NEON GENESIS EVANGELION
Genesis Q':74
「なんですか?、話って」
男子トイレへの呼び出し。
トイレがタバコ臭いのは何故だろうか?
「惣流さん、テレビに出るんだろ?」
「…らしいね」
「とぼけんなよ!」
ガンッと便器を蹴り付ける。
「お前、青葉さん達になに言ったんだよ?」
「なにって…」
「俺のことチクッたろう!」
「そんなことしてないよ!」
「嘘吐け!、大したテクも持ってないくせに偉そうに…」
「偉そうって…、別にそんなんじゃ」
「じゃあなんだよ!」
「バンドのみんなが可哀想だなって…」
マサシのこめかみに血管が浮かんだ。
「どういう、意味だよ…」
剣呑な表情、だがシンジは怯まない。
「だってみんな頑張ってるじゃないか!、一生懸命練習してさ…」
「俺だってそうだ!」
「先輩はモテたいだけで、ちっとも頑張ってないじゃないか!」
「んだとう!」
がたんとシンジを個室のドアに押し付ける。
「怒るくらいならみんなの事も…」
「偉そうに命令すんな!」
「ちょっと待て…」
ぎぃっと、その扉が開く。
「校長!?」
「加持さん…」
マサシはシンジの馴れ馴れしさにギョッとする。
「あ、これは!」
「弁解はいい、なあ、シンジ君」
「はい?」
「まあシンジ君の言い分も正しい、でも彼の言う事にも一理ある」
「そ、そうですよね!」
「ここは一つ、勝負してみればどうだ?」
「「勝負?」」
二人は顔を見合わせる。
「ああ、タタキが良い新曲が無いか探してるんだ、どうだ?、二人で聞いてもらっちゃ」
「タタキって誰です?」
「アスカちゃんを推薦した奴だよ、結構力を持ってるし、それに彼の目にとまれば、アスカちゃんとも上手くいくかもしれないぞ?」
なるほどっとほくそ笑む。
しかしシンジは逆に冷静だ。
加持さん…、どうしてアスカと先輩のこと知ってるんだろう?
気にはなる、が、問いただすほどのことでも無くて、疑問は埋もれる。
「ようし碇!、俺の歌、聞かせてやるぜ!」
「いいけど…」
「あ、当然オリジナルだからな?、コピーはなしだ」
「当然!、で、いつやればいいんですか?」
「そうだなぁ…、明後日、スタジオを取らせるよ」
「よし碇!、お前の方がくだらないって、教えてやるぜ!」
…どうしてそんなに熱くなってるんだろう?
シンジは「はぁ…」っと、溜め息を吐いた。
●
別にプロになりたいわけじゃないんだけどなぁ…
シンジは憂鬱な気分でクラスに戻った。
真面目にはやるし、曲だって書き始めている。
でも自分を磨くための手段であって、目的ではない。
「これじゃあ、アスカのこと言えないよなぁ…」
どういう事になったのか聞いたレイは、そんな呟きに首を傾げた。
おかしい、よね?
例のドラマのエンディングに、シンジの曲を使うことは決定している。
いまさら勝負って、なにそれ?
事後承諾?、話の順番を入れ替えれば正当な理由で選出した事にもなる。
シンジが負けることはないだろうが…
それにしても出来過ぎ…、加持さんは知らないの?、ううん、タタキさんから聞いてるはずだし…
シンジの曲を使う事を。
じゃあ何?、どうしてけしかけたりするの?
勝った方の曲を使う。
イコールCD化。
シンちゃんを公然と巻き込むために?
考え過ぎかもしれない。
でも…
アスカ、カヲル、シンジ、それに自分。
乗せられてる?
