〜ンジ☆」
「なんだよもう…」
 抱きつかれたシンジは嬉しそうで…
 それがアスカに独占欲を沸き起こさせる。
 レイはいらない、ミズホもいらない…
 違う!
 あたしとシンジだけでいいのに。
 こんな事思ってない!
 他には誰も…、誰も。
 嫌ぁああああああ!
 アスカの心を、アスカが裏切る。


「アスカ!、あ、なに?、え…」
 ゆっくりと、まるでゾンビのようにうつろな表情の老人が、男が、子供がシンジ達を取り囲む。
 アスカ…、なの?
 アスカがやっているように見えなくも無い。
 違う、アスカじゃない!、だけど…
 すっかり囲まれてしまっている。
 どうすればいいの?、どうすれば…
 ゆっくりと包囲する輪は小さくなる。
 彼ら彼女らの額には、アスカと同じく勾玉がはまっていた。
 本来はここを歩き、何処かへ行ってしまう人達だった。
 姿が見えなかったのは、誰かによって操り人形にされていたからだ。
 どうしよう…
 アスカを置いては逃げられないが。
「!?」
 アスカが右の手を持ち上げた。
 あれは…
 次に来る攻撃は知っている。
「やっぱり!」
 肘から先がぼこぼこと盛り上がり、手の甲へ向かって収束していく。
 ビシュン!
 瘤が割れ、ピンク色の鞭が伸びた。
「アスカ!」
 アスカの額に苦痛の皺が寄っている。
 筋組織を強引に鞭のように使ったのだ。
 ビシ!
 鞭はシンジの真隣を打った。
 …うまく動けないみたいだ。
 やはりマナと連絡を取れば良かったと悔やまれる。
 あの勾玉が怪しいんだけど…
 壊してもアスカが無事であると言う保証は無い。
 その確認だけでもしておけば良かったと後悔する。
 今は避けられるけど、このままじゃあ…
 昨日のような都合の良い援軍は期待できない。
 このままじゃアスカが!
 シンジは今だ気がついていなかった。
 いつの間にか、キクの姿が消えていた事に。


「あれは…、アスカにシンちゃん!」
 河までにはまだ距離がある。
 二人はそこへ辿り着くためにビルの屋上を跳んでいた。
 もちろんレイの体をカヲルが抱いて。
「カヲル!、なにがどうなってるのよ、ねえ!」
「…予測が的中したと言う事だよ」
「やっぱり夕べ…、そんなに酷い事があったの?」
 風に髪が流れ、普段は見えないレイの耳が見えている。
「力というのは不幸を招くものさ、大なり小なりね?」
「なんのこと?」
「…アスカちゃんの意識を感じないかい?」
「アスカの?、だってアスカのなんて…」
 言いつつもかすかな悲鳴のようなものを聞き取る。
「アスカ?、どうして!」
「勾玉で無意識領域が拡大している」
「は?」
「アンテナだよ、自我意識の根本、欲求、欲望を刺激され、精神の壁が崩壊しようとしているんだ」
 そこから漏れ出した思念が声のように響いているのだ。
「そんな事に…、どうして守らなかったの!?」
「理由は幾つかあるよ」
 次のビルの貯水タンクを踏み付ける。
 ダン!
 再び跳躍。
「キクちゃんに勾玉を手放してもらいたかったのさ」
「キクちゃん?」
「キクちゃんも影響を受けていたからね?」
 不自然なほどの大人しさ。
「同時に彼女は鍵でもあったんだよ」
「鍵?」
「受験の時の騒ぎを覚えているかい?」
 少しだけ記憶を探る。
「あっ!」
 いま向かっているのはその下流に当たる場所だ。
「あの時にもキクちゃんのと同じものが関っていてね?」
「…それで」
「さあ、シンジ君達を助けるよ?」
 そう都合よく行くのかしら?
 レイは少しだけ不安を感じた。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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