NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':73 


「レイ…、ちょっと良い?」
 おずおずと襖を開ける。
「ん〜〜〜」
 むくりと起き上がるレイ。
「ごめん、寝てた?」
「なにぃ?」
「ちょっと、ね…」
「わかったぁ、じゃあ、お休みぃ」
「寝るなぁ!」
 取り敢えず突っ込むアスカであった。


GENESIS Q'73
「空みて歩こう」


「で、なぁに?」
 ベッドに座り直すレイ。
「これ見てくんない?」
 アスカはその横に腰かけ、例の脚本を手渡した。
「これって?」
「ん〜、タタキさんが、ちょっとね…」
「ふぅん…」
 パラパラとめくる。
「あすかちゃん…、アスカも出るの?」
「予定…、になってるでしょ?」
「小さく書いてあるけど…」
 キャストでは一応そうなっている。
「ふぅん…、アスカ、こんなのに興味あるんだ」
「ないわよ…」
「ふへ?」
「アルバイト、代役に困ってるからって…」
「そうかしら?」
「え?」
 レイの瞳が急速に鋭さを増す。
「それ、おかしいって」
「そう?」
「うん…、だってあすかちゃん、まだ中学生でしょ?」
「まあね…」
 わずか一・二年の差だが、その格差は身体的特徴に現われている。
「ちょっと歳が上がったくらいなら、誰かにカツラ着けて化粧でもさせれば良いじゃない」
「そんなに簡単なの?」
「テレビドラマでしょ?、映画ならメイク使えるんだし、誰もそこまで見ないって」
 パンッと脚本を叩く。
「…そうね」
「これ、タタキさんに頼まれたのよね?」
「うん」
「むぅ…」
 更に深く考え込む。
 少しだぶついたパジャマのせいか?、それでも可愛さは変わらない。
「何かあるような気がする…」
「何かって…」
「だってタタキさん、妙にあたし達にこだわってるもん」
 契約もしていない素人にこだわるのはどうもおかしい。
「あんたは…、そうでしょうけど」
「ま、ちょっとだけアドバイスしてもいい?」
 アスカの瞳を覗き込む。
「やめたら?」
「なんでよ?」
「別にやってみたいってわけじゃないんでしょ?」
「うん…」
 レイは溜め息を吐く。
「アスカ…、あすかちゃんの代役なのよ?」
「わかってるわよ」
「わかってない」
 睨み付けるように目を細める。
「あすかちゃんは中学生だけど、アスカは高校生よね?」
「当たり前じゃない」
「アスカって、あすかちゃんに似てるわね?」
「ええ…」
「つまりアスカって、未来のあすかちゃん像なのよ?」
「へ?」
 溜め息吐息。
「アスカのこの胸…」
「ひゃん!」
「あすかちゃんの代わりにウケるわよ?」
「ふざけないで!」
「ふざけてないって、きっとあすかちゃんのファンが転んで来る…、あすかちゃんの代わりにね?」
 アスカはようやくわかったのか?、不意に嫌そうな顔をした。
「そっか…」
「やりたいわけでも無いのに、ちょっと誘われたからって軽く引き受けていいの?」
 先程の言葉は冗談だとしても。
「結構真剣よ?、俳優さんって特に」
「ええ…」
「それなのにアルバイト気分で混ざってていいの?」
「失礼…、かしら?」
「相当、かなり」
「う〜ん…」
 首を捻る。
「それにぃ、みんなからもあすかちゃんの代理とかそっくりさんとか呼ばれるようになるのよ?」
「それはちょっと…」
「じゃあ逆にあすかちゃんを食っちゃう?、あんなに頑張ってるのに…」
「うっ…」
 以前会った時のことを思い出す。
「よっく考えた方がいいよ?、きっと…」
 その最後の一言のために、アスカは夜更かしの上寝坊していた。






「シンジぃ!」
「トウジ?」
 教室の外から手招きしている。
「どうしたの?、珍しいね…」
 廊下に出るとケンスケも居た。
「今日空いてるか?」
「別に用事はないけど…、なにさ?」
「すまん!、面子足らんのや」
「面子って…」
「バンドだよ、軽音部の」
「ああ、…またやってるの?」
「ちゃうちゃう」
「頼むっ、この通り!」
「はぁ?」


