NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':77 


 さーあ今夜のミッドナイトラン、まず一曲目はアマチュアDuo、「Dear」によるゲリラライブの録音だそうだ、投稿者はケー・イダ、おいおい当人無許可っていいのかぁ?、ま、いいかぁ、じゃ、いってみよう!
 その日の深夜に流れた曲を聞いた者は少なかった。
 地方局のそれも素人バンド特集。
 しかしそれを聞く者はそれだけに厳選され、さらに録音している者は多かった。


 ケー・イダ、これがK・IDA、アイダであると気がついた者がどの程度いただろうか?
 この特集を聞く者はライブ活動をしている者と、中高生、それも素人バンドの『へたくそ』さに我慢の効く人間だけだった。
 それはそうだろう。
 耳に残る良い曲を聞きたければ、CDなりなんなりを買って聞くのが一番なのだから。
 へたくそではあっても原石には違いない。
 だがDearは明らかに原石ではなく、すでに光り輝いていた。
 相田ケンスケ。
 この名前に気がついたのは、ケンスケの「第三新東京市美少女マップ」等、妖しいブックの購入者がほとんどだった。
 まず歌に痺れた者が多かった。
 ギターに気付いた者は少なかった。
 関係者の間で話題になり、バンド間でも録音、コピーしたディスクが横行した。
 このユニットのゲリラライブとはいつ行われたのか?
 そしてユニットの構成はどうなっているのか?
 何処の誰なのか?
 話は勢いとおひれを付けて広がっていく。
 そして密やかに相田ケンスケの名が浮上する。
 恐る恐ると言った感じで、ケンスケの元にメールが舞い込む。


 間違っていたらごめんなさい!
 でもDearってユニットの紹介で、相田さんの名前が出たものですから…
 それとDearって、確か以前どこかのコンサートで出演なさってましたよね?
 放送は見送られたはずですけれど。
 もしなにか情報をご存じでしたらお願いします!
 教えて下さい!、返事、お待ちして下ります。


 もちろんケンスケに違いないと、決め打ちのメールも幾つかあった。


 おどれなにやっとんのじゃあ!


 酷いよケンスケぇ!


 何故この二人が聞いていたのかは不明であるが、しばらくしてケンスケは答えの代わりに、そのマスターオーディオファイルをネット上に公開した。


「シンジ様とレイさんですぅ」
 そしてテレビが見られない悔しさを、ラジオで晴らしていたミズホもそれを偶然聞いていた。
「ミズホさん」
「はい?」
「少し、いいかしら?」
 ふきゅ?
 ミズホは名残惜しげにラジオを消した。






 小和田家敷地内には、当然のごとく道場がある。
 日舞などを教えるのに必要とは思えないのだが、必然として存在している。
 寒いですぅ…
 長袖のシャツと少し長めのスカートの組み合わせ。
 美代に呼び出されたミズホは、そこでぼうっと突っ立っていた。
「さて、あなたにも小和田の一端を理解して頂くために、これから幾つかの試技を受けて頂きます」
「うきゅ?」
「うきゅ?、ではありません!、文武に秀でてこその大和撫子でありましょう」
「…それは高校野球では」
「口答えもなりません!」
 瞬間のことだった。
 何処からか持ち出した扇を手に、くるりとターンしながらミズホを打ちすえる。
 パン!
「牛若の舞ですぅ…」
 この子!?
 美代は刮目した。
 ミズホが何気に右腕で受け止めたからだ。
「危ないですぅ!、なにをなさるんですかぁ!」
「おばさん!」
「風月扇!」
 騒ぎに気の付いたクニカズであったが、その静止を聞かずに美代は扇を投げ飛ばした。
「うきゃう!」
 しかしこれもかわそうと身をよじったミズホのポニーテールに叩き落とされる。
「あ、危ないですぅ!」
「なんて子なの…」
 一応は宗家の人間である、名取りの人間である以上、決して彼女の技量は低いものではない。
「さあどうしましたか?、あなたからも来なさい!」
「ふきゅ?」
「試技であります!、あなたを見極めましょう!」
 ふきゅう…
「いざ!」
 ミズホはどうしようか迷った。
 ちなみに最初の攻撃を受け止められたのは、シャツの下に例の全身タイツを身に付けていたからである。
 例え変身前であっても、この程度の衝撃は吸収する。
 尻尾髪は中にアンテナ代わりの付け毛が混ぜ込んである。
 その上長さもあるので、多少の物体ははたき落とせて当たり前なのだ。
 しかし…
「でもでもぉ、ばあさんは大事にしましょうって、アレク様が…」
「誰がばあさんですか!」
 彼女が牛若の舞に入ろうと足を踏み出した、ビクリと反射的に反応してしまったミズホは…
「ふきゅう!」
 宙に跳んだ、牛若の舞の回転力に対抗するよう、ミズホもまた身をよじる。
 ローリングソバット!?
 驚くクニカズ、しかし事態は常識を越える。
 ボムッ!っと内圧によって千切れる洋服。
 瞬間で膨らんだ白い球体。
 そこから遠心力と共に振り回される長い足。
 その中央にあるピンク色の肉球。
 何ですか!?
 彼女には認識できなかった。
 何千、何万回となくくり返しても、乱れることなく足を運べるよう修練を重ね、完成させて来た牛若の舞だけに、その流れを崩す事ができなかったのだ。
 何度も多用しながらも、ミズホに一瞬背を向けて、いつものように舞ってしまった。
 ミズホを見、背を向け、次に彼女が見たときには…
 視界は肉球で埋まっていた。
 ゲシ!






「まったくもう、少しはご自分のお歳をお考え下さい」
 彼女を布団に寝かせ、腰に湿布を張るクニカズ。
「ふふ…、しかしさすがは碇さん、彼女が見込んだだけのことはありますわ?」
「そうでしょうか?」
 あの一瞬の出来事は忘れられない。
 気を失った彼女は知らなかったが、「やっちゃいましたぁ!」っとドタドタ走りまわるうさミズホは驚異であった。
「このわたしを追い詰めるとは…」
 秘技、奥義を用いなかったにせよ。
「あの子、筋が良いですね?」
「おばさん?」
 嫌な予感がする…
 クニカズの背筋を、生ぬるい汗が伝わり落ちた。



続く







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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