NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':76 


「あれぇ?、ミズホどうしたの」
「あ、レイさん、に…」
 ゆっくりと目が見開かれ、次に潤んで細くなる。
「シンジさまぁ!」
「うわぁ!」
「シンジ様、シンジ様、シンジ様ですぅ!」
「匂いが味が!」
「ってアフレコしてないで助けてよぉ!」
 放課後の校門で押し倒されれば恥ずかしいだろう。
「い〜じゃない、久しぶりなんだし」
「そうですぅ!、はぁああああうううううぅ、シンジ様の、シンジ様のかほりがぁあああああああ…」
 変態入ってるよ…
 かなり恐くなる。
「それより!、誰待ってたの?、こんなとこでさ」
「うっ、それは、ですねぇ」
 パファン!
 クラクション。
「悪いミズホちゃん、遅くなって」
「誰?」
 意地悪くレイ。
「あ、こちらクニカズさんとおっしゃってぇ、先輩のいとこさんですぅ」
「へぇええええええ」
 わざと大袈裟にシンジに振る。
「カッコいい人だねぇ」
「そう?」
「シンちゃん、センスって知ってる?」
「う…、ぼ、僕は加持さんの方が好きだな」
「むっ!、シンちゃん妬いてる」
「そんなんじゃないよぉ」
「あ〜、ミズホちゃん」
「はいですぅ!」
「そろそろいいかな?、おばさん急いでたから」
 ついでにシンジに目を向ける。
 悪いね。
 苦笑がそう語っていた。






 むぅ…
 これでもかと並ぶギターを前に、レイはちょっと悩んでいる。
「そんなに違いは無いよ?、…値段が上がれば違うけど」
「そうじゃなくてぇ」
 しゃがんでいたレイは、振り仰ぐようにシンジを見た。
「ちょっと意外かなぁって」
「なにが?」
「ミズホ、とシンちゃん」
「え?」
「ミズホがあんなに泣いてたのに、シンちゃん明るく手ぇ振ってたし」
「そんなんじゃ…」
「だってメチャクチャかっこいいし、医大生で頭も良さそうだし」
「どうせ僕はアタマ悪いよ」
「あ、そうじゃなくてぇ」
「なんだよもぉ、僕がひがむと思ってたんでしょ?」
 むすっと膨れる。
「それより早くギター選ぼうよ、レイはどんなのがいいの?」
「ん…、えっとね?」
 それはそれとして、ちゃっかりと幾つかには目を付けていた。


「いくらなんでも学校のある日ぐらい、ねぇ?」
 隣のミズホに話しかける。
「でもでもぉ、しっかりやりませんと、意味無いですしぃ」
「こっそり夜食を食べてるのに?」
 アクセルを踏み込む。
「ふきゅう…」
 小さくなる。
「はは…、まあいいけどさ、どう?、学校は」
「はい?」
「あんまり息詰まらせてると、その内だらけて来ちゃうからね?」
「そうですかぁ?」
「僕がそうだったよ、必死で高校入ったら気が抜けてね?、入れ直すのが大変だったなぁ」
 奇麗に景色は流れていくのだが、ついでに車も次々と追い抜いていく。
「クニカズさんがですかぁ?」
 はぁあああああっと、ミズホは親近感を持った目でそこそこに端正な横顔を見直した。
「そんなに意外かな?」
「ですぅ」
「はは…、ミズホちゃんはどうするんだい?」
「ほへ?」
「大学」
「他にも選択肢はありますぅ」
「へぇ?、どんな?」
「お嫁さんですぅ!」
「それはまた…」
「シンジ様とぉ、真っ白な教会でぇ」
「そういうのに憧れるのか、ミズホちゃんは」
「おかしいですかぁ?」
「おかしくはないさ…」
「クニカズさんこそ、凄いですぅ」
「そうかい?」
「お医者様って、なるのが難しいっておば様がおっしゃってましたぁ」
 またか…
 少しだけ眉を歪める。
「…おばさんは自慢が好きだからね?、ほんとは親の言いなりだよ」
「でもでもぉ、好きでも無い事は続けられません〜」
「そう、かな?」
「そうですぅ」
 純真無垢を絵に描いたように笑む。
「楽しくないことは嫌になりますぅ」
「…そうかもしれないね」
「絶対にそうですぅ!」
 やけに自信たっぷりに言う。
 それにつられて、笑ってしまう。
「…ミズホちゃんは楽しいかい?」
「辛いですぅ」
「でも頑張るんだね?」
「面白いですからぁ」
「面白い?」
「はい」
 ニコッと微笑む。
「楽しい事も辛い事も、面白いから続けられるんですぅ」
 自信たっぷりの言葉に、ついなるほどと頷いてしまう。
「ミズホちゃんは…」
「はい?」
「良いご両親に育てられたんだね?」
「ふきゅう…」
 ちょっとしょぼくれる。
「え?」
「わたし…、いませんからぁ」
「へ?」
「中学校より前のこと、何も覚えてないんですぅ」
「そう、だった、の?」
「はいですぅ…」
 ちょっと気まずい雰囲気が流れる。
 聞いちゃいけない事だったかな?
 ミズホがシンジにこだわるわけを垣間見たような気がしてしまう。
 でもでもぉ、シンジ様はぁ、わたしを本当の家族にしてくださいますからぁ…
 でへ☆
 もちろんただの気のせいだ。
「大変だね?、…それじゃあ、いろいろとさ」
「ふ、ふえ?」
 じゅるっと口元で鳴ったのは気のせいだろうか?
「もしシンジ君が…、シンジ君って、さっきの子だろ?」
「はいですぅ」
「…ミズホちゃんを選んでくれなかったら、どうするんだい?」
「ふきゅ?」
「いや…、ミズホちゃんは、どうするのかなって」
「どうもしませぇん」
「え?」
 ニコニコとミズホは笑っている。
「ま、なんとかなりますぅ」
 なるようにしかなりませんしぃ。
「なるようにしてみせますからぁ」
 実にあっけらかんと答えて見せる。
「そっか…」
 苦笑い。
「強いんだな、ミズホちゃんは」
「はいですぅ!」
 負けてられませんしぃ。
 ぐっと小さくファイティングポーズを取るミズホであった。



続く







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