「…ってわけでさ?」
「嫌よ、面倒臭い…」
「頼むよぉ」
「今日だけで構わんのや」
「そう言うナンパって、多いのよねぇ?」
 アスカは確認を求めるようにシンジを見た。
「僕も付き合うんだ」
「なんでよ?」
「ツインギターを試してみたいんだって」
 それについては興味があるらしく、シンジも少しうずうずとしている。
 ちなみにアスカはキーボードとコーラスだ。
「レイはどうしたのよ?」
「バイトだって、それにレイ、キーボードなんて弾けないし」
「はぁ…、もう、しょうがなわねぇ?」
「すまん!」
「しかしヒカリがねぇ?」
 くすくすと笑う。
「そんなおかしいか?」
「すごいぞぉ?、委員長がポニーテールで鍵盤叩くんだから」
「それ、今度見せなさいよね?」
「わあっとるって」
「惣流には内緒だって言ってたんだけどなぁ…」
 キーボードはヒカリだったのだが、今日は都合で練習に出られないのだ。
「ちゃんと情報は伏せてあるから、覗きはいないよ」
「あんたもカメラ回して売るんじゃないわよ?」
「お見通しかぁ」
 ケンスケはちえっと小さく漏らした。






 んっ…
 コホンと咳払いの後、レイはレコーディングを開始した。
「シンジ君の作詞作曲ねぇ…」
 レイが歌っているのは、結局レイへのプレゼントと言うことになってしまった、あの歌だった。
「どうせならファーストトラックでも良かったんじゃないか?」
 タタキは編曲後のチェック中にそう尋ねた。
 ファーストにしては暗いし、それにシンちゃんの許可取ってないから。
 レイはテヘッと口にしている。
「タタキさん、終わったよぉ」
 意識を現実に取り戻す。
「お疲れ、これでデビューってことになるけど、ほんとにしない?」
 にぃっと笑い返すレイ。
「やりません」
「売り上げが変わるんだけどなぁ…」
「別に有名になりたくないもん」
「そのセリフ、下手に口にするなよ?」
「わかってるもぉん」
 ふんふん♪とヘッドフォンを被り、いま音入れしたばかりの歌をチェックする。
 レイは初ディスクのためのキャンペーンを拒否したのだ。
 ま、今回の狙いはアスカちゃんだからな…
 この歌はドラマのエンディングに使われる事になる。
 もちろんその事実はレイも知らない。


「あーもぉ、嫌ぁ!」
 バンッとキーボードを叩くアスカ。
 ピヒャー!っと間抜けな音が出る。
「そこぉ!、何回言ったら分かるのよ!」
「アスカ落ちついて…」
「ダメよ!」
 シンジを一喝、ギロッとギター兼ヴォーカルのマサシと言う二年生を睨み付ける。
「そう言ったってアスカちゃん…」
「だぁ!、馴れ馴れしいのよ、下手くそのくせにぃ!」
 ちなみにアスカは大和マサシの事を知っていた。
 つい最近告白されたのだ、この金髪頭から。
「そうそう、俺達プロじゃないんだから…」
「逃げてんじゃないわよ!、それにツインを試したいからってシンジを誘ったんでしょうが」
「ま、まあそうなんだけど…」
 ちなみにシンジは余裕しゃくしゃくで弦を弾いている。
「僕だって初めてなんだからさ…」
 この曲が。
「そのわりに余裕あるじゃない?」
 取り繕ってんじゃないわよ。
「うっ…」
 目で射殺される。
「で、でも合わせるって難しいから…」
「あんたねぇ…、それだけ手ぇ抜いてんのに、これ以上どうするのよ?」
「はぁ…」
「先輩にリズムだけでも合わせてもらうしか無いじゃん!」
 マサシのギターは、まったく趣味の域を出ていなかった。
 メトロノームを使わなくても分かるほどテンポがずれているのだ。
「遊びでやってんなら、大人しく練習休みなさいよ!」
「アスカ言い過ぎ…」
「シンジは黙ってて!」
 一同を睨み付ける。
「あんた結局、真面目に考えたこと無いんでしょ?」
 マサシを睨み付ける。
「俺は真面目だって…」
「なにがよ?」
「いや、色々と…」
 などと曖昧にてれてれ笑う。
「…やってらんない、シンジ、帰るわよ?」
「え、でも…」
 シンジはおろおろと全員の顔色を窺う。
「恰好いいからって見せ掛けばっか磨いてる奴らに付き合う必要無いわ」
「惣流…、そんなに嫌わなくてもいいだろう?」
「あんたあたしがなんで断ったかわかってないわね?」
 すっと目を細める。
「なんだよ…、碇と付き合ってるからか?」
「見せ掛けだけで中身が無いからよ」
 そう言って、アスカはシンジの腕を取り引っ張った。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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