NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':74 


『それでは、今日のゲストはとうとう、いいえ、ようやく芸能界入りを表明した惣流アスカさんでお送り…』
「あ〜あ…」
 レイは久々の「ユイママ特製弁当」をぱくつきながら、放送部によるお昼の放送を聞いていた。
『ええそりゃもうなんだか裏切れないほど期待が高まっちゃってぇ、あたしは別に興味ないんですけどぉ…』
「アスカ、自棄になってない?」
 横目でシンジに尋ねてみる。
「みたいだね?」
「嫌ならやめときゃいいのに…」
「事情が色々とあるのさ、彼女にもね?」
「カヲル君!」
「やあ」
 へらへらと笑っているが、カヲルはいま登校して来たばかりである。
「もうお昼よ?、何しに来たの…」
「色々とあってね?、そうそう、アスカちゃん、多分しばらくの間は学校に来れなくなると思うよ?」
「うそ!?」
「そうなの?」
 二人のそれぞれの反応に、カヲルは鷹揚に頷いて見せる。
「スタジオは第二東京だからねぇ…、今度のキャストには学生が多いから、なるべく先に詰めて撮るんだそうだよ」
「詳しいのね?」
「僕も行くからね?」
「「ええー!?」」
 二人の大きな声に、何事かと皆振り返る。
「カヲル君まで!?」
「アスカちゃんとの約束でね?、ボディーガード兼付き人だよ」
「そうなんだ…」
「カヲル、まさかアスカに手を…」
「あまり良い冗談とは言えないねぇ、それは」
 二人を余所に、シンジは考えるようにうつむいている。
「どうか…、したのかい?」
「ん…、どれぐらい居なくなるのかなって思って」
「そうだねぇ…」
 カヲルは謎のメモ帳を取り出した。
「長くて一ヶ月って所じゃないのかい?」
「…ミズホも居なくなるんだ」
「そうかい、それは…」
 カヲルはちらっとレイを見た。
 らっきー☆、一月シンちゃん独り占め!
 ぶいぶい☆っとやってしまいそうな浮かれた心を押さえ込んでいる。
「心配だねぇ…」
「え?」
「レイと二人っきり、なんだから」
「あ…」
「襲われないように、気をつけるんだよ?」
 カヲルは目の端に、「ふにゃ?」っと起き上がった寝ぼけ眼のマナが映った。






