NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':72 


 校舎を出る、レイとミズホは別クラス。
 いつものことよね?
 でもいつも一緒にいる親友が居ない。
 独りぼっちの下校コース。
 目の前にカップルが居た。
 シンジ…
 声を掛けようと思う。
 シンジとレイ、二人はとても仲がいいように見える。
 …なによ。
 今までと同じだ。
 別に二人は恋人のようにべたべたしていない。
 少しのすき間を開けて、友達として並んでいる。
 ふざけている時とは違い、怒るような要素は無い。
「そうよ!」
 なにべたべたしてんのよ!
 そう怒鳴り付ければいいだけのこと。
 これもまた同じように、シンジの弁解が聞けるはずだ。
 なんでよ!
 でも足が動かない。
 同じなのに!
 変わったのは自分の心。
 嫉妬心が芽生えると同時に行動、殲滅。
 それがあたしってもんでしょう!?
 だが足はすくんでいた。
 何が恐いのよ!
 それはあの夢。
 あさましい自分を自覚したこと。
 シンジを怒って、レイに噛みついて…
 そしてシンジの腕をとって?
 レイを冷たくあしらうの?
 あたしって、嫌な女よね…
 みんなもそう思ってるのかしら?
 顔を上げればトウジとケンスケに捕まっている。
 あ…
 今なら。
 足が動いた。
「あたしも行くわよ!」
「アスカ?」
 驚きの顔。
「まさか嫌とは言わないでしょうねぇ?」
 お願い!
 言葉の外にある思い。
 一人にしないで。
 みんなと居たいの!
 ここに居てもいいのだと確認したい。
 あたしを嫌わないで!
 アスカは悲鳴を上げていた。






 アスカが自販機のコーナーへ消えるのを待って、レイはシンジを引っ張った。
「え?、なに…」
「これやりながら聞いて?」
 ガンアクションゲーム、「オペレーション・ウルフ・ザ・ワールド」
 ポリゴンの人間に向けて銃を構える二人。
「アスカなんだけど…」
「うん…」
 この間以来おかしい。
 レイよりもシンジの方が、その明確な時期を認識している。
「元気が無いし…」
「避けられてる」
「え!?」
 レイが驚くが、その声もゲームの音が消してくれる。
「家でもさ…、そんな感じがしない?」
 シンちゃんもなんだ…
 黙り込む。
 テレビを見ていようが、ゲームをしていようがその輪の中には居ない。
 シンジとレイとミズホが遊んでいても、アスカは部屋の隅で漫画を読んでいる。
「でも近くにはいるんだ…」
「なにがあったのかしら?」
「わかんないよ、そんなの…」
 しばし無言。
 集中していなかったためか、ゲームは酷くあっさりと終わってしまった。


 プシュ…
 プルトップから吹き出した炭酸が手を濡らす。
 アスカはそれを舐め取りながら視線を動かした。
 あ…
 わずか一・二分。
 たったそれだけの間に、二人が一緒に並んでいる。
 ゲームしてるだけじゃない!
 邪推と分かっていても、それ以上の理由をこじつけてしまう。
 なに話してんのかしら?
 近寄れば分かること。
 足を踏み出しかけて、停まる。
 何だよもぉ…
 いつものように笑ってくれると思う。
 でも行けない。
 アスカ嫉妬してるぅ。
 幻聴が聞こえる、レイの冗談だ。
 だめ!
 今のアスカには洒落にならない。
 いつものように怒りが沸いて、足を動かそうとして、…前には無かったブレーキを掛けてしまう。
「…どないしたんや?」
 無反応。
 そして溜め息。
「あたし、帰る」
「さよか」
 軽く見送る。
 トウジは追おうとせず、シンジ達にも教えようとはしなかった。






 夕日から暗闇に変わる境目をアスカは歩く。
 いつもなら颯爽としているはずだったが、ここ最近はどこか憂いを含んでいる。
 俯き加減に顎を引いて、その髪もどこかくすんで見えた。
「目標確認…、ってところですか?、タタキさん」
 街中、アスカを着けるのはカヲルとタタキだ。
「ようやく一人になってくれたか」
「個人的には気が進みませんね…」
 少し早足で距離をつめる。
「この話し、持って来たのは君だろう?」
「時期…、というものがありますよ、今の彼女は機嫌が悪い」
 後一歩の所まで二人は近寄った。
「まあなるようになるさ」
「なるんじゃなくて、するつもりですね?」
「計画に遅れが目立ち始めたからな?、さて…」
 すぅっと息を吸い込む。
「やあ、アスカちゃんじゃないか」
「え?」
 トボトボと言った感じの歩みを止める。
「あ、タタキさん…、に、カヲル?」
 なんとなく「一緒に帰るかい?」と尋ねられそうな気がしてアスカは目を伏せた。
 その様子に「やっぱり」と視線をかわすカヲルとタタキ。
「ちょうど良かったよ、アスカちゃんに話があってさ」
「え?」
「カヲル君にアポを取ってもらえるかって頼んでたんだ、ちょっと、いいかな?」
 何処となく営業口調になっている。
 アスカはカヲルを見た。
 カヲルから家を連想する。
 先に帰っちゃうなんて酷いや。
 どうしたのアスカ?
 聞かれても困るし、答えにも詰まってしまう。
 だから。
「分かりました…」
 アスカはタタキの誘いにOKを出した。






「アスカ…、変だよね?」
「うん…」
 暗い夜道を二人で帰る。
 時間的にはまだ六時半だ、それほど遅いと言うわけでも無い。
「ほんまにわからんのか?」
 トウジは何処となく苛付いている。
「原因は…、わかってるんだけど」
「え?」
 レイが驚く。
「多分、この間の…」
「そっか…」
 原因は分かるが、それが何をもたらしたのかは何も分からない。
「シンジさぁ、惣流と遊んでる?」
「ぼく?」
「最近、綾波と一緒だろ?」
 二人は顔を見合わせる。
「そんなことはないよ…」
「ううん…、そうだわ」
「そっかな?」
「だってアスカが入って来てくれないんだもん」
 間に。
「そうなのか?」
「ええ…」
「そうだね、誘っても「いい」って言って避けられてるし…」
 トウジは深く首を捻る。
「なんやそりゃ?」
「でも一緒にいるんだよな?」
「うん…」
「何も言わないと今日みたいに割り込んで来るんだけど…」
「誘うとさ、いいって言われちゃうんだ」
「…なんやはっきりせんのぉ?」
「なんだぁ、またシンジが綾波をひいきしてるって怒ってるのかと思ったよ」
 苦笑するケンスケ。
「わしもや、シンジが相手しとらんのかと思たわ」
 そんなことは…
 うなだれるシンジとレイ。
「アスカ…、先に帰ってるのかなぁ?」
 レイはシンジの独り言に、少しの不安を募らせてしまった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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