良いように誘導されている気がする。
出来過ぎ!、きっとなにかあるんでしょうけど…
一番妖しいのはカヲルなのだが。
…第二東京に行っちゃってるし。
これまた当分は帰ってこない。
どうしよう…
レイは相談相手を見付けられずに、ちょっとうろたえ気味に悩んでいた。
●
「それで相談に来たってわけ?」
コクリと頷くレイ。
「考え過ぎとちゃうんか?」
「いやぁ、そうとも言えないぞ?」
視聴覚室で妖しく密会を開いているのはトウジ&ケンスケ+レイ。
「そりゃどういうことや?」
「タタキさん、今までは俺を通してくれてたのに、今回は何も無かったんだぜ?」
「仕事やしとちゃうんか?」
「秘密は守るよ、渚が交渉してるってのも気になるし…、それに」
「それに?」
「惣流の記事だよ、いくらなんでも普通本名とか学校名載せるかぁ?」
う〜んっと三人揃って首を捻る。
「普通科の惣流を一ヶ月も休ませるしさ、これでもう出席単位足りなくなるぞ?」
「あ、それは加持さんがなんとかするって…」
「それにしても授業はどうするんだよ?、テストまで免除はされないんだろ?、バイトのおかげでどれだけ成績落とすんだよ」
「惣流は学年首位に近いしのぉ」
「遊んでなかったら進学組に行っててもおかしくないんだぜ?、変だよな、絶対」
うふふふっと、眼鏡が異様な輝きを放ち始める。
「あかん…、逝ってもうた」
「え?」
引いてしまったレイは大粒の汗を流した。
「俺の情報網の中で好き勝手されて黙ってられないさ、そう言うわけだから、任せてもらうよ」
どういうわけなんだろ?
眼鏡の輝きは反射光ではなく、どう見ても内側からの輝きだった。
一方、シンジはシンジで喫茶クローバーに顔を出していた。
「そっか、大和と…」
ふむ…っと青葉は考える。
「でもオリジナルなんて…」
「あれがあったじゃないか?」
「この間聞いてもらった奴ですか?、あれはまだダメですよ…」
「そうか?、ならもう一つの方か…」
「それなんですよね…」
もう一つと言うのは、レイにプレゼントした曲である。
「こう言っちゃなんだが、ギター勝負だろ?」
「あれって…、テクニックなんてなにもいらないし」
むうっと唸る。
「先輩、絶対納得しませんよね?」
「しないだろうなぁ…」
歌なども含めた総合ならば、シンジが勝つのは目に見えている。
「先輩の言うテクニックってのを越えないとダメなんですよね?」
「同じのをもっとしっかりとやるだけでもいいけどな?」
大和は基本的にコードを四つしか使わない。
しかも弾き間違うのは当たり前、それを歌って護魔化しているのだ。
「明後日…、今日明日であの曲をものにするしか無いんじゃないのか?」
「弾くだけならまだなんとか…、でも歌詞とか、編曲残ってるし」
「時間が足りない…、か」
アスカと言う叱ってくれる人間が側にいない分、シンジははっきりとした決断力に欠けていた。
つづく
一方その頃、ミズホは…
「なんですかこれはぁ?」
またしても理科準備室。
「見て分からない?、全身タイツよ」
「あう…」
「全身と言いつつ首までしか無いけどね?、ものはこの間の制服と同じよ」
体に合わせてみて、ちょっと困る。
「でもでもぉ…」
「あなたが服そのものじゃ汎用性に欠けるからって言ったんでしょう?」
「ちょっとこれは恥ずかしいですぅ」
ちなみに目立たぬベージュ色だ。
「大丈夫よ、それにこれには特別な機能もあるのよ?」
「ほへ?」
「それはね…」
「それはぁ?」
「それは体形矯正システムよ!」
「はぁ?」
例によってホワイトボードに書きまくる。
それはもう、ヤモリのように張り付いて嬉しそうに注意書をする。
「完全オーダーメイドで作ったのそのタイツは下着いらず!、いえ、むしろ下着はちゃんとしたものを選ばないとラインが崩れるわ?、わたしとしては下着無しでの着用を進めるわね?」
「オーダーメイドですかぁ…」
「そうよ?、あなたの体形に合わせてあるの」
「ふえぇ…」
「これで理想的な悩殺ボディに…」
「で、おトイレはどうやってするんでしょうかぁ?」
…凍てつく波動。
「…盲点だったわね?」
「横転しましたねぇ」
きーっとヒステリーを起こすリツコに、ミズホはあうあうと慰めの言葉をかけるのだった。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'
は
Genesis Q
の
nary
さんに許可を頂いて私
nakaya
が制作しているパロディー作品です。
内容の一部及び全部の引用・転載・加筆その他の行為には
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