「まったくもう!、何であたしがこんな…、シンジ、それ取って!」
 言われた通りにCDを渡すと、アスカは鞄の奥に詰め込んだ。
「大荷物だね?」
「一ヶ月もホテル暮らしなのよ?、これぐらいいるわよ!」
 怒りながらの荷作りだ、アスカの部屋はひっくり返され、普段の整頓からは逸脱していた。
 もっとも、ベッドとマットレスの間にレイの隠し財産、「ノシイカ」などが見つかったりして、一応一悶着あったのだが…
「静かになるね?」
「寂しい?」
 シンジにほんのちょっとだけ上目を使う。
「ん…、だってみんな居なくなっちゃうから」
「レイが居るでしょうが」
 再びぎゅっぎゅとバッグに詰め始める。
「レイもバイトが忙しいからね…、どうしよう、久しぶりにトウジ達と遊ぼうかなぁ」
 ゲームセンターに行って、買い食いをして、CD屋を回って…
「懐かしいでしょ?」
「レイやミズホが来てから、行かなくなったもんなぁ」
 苦笑する。
「でもヒカリが居るし、ダメなんじゃない?」
「なんでさ?」
「ばぁか、鈴原と熱々で帰るからに決まってるでしょうが」
 そっかと納得。
「独り者は辛いなぁ…」
 アスカはその一言に眉をひそめる。
「あんたバカぁ?、あんたが一人にしぼれば良いだけじゃない!」
「そんなこと言ったってさ…」
「なによ?」
「なんでもない…」
「あんたねぇ!」
 立ち上がる。
「そんな顔して「なんでもない」って言ったって、気にしてくれって言ってるようなもんじゃないの!」
 ビシッと指差し。
「さあ!、さっさと白状しなさいよ!」
 でも…、っとそれでもシンジは迷う。
「よくわからないんだ」
「はぁ?」
「アスカと、レイ、ミズホ…、ねえ?、選ぶってなに?」
「は?」
 ぽかんとする。
「なにって…、誰が一番かって事でしょ?」
「だからぁ、その一番ってなにさ?、何が一番なの?」
「それは…、そう!、色気とか!」
 シンジの脳裏に、ビキニのアスカ、風呂上がりのレイ、生け花をしているミズホが映る。
「うう…、ん?」
 首を捻る。
「勉強を見てくれるとか、毎朝起こしてくれるとか、色々とあるでしょ?」
「…なんかそれって」
 全部アスカが有利なんじゃ…、と言いかけて、アスカの目が笑ってない笑みに寒気を感じる。
「とにかく!、つまりまだ誰もあんたを虜に出来るような魅力が無いって事よ」
「そんなことはないよ!」
「へぇ?」
 ニマッとアスカ。
「じゃあ、魅力、あるんだ?」
「あ…」
「ねぇねぇ?、例えば?、あたしは?」
「いや、あの…」
「もうっ、こういう時は照れないではっきりしなさいよ!」
「じゃ、じゃあ…」
 無意味にごくりと喉が鳴る。
「アスカって…」
「ん?」
 数秒の無言。
「なによ…」
「アスカって、さ…」
「あーーー!、ずるいアスカ!、なにシンちゃんといちゃついてるのよ!」
 ちちぃっと風呂上がりのレイに対して舌を打つ。
「良いじゃない!、あんた明日からシンジと二人っきりなんだから」
「えへへぇ☆」
「だぁかぁら、今日のシンジはあたしのもんよ!」
「ダメぇ!、抜け駆けしないって誓約書書かせたくせに…」
「サインする代わりにマドレーンのケーキ引き換え券持ってったでしょうが!」
 むむむっと睨み合う。
「あ、あの、二人とも落ちついて…」
 シンジははぁっと、内心で溜め息を吐いた。
 ついそんなことないって言っちゃったけど…
 実はそんなに深くは考えていなかったのだ。
 よかった護魔化せて。
 動悸を落ち着ける。
「それにしてもさ、撮影ってまだ先なのに、大変だよね?」
「まったくよ!」
 先に基礎だけでも勉強しておく。
 そのために急ぎ第二東京へ移る事になったのだ。
「あ〜あ、これでアスカも有名人かぁ」
「なに言ってんのよ?、知名度じゃあんたの方が上じゃない」
「んでもねぇ?、あ、ほら、アスカ本当に芸能人になっちゃったりして」
「ならないわよ」
「俳優さんとかアイドルの子と「熱烈関係!?」なんてすっぱ抜かれてさ!」
「されないっての!」
「住む世界が違っちゃって、可哀想なシンちゃん!、捨てられちゃうのね?」
「あんたねー!」
「でもだいじょうび☆、シンちゃんには白衣の天使様がついてるの、ちゃんとお注射してあげるね?」
「恋の病ってわけね?、じゃあシンジはあたしに惚れてるってことなのね?」
「違うもーん!」
「自分で言った事でしょうが!」
「そんなの却下ー!」
 …まあ、明日からしばらく見れないと思えば。
 しかし近所迷惑な大声であった。






 翌日早朝。
「それじゃあ行って来るわね?」
「うん…」
「まったくもう!、見送りぐらいちゃんとしなさいよねぇ?」
 しょうがないじゃないか、まだ眠いんだから…
 パジャマ代わりのスウェット姿で見送り、シンジはちゃっかり寝直した。


 学校。
「…どしたの?」
 ぼうっとしてる時のシンジは、本当にほけぼけっとしてるか、何かをじっと考えている。
 そう知っているから、レイは何となく問いかけた。
「うん…、アスカもミズホもいないのに、なんだか変わらないなぁと思って…」
 元々クラスが違うのだから、下校を共にしなければ当たり前だろう。
「そうだね…」
 それに部活の早朝練習などで、時間が合わずに登校も別と言うのが常だった。
「でも家に帰ると、ね?」
「そっか…」
 別に僕が薄情だからじゃないんだよな?
 シンジはそれで納得した。
「おい、碇、いるかぁ?」
「大和先輩?」
「ちょっと…」
 マサシは教室の外から手招いてシンジを呼んだ。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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